千都譲司

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最近の記事

シェアハウス・ロック1125

葛飾北斎の周辺  もう20年も前になるだろうか、太田記念美術館という浮世絵専門の美術館に行き、たまたま葛飾応為の『吉原格子先之図』を観た。ちょっと衝撃を受けた。その展覧会のテーマがなにかはもう忘れてしまったが、『吉原格子先之図』を観たことは、いまだに憶えている。  私のような浮世絵の素人は、歌川広重のように晴朗なものが浮世絵であると考えている。影がない、スカンと日本晴れみたいな画風のことだ。広重の『東海道五十三次』『名所江戸百景』なんていうのは、完全にこのクチである。『東海

    • シェアハウス・ロック1124

      虚は虚にして実。また、実にして虚。 「うつし世はゆめ 夜の夢こそまこと」(江戸川乱歩)みたいなタイトルだね、今回は。  『八犬伝』(山田風太郎)には、「虚の世界」「実の世界」が交互に出て来る。「虚の世界」は言うまでもなく馬琴が書いている『南総里見八犬伝』であり、「実の世界」が馬琴の日常生活である。つまり、『八犬伝』では「八犬伝の世界」と「馬琴の実生活」とがパラレルに進行し、「虚の世界」は劇中劇のような仕掛けになっている。  だが、『八犬伝』には、この虚実とは別の虚実が出て来

      • シェアハウス・ロック1123

        帰ってきた「八犬伝」  10月28日に映画『八犬伝』(監督・脚本曽利文彦)を見た。その前に、山田風太郎先生の『八犬伝』(これが、この映画の原作)を予習していたが、上下巻あるそれの下巻の途中からは、復習になってしまった。ああ、これは再読ね。  では、映画の評価から。  全般的には、とてもよくできた映画だった。  まず、滝沢馬琴を演じた役所広司さんの演技から申しあげる。酷評するが、ダメ。ともかく馬琴はひたすらうっとおしい人で、これは「『八犬伝談余』(内田魯庵)31027」をご参

        • シェアハウス・ロック1122

          【Live】谷川俊太郎さん追悼  武満徹の『遠い呼び声の彼方へ』に収められている文章に、「谷川俊太郎=豊かなことばの世界へ ―ポリフォニックなかたちで」と題されたものがある。『現代の詩人 谷川俊太郎』(中央公論社刊 1989年3月)の解説を再掲したものである。  文中、「きみは」と何回も呼びかけるスタイルなので、まるで谷川さん追悼の文章のようだ。 1996年2月20日に亡くなった武満徹が、2024年11月13日に亡くなった谷川俊太郎さんを追悼する。この人たちだったら、こんな

          シェアハウス・ロック1121

          マクラ。だが、昨日の続き 「『完本 八犬伝の世界』1029」の最後に、次のように書いた。  小谷野敦さんは『八犬伝綺想』を書いた方であり、この本も八犬伝フリークには必読。私も、読んでみようと思っている。老後の楽しみにはこと欠かないな。  この書き方だと、私が同書を読んでないみたいでしょ? 実は、この段階では読んでないと思っていた。ところが、読んでいたのだ! 大笑海岸である。  読んではいたのだが、なにしろ『八犬伝綺想』にはエイハブ船長が出で来るわ、ハックルベリー・フィン

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          シェアハウス・ロック2411初旬投稿分

          【Live】ウーバーイーツ用「イタリアン麻婆茄子」1101  火曜日(10/29)はウーバーイーツの日であった。一昨日も書いたが、ここのところ「八犬伝」、馬琴にかまけて、日常些末なことの報告がおざなりになっていたのである。まあ、おざなりになっても誰も困らないけどね。  我がシェアハウスのおばさんも、ウーバーイーツ・メニューをつくる。今回は、農林省ゆで卵、鶏飯である。このゆで卵は、「【Live】卵宇宙(ゆで卵のつくり方)1009」で紹介した手口だ。省エネ、省力で、なかなか秀逸

          シェアハウス・ロック2411初旬投稿分

          シェアハウス・ロック1120

          おふたりのnoterさんの投稿から  本日のお話は、おふたりのnoterさんの投稿がもとになっている。そのおひとり「ミック@アート好きのノート」さんの投稿タイトルは「静寂を磨き上げる -ECMレコードの音楽の魅力」であり、もうお一方の「葉っぱの坑夫」さんのほうの投稿タイトルは、「伝統は忘れて。世界各地のローカル楽器が出会い、出自不明の音楽世界が!」である。  前者は、『ECMレコード サウンズ&サイレンス』という映画をご覧になってのお話である。同レコード会社は、マンフレート

          シェアハウス・ロック1120

          シェアハウス・ロック1119

          最大素数の発見  私らの知る最大素数が更新された。この10月12日のことである。分散コンピューティングでずっと最大素数を探していることは聞いていたし、今回の発見は、どこで知ったかはおぼえていないが、私はその2、3日後には既に知っていた。  素数とは、整数であり、自然数であり、約数が1とその数自身のみであるもののことであるという定義がある。だが、この定義では、1も素数になってしまう。  割合最近まで、1を素数とする数学者もいたが、現在では1は素数でないことになっている。よって

