普通に生きたい僕であった(43)
「へ?」僕は市川さんにひかれて階段を下りた。1歩間違えれば大けがをするかもしれない。「ど、どうしたの???」僕は早口で聞いた。だが、彼女は無言のまま走り続けた。「???」僕は彼女の背後で走りながら首を傾げた。
どうしたんだ? 傾げつつも足を止めることは許されなかった。彼女についていきたいというわけではない。もしも今止まれば彼女に引かれ、足場をなくし地面に顔から墜落すると思ったからだ。「あのー…」僕は彼女を見た。「どこに連れて行くんですか?」敬語を使ってみたが、その時また思い出した。彼女は話すことが苦手だった。「だからかー」ちょうどその時、僕は一瞬だけバランスを崩した。「おワ!」僕はバランスを崩し、思った通り、地面に顔から突っ込んだ。「イダダダダ…」僕は鼻をなでながらつぶやいた。目の前ではウルウルとしながら謝り続けている市川さんがいた。「だ、大丈夫だよ」僕は彼女をなだめ、もう一度聞いた。花をなでながら。
「それで、どうしたんだ?こんなに急いで」すると、彼女は首をかしげた。“急いでいるように見えましたか?”僕はうなずいた。「急いでいるように見えたよ」彼女は僕についてくるよう言ってきた。ついていくと、そこは体育館の裏だった。
まあ誰にも聞かれたくないからってことか 彼女は僕のほうを見てきた。「…」そして近くにあった草むらを指さした。「…!」僕はその草むらを見ると目を見開いた。そこには狐がいた。ただの狐じゃない。子供の狐だ。しかも尻尾は3本ある。この世には存在してならない生き物といってもいいだろう。「3本狐…」僕はその狐をもう一度じっくりと見た。足には傷があり、倒れていた。「この上から落ち、枝で運よく生き延びたが足に傷を負い、ここで身動きをとれなくなってしまったということか」僕は考えた。
こんな生き物を持つものといえばどんな人だろうか… 僕は市川さんを見た。「そして、僕にこの狐を助けてほしいと受け取っていいんだよね」彼女はうなずいた。しかし…
僕は知っていた。もう自分には超能力という力が存在しない。わかっていても存在すると信じたいという気持ちがあった。「よし、できる限りはやってみる。成功する可能性はほぼゼロだが…試してみる会はあるだろう」僕はたった1つの希望を頼りにした。奇跡だ。
傷の負った足の上に手をかざした。「お父さん」僕はつぶやいた。「こんなことは確かに不公平だと知っている。だけど今回だけは…助けて!」すると、本当の奇跡が起きた。
空から雷が落ちてきたのだ。普通ならそれは悪いことかもしれない。だが、今回は違った。雷はある場所を集中的に落ちた。狐の傷がついている場所だ。雷が傷をふさぎ、血が出てこなくなった。かすり傷なら少し経てば治るはずだ。あとは待つのみだった。
「しかしな、いったいどこから来たんだろうか」僕は狐を持ち上げて眺めてみた。少し汚れていたが、毛はつやつやとしていて、約13.5㎏ほどだった。意外と軽い。「ここにいたのか」ちょうどそこへ誰かの声がした。その人物を見ると驚いた。
「は!?」