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【こじつけ考察】春とヒコーキ土岡さんの『生きづらいラップ』歌詞徹底考察
※本稿は個人的な考察です。著作権や肖像権には配慮していますが、もしご本人や企業様からの注意喚起があった場合、速やかにこの記事を削除いたします。
本稿では、春とヒコーキ土岡哲郎さん(芸人)がYouTubeにアップしている『生きづらいラップ』をレビューしていく。ただ好きな歌詞をあげて考察しているだけなので、レビューとは名ばかりのオススメ記事になってしまうが了承してほしい。予想はつくと思うが、以下は力業の勝手な思い込みである。
↑歌詞はこちらの概要欄にすべて書いてくださっているので、興味があればぜひ読んでみてほしい。当然だが、ここで全文引用することは控える。一番の歌詞はぐんぴぃさんについて、二番は土岡さんについての歌詞で構成されている。
「恋愛経験ガキ同然 下からひっくり返そうとしてる蟹工船」
相方のぐんぴぃさんについての歌詞。ガキ同然と蟹工船のワードチョイスに見えるように、土岡さんの踏む韻は手堅く、HIPHOPへの並々ならぬ情熱が伝わってくる。ここで僕が驚いたのは蟹工船を用いたことだ。小林多喜二の小説であることは言うまでもないが、小林多喜二は警察により撲殺されたことはご存じだろうか。国家権力により無残な死を遂げた小説家を連想させる辺り、土岡さんの教養の深さがよく分かる一節である。反体制の精神は、アメリカの被差別人種文化から発祥したHIPHOPの根幹を担う考えであり、彼のHIPHOPへのリスペクトは疑いようがない。
「なんで? 履いてきた靴をなくす 冬でも服をまくる
私は何? ミュウツーの逆襲」
ここまでの歌詞で、「刑務所」や「人間のマネ」など恣意的な言葉を選んでいたが、突然シンプルに面白い話をぶちこんできた。初めて聞いたときは腹が痛くなるくらい笑った。頭を使わせる内容ではなく、シンプルに相方の面白おかしいエピソードを突っ込むという思い切りの良さ。芸人さんたちの笑いには、聞く側も頭を使う必要がある捻った『笑い』と、ボケとツッコミなどで構成される誰でも笑える『笑い』がある。ここでは、ぐんぴぃさんの面白エピソードに歌詞で突っ込むことで、曲の中でボケツッコミというコンビ芸を完成させていると言えるだろう。
ミュウツーの逆襲は90年代公開のポケモン初映画であるが、ここも映画好きな土岡さんらしいワードチョイス。また、映画本編はミュウツーが「誰が生めと頼んだ……」とアイデンティティを探すストーリー。ちょうど、世界中に恋愛経験ゼロを広められ、ネットのおもちゃにされたり、ときには非モテの王とあがめられたりして苦悩するぐんぴぃさんの姿と重なるところは少なからずある。
「おれのことも話してみるころか」
溢れ出る遅れてきた主人公感が、カッコ良いパンチライン。ここから土岡さんの自己紹介パート的な歌詞が始まる。初めてこのフレーズを聞いたときのワクワク感は異常。動画未視聴の人が羨ましいよ。
「ストリートに咲いた薔薇? ぼくクソニートでアイタタタ」
咲いた薔薇とアイタタタで韻を踏むという常人離れした腕前。注視すべきは、薔薇とぼく(ニート)という歌詞。両者は、ともに「ただそこに生きているだけ」であるが、一方は賛美され、一方は軽蔑される対象である。この対比構造には文学的美しささえ感じられる。この技巧は一流作詞家のそれと言っても過言ではない。音楽業界が彼を放置している理由が本当に分からない。なんで?
「ダサいことしたくない って気づきゃ社会のランク外」
ダサい、したくない、社会、ランク外という怒涛の韻が気持ち良すぎる。土岡さんターンは、一貫してニートや人見知りを自虐した歌詞が並べられるが、その終盤に社会のランク外という言葉を持ち出すのも素晴らしい。というのはここまで様々な葛藤が述べられてきて、親や同世代への引け目が行間から読み取れるわけだが、『ランク外』という言葉から、もはや「ダサいorダサくない」という評価軸からすらも、はみ出てしまっているということである。こんな歌詞はもう、自分をさらけ出さなければ書き出せない。芸人魂ここにあり、である。
まとめ
本来は全文解説したいくらいであるが、大学論文並みの長さになってしまうためここでまとめる。2024年現在、芸人コンビ「春とヒコーキ」は、僕が宣伝などするまでもなく人気であるし、本人らの話からも、数年前から芸人関係の仕事だけで食っていけているらしい。
この動画が作成されたのは、2020年頃。芸人というレールのない業界で道を模索していく不安さ、我武者羅さ、ひたむきさが感じられはしないだろうか。それに、土岡さんの独特な感性から生まれる世界観がなにより素晴らしい。
曲については、僕がどれだけ良さを語ろうと本編を超えられないので、ぜひ該当の動画を見ていただきたい。
↓(宣伝は二度する)
えー、神です(語彙喪失)。
了
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