シェアハウス・ロック1225

もうひとつの「異常」 

 もうひとつの「異常」は、学習障害(LD:Learnibg Disability)である。
 タイプは以下の3つ。

・ディスレクシア 読字障害:読むことが困難
・ディスグラフィア 書字障害:書くことが困難
・ディスカリキュリア 算数障害:計算することが困難

 これにしても、ハードウェア的な欠陥によるものがあり、ソフトウェア的な欠陥によるものもあるように思えるし、双方に欠陥がなくとも、「手続き的」な欠陥によるものもあるように、私には思える。
 オリバー・サックスの著書は、こういった欠陥のオンパレードで、とても興味深いのだが、そのなかに「失語症」ならぬ「失意味症」の症例を扱ったものがある。『妻を帽子とまちがえた男』である。
 彼は、サックス(神経科医)の診察が終わり、診察室を去ろうとしたときに、なんと奥さんを(帽子のように)被ろうとした(!)というのである。つまり、帽子という「語」はわかるにしても、その意味、その像がわからないことになる。ここでは、像が意味そのものである。
 人間の脳の不思議さは、こういった「症例」から逆に照射されるという気さえする。
 私の友人は、50代で脳出血を起こし、一命はとりとめたものの、それからしゃべれなくなってしまった。こちらの言っていることはわかる。「そう」「違う」は言えるので、それらの反応からそれがわかる。だが、それ以上のことはほとんどしゃべれなくなった。これは、明らかにハードウェアの欠陥であるし、「考えること」と「話すこと」の間のどこかの回路が遮断されているのだろうと思える。
 だいぶ前に、ディスレクシアは、アルファベットを使う地域で症例数が多く、日本などでは少ないと聞いたことがある。これが本当であれば、言語(というか文字)の逐次処理を司るどこかに問題があると考えるのが妥当である。漢字は一時に入って来るので、発見例が少なくなるのだろうと想像できるからだ。これは前のところで申しあげた「手続き」的な問題と考えていいはずである。
 私も、若干(か、相当か)ディスレクシアの傾向がある。特にカタカナ表記で、意味がたどれないものが苦手である。「ヒマラヤ」なんだか、「ヒラマヤ」なんだか、長い間わからなかった。「エベレスト」なんだか「エレベスト」なんだかもわからなかった。後者は、英語の語感が身についたあたりで解消したが、前者はいまだに自信がない。これは、「意味」とか「語感」が「読字」を補佐しているということなんだろうと思われる。
 2回前に、

 私の頭では、フルバージョンを知らないと、そのアクロニムがなかなかおぼえられないのである。

と書いたが、これも私が「若干(か、相当か)ディスレクシア」であることと関連しているのではないかと考えている。

 

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