見出し画像

【詩】シーちゃん



小顔で整ったお顔立ち
吸い込まれてしまいそうなブルーの瞳
それは友人宅を訪問した日、初対面だった彼女

リビングテーブルの空いた椅子で
ポーズをとり貴婦人の如く 私たちの会話を聞く
彼女の名前は「しらす」

ある親切な人がいてね
へその緒をつけたまま風邪引いてた赤ちゃん猫
拾ったのよ
献身的な看病で元気になると
その人が 私に連絡くれたの

熱っぽい口調で友人は 里親になったいきさつを
語ってくれた
「ちょうどその時、シラス丼が好きで夢中だったから。」
魚の名前をつけられてしまった彼女

二杯目も空になった珈琲の
白いカップの底には
リウマチを患い療養する子供のいない友人と
彼女との日常が、
時を縫うて織り上がり
天地に唯ひとつの タペストリーとなって
映り込んでくる様

「シーちゃん!」
帰り際、友人の呼び声に彼女は
その背中へ飛びつくと 肩を回り
軽やかに床へ着地する
同じ猫好きの旦那さんに これはしないらしいのだ。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?