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英詩:トマス・ハーディ『幽霊』

作. トマス・ハーディ
訳. 出雲 幽
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幽霊

彼は思いだにしない、私が夜毎にこの場所に現れているとは、
    彼にどうやって知らせよう
幻想が彼を彷徨わせてゆかせる場所に
    私も慎重に同行していってることを?——
付いていく付いていく、彼から数フィート離れて
そんなことにも私は慣れてしまった、
けれど私に振り向いてくれるよう彼に言葉を返すことはできない——
その場所でただ耳をそばだてることしか!

私が言葉を返すことができたとき彼は幽霊について何も言わなかった、
    私が告げることができたとき
どうして彼が知ることを望みもしない
    道のりへ私が導いていくことができただろう。
今や彼はさまよい、私がそばにいることを望んでいる
    かつて彼がそうだったよりも、
私の忠実な幻影を彼が見ることは決してなかった 
    その場所で彼が語りかけていようと。

そう、私が彼に付きそうのは、
    夢見る人だけが知る所、
内気な野兎が長い歩幅の足跡をつける所、
    夜のミヤマガラスがゆく所、
すべての彼の過去が存在する古びた通路へ至り、
    彼の影は能う限りの近さ、
いつまでも欠けているのは彼へと呼びかける力
    その場所へどれだけ近づこうと!

私は優れた幽霊、それなら彼に伝えよう、
    すぐに彼に気づかせよう
降りかかった私の死に彼がため息をつくのみだとしても
    私は彼のそばにいることを。
彼に伝えよう、誠実なものが為すことは
    すべて愛によって成しうること
今でも彼の歩みは追い求めるのに尊いのでしょう、
    その場所に安息のあらんことを。

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The Haunter

He does not think that I haunt here nightly :
   How shall I let him know
That whither his fancy sets him wandering
   I, too, alertly go?—
Hover and hover a few feet from him
   Just as I used to do,
But cannot answer the words he lifts me—
   Only listen thereto!

When I could answer he did not say them:
   When I could let him know
How I would like to join in his journeys
   Seldom he wished to go.
Now that he goes and wants me with him
   More than he used to do,
Never he sees my faithful phantom
   Though he speaks thereto.

Yes, I companion him to places
   Only dreamers know,
Where the shy hares print long paces,
   Where the night rooks go;
Into old aisles where the past is all to him,
   Close as his shade can do,
Always lacking the power to call to him,
   Near as I reach thereto!

What a good haunter I am, O tell him,
   Quickly make him know
If he but sigh since my loss befell him
   Straight to his side I go.
Tell him a faithful one is doing
   All that love can do
Still that his path may be worth pursuing,
   And to bring peace thereto.

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ジョルジュ・ルー、『霊魂』、1885年


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