2年間だけ娘だった息子〜3話〜
とにかく私が心配していたのは、いじめ。
髪を伸ばし、可愛いヘアピンをして登校するようになると、他学年から「どっちなの?」と声をかけられると言っていました。
ちょっとニヤニヤしなら息子の前を通り過ぎたり...。
それでも息子はしたい格好をすると言いました。
念願だったスカートをはいて登校した日。
私は心配で心配で何も手につきませんでした。
でも驚いた事に
「〇〇くん、可愛いねって言われたよ」
と息子。
嬉しそうな顔。それ以上に私が嬉しかった日でした。
私は息子を連れて洋服を買いに行きました。
もちろん女の子用。スカートやトレーナーを何枚か買い、家に帰ってからファッションショーをしました。その時の写真を見返すと私の子供の頃にそっくり!
髪を伸ばしてスカートをはく息子はどこからどう見ても女の子に見えました。
なんだかいじめを心配した事が恥ずかしく思えました。同級生は息子を可愛いと言ってくれたんです。
先生がクラスメイトに伝えてくれていたからかもしれないし、もしかしたら子供ながらに気を使ってくれたのかもしれません。
分からないけれど、今の子達はこれが当たり前に感じられているのかもしれない。
テレビでは可愛らしい服を着たりメイクをしている男の子をよく見かけます。
多様性を自然と受け入れられる子達が息子の周りに沢山いた事に感謝しました。
そうではない環境にいる息子と同じようなお子さんもいるでしょうから。
女の子として生活するようになり学校での着替えは教職員用のお部屋、お手洗いはみんなのトイレを使わせてもらうように。
トイレが教室から遠く不便だ、なんて言っていましたが男女どちらのトイレにも入れないので仕方ありません。
外出先でもトイレは困りました。みんなのトイレがない時は私と一緒に女子トイレへ。
居心地が悪そうにしている息子が可哀想でした。
いじめの心配をしなくなった頃、だんだんと身体の事を心配するようになりました。
当然の事ながら息子の身体は男らしくなり、声変わりを迎えます。
ある日息子が「おっぱいって出てくる?」と聞いてきました。私は返答に困りました...何て答えたのか覚えていません。
まだ良く分かっていない息子が自分の身体の事について思い悩む日がすぐに来るんだ、と私はとても恐ろしくなりました。
私は息子が大人になって身体を女性に変える時の為にYouTubeで色々調べ始めました。
手術の過程を詳しく教えてくれているチャンネルを見つけ、そんな手術があるのかと衝撃を受けつつ知っておかなければと思いました。
その方は痛みに泣いていました。
分かっていたつもりでしたが産まれた性と自認する性が違うという事は心ばかりでなく身体もこれほどに傷つく。
これまで割と楽観的だった私ですがその日はお風呂で湯船に浸かりながら声を殺して泣きました。
女の子に産んであげられなかった事を初めて心から申し訳なく思いました。
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