セールス・アクセラレーション~課題分析編
営業活動をより加速・強化していくこと≒営業生産性を上げていくことをセールス・アクセラレーションと今回定義して解説をしていきたいと思います。
営業生産性の考え方
営業生産性=成果(受注)/セールスフォース(労働量)
労働量あたりにおける成果を最大化させるための効率のことを指しています。
組織のセールスフォースが増減しない中、一人あたりの成果(≒売上額)をいかにいて高められるかが重要となり、主には売上の構成要素における赤枠内の改善がポイントとなってきます。
営業生産性の改善方向性
この際に課題のポイントといては大きく2点カテゴライズして考えられます。
それは一人当たりの「①営業活動の質向上」、「②一人あたりのピュアセールスタイムの拡大」となり、率を上げるか、対応できる件数を増やすのかという考え方です。
①営業活動の質向上
アプローチした見込み顧客に対して、次の商談フェーズに進むための営業活動としての効率を上げること。
例)ターゲティング精度の向上、アポ獲得時のトーク品質向上、商談時の提案品質向上、後追いクロージング品質向上など
②ピュアセールスタイムの拡大
営業のコア業務とは、大きく「ターゲティング」「プロセッシング(顧客接点)」の2点。それ以外で、社内でやらなければならないような事務作業(見積・申込・受注などの事務処理)、プロセッシングを行うにあたっての準備(顧客情報収集、商談資料作成、社内調整)などが多く発生しており、営業人員の業務を圧迫しているケースが多い。
改善ポイント(テコ入れする箇所)の見つけ方
私が課題分析をする際によく行う手順が下記となります。
正しく課題を捉えないと、みんなで頑張っても得たい成果が思うように得られなくなってしまうので、計画8割・実行2割の考え方で課題特定・解決策策定に時間をかけて丁寧に行います。
課題分析時のプロセス
①測定・取得可能なKPIツリーを作成する
組織で業績として定義されている指標(売上額、受注社数など)を最上段・ゴールにおいた上で、そのゴールの構成要素を分解していきます。
このKPIツリーを作る際のポイントは以下のような点です。
原則、四則演算できる形で指標分解を行う
インサイドセールスなど他組織で日常的に使用されている指標を組み込む
実際に取得・計測できる指標を用いる
※自動取得できなくても、定量数値をヒアリング等で取得できればOK(感覚的な数値にならないよう注意は必要)
②業務フロー/業務一覧を作成する
営業が上記①内で分解された各指標をこなしていく中で、どのようなこと(業務・作業)が発生して、それはどのような頻度・所要時間をかけて、誰と協同する必要があるのかなどを洗い出していきます。
業務の繋がりに重点を置いた可視化が業務フロー、業務・作業の属性や時間などの情報に重点を置いた可視化が業務一覧となります。
こちらも業務フロー/業務一覧作成におけるポイント記載していきます。
<業務フロー作成のポイント>
まずは営業マニュアルなどを集めまくる!
