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順調という不安

休職から一ヶ月が経った。クリニックに行き、いつもの通り診察を受ける。
診察といっても調子はどうか、朝は何時に起きて、散歩はしてるか、薬の服用具合はどうか、といった話だ。

前回の診察でこれからは、生活スケジュールを立ててくださいという課題をもらったので、もうほんとにざっくりではあるけど、この日はここに行く、この日はあれをする、といった感じで考えて実行していたと報告した。

すると先生は、僕に関してはスタートの一ヶ月は非常にいい調子なので、今後はスケジュールと実績について1枚の書面で報告するようにと言った。何か会社みたいだなと大嫌いな営業日報を想像しちょっと引いた。

先生からすると、これから復職を見据えて会社の仕事に近いシチュエーションをつくり、それをこなしていくことで復職がしやすくなるよう導いて行く、といった意図があるようだ。

しかし、復職というワードを聞いた瞬間にドキッとした。

自分のなかではまだあと一ヶ月くらいはこのままのんびりしたい、と思っていたからだ。復職という現実味を帯びた言葉を耳にすることで、何か自分が夢の中から引き戻されたような気がした。酔いが冷めたような感じだ。

それから、今後もできるだけ外出して、3時間から6時間ほどどこかで仕事のような作業をしながら過ごすのが理想だ、とのことだった。

これも恐らく仕事に近いテンションでいつづけることで、復職がスムーズに行われることを目指しているのだろうことは分かった。

しかし、外で数時間パソコン持って何か作業したり、本読んだりするのは現実的になかなか厳しいのではないかと思った。それも平日5日間である。カフェにいるにしてもお金がかかる。率直にどうしたらいいか先生に聞いてみた。

すると先生は過ごし方は人それぞれだし、過ごし方についての指導はできない(分からない)という反応であった。確かに医者は患者を元の状態に戻すのが仕事であって、そのためには外出することが望ましいという指導を行うまでであり、その中身は自分で考えるしかないのであろう。

質問の仕方を変えて、他の復職されたような方々はどのような過ごし方をされているのでしょうか、と訊いてみた。すると仕事に関する本を読んだり、勉強したり、資格の勉強をするといったことをしているとのことだった。

それを聞いて少し具体性が感じられたので、例えば自分ならビジネス書を読んで例のレバレッジメモを作成したり、仕事が忙しくて時間がないという理由で勉強仕掛けて途中で止めてしまったことが数々あるので、それらをやってみるのも一つの過ごし方だと思った。

休職期間をできるだけ有意義に過ごすためにこれからいろいろ考えてみよう、と一瞬前向きな気持ちにもなったが、日々復職が近づいていると思うと少し憂鬱でもあった。

今の職場に戻ることだけが復職ではないとしたら、この期間を利用して転職活動をしてみるのも一つの方法であると密かに思う。それが何となく自分のためになるのではないかと少しだけ強く感じる。

休職を承認した会社としては当然戻ってくることを前提に考えているはずだ。それを裏切ってしまっていいものだろうか。ずるくないか。

だが、ここまで追い込んだのも今の職場だ。職場環境が改善されない場合はやむを得ないだろう。

最近僕の部署に中途採用で新人が入ったことを知った。僕の休職中の穴を埋める意味と、増員することで一応職場環境を改善するという会社側の意思表示なのであろうか。しかし、中途採用は三ヶ月間は試用期間であるため、三ヶ月の休職を終え戻った瞬間に入れ替わりに新人が辞めてしまうという可能性もある。

休職期間を延ばすことは可能だろうか。それは医者の診断次第だろう。本人の意思はどこまで通るのであろうか。

僕の休職活動は順調なようで何となく不安な心持ちなのである。

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