          シェアハウス・ロック1119

          シェアハウス・ロック1118

          【Live】本日のウーバーイーツはキーマカレー  昨日の日曜日の朝、コーヒーを飲みながらバッハを聴いていると、おばさんが降りて来た。なんでも、近所のスーパーで野菜の朝市があり、かつ挽肉が100g95円なので、それらを買い出しに行くので同行せよとのご下命である。スーパーは日曜日は9時に開店する。  私は、こう見えても、日常的には先の先を読んで暮らしているので、いきなりこういうことを言われるのは苦手である。「人生、出たとこ勝負」などとハッタリをかましていても、それは苦手ゆえの防

          シェアハウス・ロック1118

          シェアハウス・ロック1117

          カマキリはなぜ路上で死ぬのか  秋になると、アスファルトの道路上で死んでいるカマキリをよく見る。私は、長年、「これはどういうことなんだろう」と思っていた。どうせ死ぬんだったら、もうちょっとましな場所、彼らにとって環境のよいところもあるだろうにと考えていたのである。  11月13日の毎日新聞夕刊に、その答えが出ていた。同記事は、京大准教授・佐藤拓也さんと澤田侑那さんを中心とした当時の修士グループの研究成果に基くものだ。捕食関係を前提にした仮説である。  カマキリが捕食した水生

          シェアハウス・ロック1117

          シェアハウス・ロック1116

          髙橋秀実さんの訃報  ある本を読んでいるときに、それを書いた当のご本人の訃報に接するという経験が、皆さんおありだろうか。私も初めての経験だ。 「【Live】国籍不明料理と曖昧料理1113」の最後に、  今回、本は『ことばの番人』(髙橋秀実)を持参した。校正にまつわる本である。ここ(ウーバーイーツ先の雀荘)で本を読む時間は、誰にも邪魔されないので、私の好きな時間だ。 と書いた。  確認したら、髙橋さんが亡くなったのは11月13日なので、投稿したその日である。  しかも、こ

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          シェアハウス・ロック1115

          本日は不愉快な話  国民民主党代表・玉木雄一郎の不倫報道で、世の中がかまびすしい。最初に申しあげておくが、私は、このこと自体はどうでもいいと思っている。私ら国民は、政治家を人格高潔という理由で選んでいるわけではなく、政治家としての仕事を、きちんと、しかも正しくやってくれるかどうかという基準で選んでいるはずだ。あっ、私は玉木を選んでないよ。玉木をはじめ、議員を選んだ人は、という意味である。  不倫で不快な思いをし、それを騒げるのは、配偶者だけだと思う。本質的には、そうであるは

          シェアハウス・ロック1115

          シェアハウス・ロック1114

          吉田簑助さん逝去  文楽の人形遣いで、人間国宝の吉田簑助さんが亡くなった。91歳だった。  我がシェアハウスのおばさんと私は、もう20年近く、東京公演ではある太夫さんが出る「部」を、必ず見に行くことにしている。その太夫さんに、チケットを斡旋していただいているのである。「部」は、通常は昼の部と夜の部になっている。  私らは、その太夫さんの追っかけなので、毎回必ず簑助さんを見られたわけではない。それでも、20回やそこらは見ている。  タイミングが合えば、太夫さんとおばさん、私、

          シェアハウス・ロック1114

          シェアハウス・ロック1113

          【Live】国籍不明料理と曖昧料理   昨日ウーバーイーツ用に作成したものは、国籍不明料理と曖昧料理である。曖昧と言っても、曖昧宿とか、曖昧屋、曖昧茶屋などのような享楽的なものではない。材料が変テコというだけである。  まず、曖昧料理のほうは単なるソース焼きそばだが、豚肉の代わりにじゃこ天を使った。あと、ブナシメジを使った。じゃこ天とブナシメジが多少曖昧なだけで、あとはごくごくフツー。  じゃこ天は、甘くなるといけないので、胡椒を多めにふり、炒める。あとは通常のソース焼きそ

          シェアハウス・ロック1113

          シェアハウス・ロック1112

          【Live】エリアーデの精神作用  昨日は、新聞休刊日だった。  朝起きて階下に降り、コーヒーを飲みながらバッハを聴き、普段は新聞を読むのだが、新聞がない分、考えごとのほうに頭が行った。  バッハは、ピエール・フルニエの『無伴奏チェロ組曲』である。  大江健三郎の小説中、私らの仲間内で「四国もの」と読んでいた作品群がある。ギーおじさん、ジンという太ったおばあさんなど、特徴的な人物が出て来ることによって、どことなく連作っぽい雰囲気を醸し出している作品群である。もちろん、四国が

          シェアハウス・ロック1112

          シェアハウス・ロック2410下旬投稿分

          『里見八犬伝』1021  1983年に公開された『里見八犬伝』は、『新・里見八犬伝』(鎌田敏夫)が原作である。これは、『南総里見八犬伝』(滝沢馬琴)の翻案といったものだ。  監督が深作欣二、脚本が鎌田敏夫、深作欣二。薬師丸ひろ子、真田広之、松坂慶子、千葉真一が出演している。製作は角川春樹である。  Wikipediaによれば、ストーリーは以下。固有名詞の読みがカッコ内に付されていたので煩雑なため外し、改行をした。それ以外はママ。  蟇田領主、蟇田定包は毒婦・玉梓の色香に迷

          シェアハウス・ロック2410下旬投稿分