過去作成された/現在運用されているマニュアルや新人研修資料などを集めます。まずは、これらをもとに原案を作成します。
最初から現場ヒアリングすると膨大な時間がインタビュアー・現場双方にかかるため、ヒアリングするうえでも元となる原案をまず作成します。
(ここでは細かな手順など間違いは良いので一連の流れをつくることを重要視します)抽象(概要)→具体(詳細)の順でプロセスを整理する
最初から細かな手順ベースで作成し始めてしまうと、最終的な完成までにどれくらい時間がかかるかがわからず終わりも見えないため、まずはざっくりプロセスから可視化を始めます。
大きなプロセスを可視化・定義してから、そのプロセスのなかでどんな作業をするのか、どのような手順なのかを詳細に可視化していきます
例)営業リスト購入 > ターゲット選定 > コール準備 >アポ取りコール・・みたいな大プロセスから可視化・定義する感じです。ヒアリングでは原案・仮説をベースに実態を聞き出していく
現場ヒアリングしていく中で、「商談前の準備でなにやっているか教えてください!」と聞きに行っても、得たいレベルや精度での情報を得られない可能性が高いです。現場に実態をヒアリングしにいく際には、原案の業務フローや業務一覧をベースに「ここのプロセスって、こんな感じかなと思いながら書いたんだけど、違うところや他にやっていることってある?」みたいな聞き方が有効だと考えています。過不足点や相違点などの軸を基にして回答する側が答えやすい環境を作ってあげることで具体的・詳細に聞きたいレベルでの情報を聞き出すことができます。
③実数値の計測・GP(Good/Poor)分析を行う
KPIツリー/業務フロー/業務一覧などのフレームがそろったら、営業人員・セールスパーソン毎に実態の数値がどうなっているかを取得・計測していきます。
最終的にはGood(好業績)なグループ/個人、およびPoor(低業績)なグループ/個人とのGAP(差)が何かを見つけることが目的なので、それを念頭に計測・分析を行っていきます。
KPI:指標数値の取得
営業日報や、CRM(顧客管理システム)上のデータ、案件管理のExcelなどからアポ取りコール数・アポ数・商談数などの数値をグロス・顧客ユニーク数で取得していきます業務一覧:工数・頻度の取得
それぞれの作業・手順毎で数値がもともとどこかのデータベースに存在するケースは少ないので、取得方法としては「横に座ってストップウォッチなどを用いて実測する」、「アンケートなどでかかっている時間を回答してもらう」の2択になってきます。前者は正確だけどかなり労力がかかり、後者は効率的に取得できるが、回答者の感覚が多分に含まれるというメリデメがあるのでリソース見合いで選択します。
※実測も主要なGood人員・Poor人員の各3名を対象に行うなど、対象者を絞ることで可能な範囲を正確に取得する方法もあるので、限定的な実測+網羅的なアンケートのハイブリッドをとるケースもよく行います。
ここまでの数値を取得したら、定量的にわかるGAPポイントをG/P比較で見つけていきます。
【GAPとしての例】
GoodはPoorと比較して月間アポ件数が2倍多くなっている
GoodはPoorと比較してアポ取りコール総量がXXX件と多い
GoodはPoorと比較して、商談→受注率がXXpt平均して高くなっている
定量数値上のGAPを発見していった際に、このGAPが埋まるとどれくらいの業績(ゴール)の向上が見込めるのかの解決によるインパクトを試算して、解決するべき課題の特定・優先順位がつけられる状態にしていきます。
最後に、定量のGP分析で抽出した課題がなぜ起こっているのかを定性的な情報を含めて深堀していきます。これは業務の手順の違いであったり、関係者とのコミュニケーションの取り方、スタンスや思考の違いであったり数値に出てこない部分になってきますので、課題指標を構成する要素+影響を及ぼすような業務・作業にあたりをつけて現場に対してデプスインタビューをしていくことになります。
ここでも可視化の際と同じく、インタビュアーは「こういったところに真因があるのではないか・・・」という仮説を持ったうえで聞き出すのが有効です。
仮説が外れて新たな発見があれば吸収すれば良いし、仮説通りであれば確証をもって解決策検討に臨めますが、仮説無しの体一貫でヒアリングに行くと「何も情報を引き出せなかった・・・」となることも多く、「仮説をもってヒアリング」は分析の際のマスト事項として押さえておきましょう。
ここで引き出した要因についての定性情報は、バラバラと繋がりのない情報のままなので、ロジックツリー等で因果関係・前後関係を整理して、根本の原因となっている真因を特定します。
まとめ
今回はセールスアクセラレーションを営業生産性改善と置いた時の、テコ入れポイント(≒課題)の抽出・特定のポイントについて解説しました。
分析時の成果物について、サンプルが欲しいというご意見があればフォーマットのご提供など検討していきますのでコメント・お問い合わせよりご連絡いただければ幸いです。
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