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異境の朝、漆黒のしじま、アザーンの響き

アパートの25階
北を望む大きな窓

毎朝陽が昇る前に起き
部屋を暗くしたまま 窓を向いてコーヒーを飲む
まるできれいな夜景のように 左側遠くにコンドミニアム群の灯り
右には 不夜城のような港湾のまぶしい照明がまたたく

真っ直ぐ北は一面の海
漁船だろうか
真っ暗ななか 一隻の小舟が漁り火をつけたまま動かない

ほかに比べイスラム教徒の少ないこの街
それでも どこからともなくアザーンの声が響いてくる
時計をみると ちょうど朝の6時
ファジュル(早朝礼拝)の時刻がきたらしい

空が白みはじめる前の1時間
ぼおっと外を眺め 煙草をくゆらせたいところだが
煙草をやめてもう久しい
手持ち無沙汰のまま時をやり過ごす


きょうも暑くなるのか
なにが待っているのか
どんな出会いがあるのか

そんなことをぼんやり思いながら
異境の暗い朝のしじまに ひとりたたずむ

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