『インハンド』第9話 地位や肩書きに意味はあるのか?
あらすじ(ネタバレ有り)
紐倉の元に、高家の母がやってくる。高家がお世話になった陽子先生が、高家の以前勤めていた台田病院に入院したと聞く。「お世話になった人なんだから、なんとかしてあげて」と言われるが、クビになった病院なので、一人では行きにくい高家。紐倉に一緒に来てくれと頼むが、当然断る。「だったら一人で調査するよ」と立ち去ろうとすると、戸惑う紐倉。そんな紐倉に、「って言われると、嫌でしょ?」とドヤる高家に乗せられる紐倉だった。
紐倉たちは早速陽子先生の元に行くが、高家の同僚だった医師から、治療を施しているのに一向に良くなるどころか悪化する一方で、意識は戻らずにいた。診断結果は「喘息」なのだが、下痢や高熱が収まらず、その治療方法が、悪化しても構わないとも取れるもの。陽子先生の担当医は、高家を追い出した黒野院長だった。高家が医者を志したのは陽子先生がきっかけだった。高家はこの件について調査を協力してくれと紐倉に頼むが、また断られる。「そうだよな。じゃあ一人で調べるよ」と言うと、「えっ」と動揺する紐倉。「って言われると、嫌でしょ?」とまたドヤると、仕返しにリアルなアイアンクローをお見舞いする紐倉だった。
紐倉の元上司である福山の会社「フューチャージーン」と厚労省による「BL4」と言う施設を作る話があった。設置から参入まで30年はかかると言われているのに、翌年建設するという怪しい動きがあった。目立つ行動をとれば怪しまれるため、紐倉にも内密理にことを進める牧野たちSM室。
すっかり紐倉に似てきた高家と紐倉は深夜、院長室に潜入し、陽子先生のカルテを盗み見るが、異常は見られない。急いで脱出するも、黒野院長と出くわしてしまうが、その場はなんとかやり過ごすが、陽子先生の治療方法は、黒野院長が意図的に仕組んだものだった。
高家の母から陽子先生の情報を聞くが、洋食好きと言う言葉に、紐倉は反応する。そして、陽子先生の容体が悪化したとの連絡が入る。翌日、高家との会話をヒントに、陽子先生の病気が「セリアック病」だと見抜く。黒野院長は、アレルギーの権威なので、わからないはずはなかった。転院させるために、牧野が室長に掛け合うが、台田病院は厚労省とズブズブの為、手出ししないよう言われる。牧野も、高家に「勝手なことしないでね!勝手なこと。」とダチョウ的に言われ、二人は「勝手なこと」をする。
紐倉は医者に、高家が患者に扮して病院に潜入し、強引に陽子先生を高家の知り合いの病院に転院させる。牧野は予想以上の勝手な行動に文句を言うが、「積極的転院」だと言い張る。難治性セリアック病の可能性を感じ、専門家がいる「フューチャージーン」に相談に行くが、福山には断られてしまう。牧野は福山を疑うが、そこに福山の息子が現れ、協力を申し出る。そして「科学界のスティーブ・ジョブズを目指しますよ」とドヤ顔の若手の科学チームを紹介するが、全然役には立たないものの、それがきっかけで、治療の糸口を見出す。それは、亡くなった元助手の入谷の研究だった。奇しくも、「俺の研究を論文にしてくれ」という入谷の言葉が現実になりそうだった。
BL4施設の予定地が、高家の地元だとわかった。その出身地である陽子先生に関わりを感じ、牧野は調べ始める。また、陽子先生の転院先がバレて、黒野院長が乗り込む。そこで正面対決となり、黒野はしらばっくれるが、セリアック病と診断していたはずなのに、悪化させるような治療をしていたのは、犯罪だと高家は断罪する。そこに牧野と警察が現れ、逃げ場を失った黒野は、厚労省に頼んで医師免許を剥奪させると高家を脅すと、
「肩書きがなくては
己がなんなのかもわからんような
阿呆どもの仲間になることはない」
と、生涯独学で研究をした博学者・南方熊楠の言葉を浴びせる。
昔は、人を救いたい医者だったはずだと。しかし、今や肩書きに執着し、患者を放棄するようになってしまった。「理想を言うのは簡単だ。」と黒野は言い返すが、「いや、簡単なのは落ちることだ。抗うのは大変だからな。」と言い返す。
「この男を見てみろ。地位も肩書きもないのに、よっぽど医者らしい。バカでお人好しで役立たずで中途半端なお節介野郎だが、医者を辞めた後も、たくさんの人の命を救ってきた。この男は一度も、医者の本分を忘れたことはなかったよ。」
誰よりも高家を認めるその言葉に、後ろで高家の母親は泣いていた。
「どうだグッときたろ!」と高家にドヤると、「いや、本心だ。」と真面目にいう紐倉に、「え?」と驚くと、「って言ったらお前は愚かだから感動するだろ!」と言い合う。どんどんコンビ仲が出来上がってきていた。
目を覚ました陽子先生に、BL4建設の真相を聞く。厚労省とフューチャージューンの計画を、地主である陽子先生自身が代表となって反対していた。そこで、喘息を発症し、セリアック病が悪化してしまい、厚労省によって台田病院に入院させ、悪化させるよう指示していた。その黒幕は、厚労大臣の金子だった。計画を阻止できると思ったところで、フューチャージーンによって、BL4建設が発表されてしまった。
家に帰る母親が、高家にこう言う。
「あんたの顔を見て安心した。医者の頃よりいい顔してる。イケメン博士のおかげかもね。向こうもあんたがいなきゃダメそうだけどね。」
と言い残す。そして、紐倉は福山の元にいた。
地位や肩書きに意味はあるのか?
