罪の意識
秋晴れの高い空。
取引先への訪問で、一人で常磐線に乗った。
同行の上司とは、現地集合だ。
常磐線に乗るのは初めて。思ったより東京に近い、便利そうな街。
流れる車窓は、大型マンションや、一戸建ての住宅。
そのベランダに布団が干してある。良く陽が当たって気持ちよさそう。
この辺りは、在宅の主婦が多いのだろう。
「カラリとした、いい天気だもんな」
気になると、布団が干してあるベランダばかり、目につく。
「ちくり」と胸に微かな罪の意識。
私は、気持ちの良い布団を家族に用意できない。
子供の頃、羽毛布団なんてすごく高級品だった頃。
寒くなると重たい綿の布団が、実家のベランダに干してあった。
その気持ちよさを知っている。ふっかふかで、少し重くてうっとりした。
布団乾燥機で作る暖かさとは違う、ぬくぬくした感じ。
それを作るには、陽の当たる時間に、家に居ないといけないのだ。
いつもは全く気にならないのに、その時はなぜか、胸が痛んだ。
30年仕事を続け、管理職になり収入もそれなりに上がっている。
自由になるお金もある。でも金で買えないものがある事を知っている。
この胸の痛みは、男性には絶対にわからないだろう。
50代女の私に、知らぬ間に刷り込まれている、女の、お母さんの、家を守る主婦が持つ胸の痛みだ。
男性はなぜ女性ばかりに、罪の意識を持たせようとするのか。
働く女
働かない女
産む女
産まない女
育てる女
育てない女
家事をする女
家事をしない女
卑怯だな、ズルいな、どっちにしても罪の意識を感じるように仕向ける。
自分たちはなにもしないくせに。
この罪の意識は、旦那や子供には絶対に見せない。
だって、私はなにも悪い事はしていないのだから。
娘の知らない、小さな幸せを知っている。それは時代の変化だ。
中学生の娘が成人する頃には、なんの罪の意識を持たずに
好きな事が出来るようになっていて欲しい。
そして私の知らない、幸せを見つけて感じて欲しい。
もしどこかで、知らぬ間に刷り込まれた、女の役割を果たしていないと、
罪の意識を感じている女性がいるなら伝えたい。
私達は決して、なにも悪い事はしていない。
その「罪の意識」は、時代の変化だ。