今回注目したいポイントは2つあります。その一つが、「地位」や「肩書き」です。会社や社会には、様々な肩書きや役職がありますよね。「社長」って聞くとなんか偉そうだし、「○○取締役」とか、「CEO」って言われると、恐縮してしまったりします。「先生」と呼ばれる仕事も色々ありますが、そういった地位や肩書きは、その人の立場を明らかにするものではあります。特に会社内では、上下関係がありますし、肩書きは必要だと思います。しかし、全く関わりがない人の肩書きは、ほとんど関係ないようにも感じます。
肩書きに意味がないとは言いません。それだけの仕事をしてきて、肩書きが物を言う時もあります。ただ、肩書きは会社内か取引相手くらいにしか効果はないのではないでしょうか。肩書きとは言わば「鎧」のようなものです。将軍が立派な鎧を着て、強そうな武器を持っているように、立場が上なほど、自分を着飾る装飾が増えます。それは、立場をわかりやすくするためでもあります。しかし、実際に戦うにしても、肩書きである鎧や武器が戦ってくれるわけではありません。結局は自分自身です。そして、自分には合わない大きな武器を持ってしまったら、『キングダム』の信が、王騎将軍の矛を最初は扱えず、使うようになっても矛に振り回されていたように、武器である肩書きに振り回されてしまうこともあります。
このように、不相応な肩書きを得ることも危険なところがあり、肩書きに固執することは、自分の首を締めてしまうこともあります。肩書きがなければできないこともありますが、肩書きがなければ何もできないのであれば、肩書きに意味はないでしょう。
今は、転職の時代を過ぎ、独立の時代と言えるかもしれませんが、独立した時に直面するのが、今までどれだけ会社の名前や肩書きで仕事をしてきたかと言うことです。武器に頼り過ぎて自分のレベルが上がっていなければ、独立しても上手くはいかないでしょう。弱い武器でも、レベルが高ければ敵は倒せます。しかし、武器が強い(有名企業勤務)と、武器の強さで敵を倒せます。転職や独立をする上で、自分のレベルなのか、武器の強さなのかを見抜くことが必要なんでしょうね。
楽する事に慣れたら要注意
黒野院長が「理想を言うのは簡単だ」と言った言葉に対して語った、紐倉の言葉ですが、
「いや、落ちる方が簡単だ。抗う方が大変だからな。」
というのは、まさに本質をついています。言い換えるなら、楽をするのは簡単だと言うことです。黒野の場合、「院長」と言う肩書きと、厚労省とのパイプを持つ立場によって、楽をすることができ、甘えることができます。この世界は不条理で、理不尽に満ちているからこそ、抗うことは困難です。それでも、受け入れて向き合うことが、大きな力になることは間違いありません。しかし、一度楽を覚えてしまえば、味をしめて、その地位を守るために、保身に走り、自分に不都合なことは隠蔽し、反論する者を遠ざけイエスマンを近くに置き、肩書きを最大限利用するようになるでしょう。もしそういう人が上司でいたら、諦めるか超えるしかないですね。社長がそうだったら諦めましょう(笑)
人を変えることはできないので、楽をしてしまっている人に何を言っても聞かないでしょうが、もし自分が楽することに慣れてしまっているなら、必ず痛い目に合うことでしょう。抗うことは大変ですが、抗わなければ、その末路は悲惨なものになります。
今回の紐倉の言葉は、まさに名言ですね。忘れずに自分自身気を付けていきたいと思います。
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