魔女の旅々17巻の裏話(ネタバレ注意)
この話は魔女の旅々17巻のネタバレになるので、17巻を読み終わった方のみ読んでもらえたら嬉しいです。それではどうぞ!!
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魔女の旅々17巻に出てくるアンネロッテの設定を思いついたときのことを書こうと思う。(※特定を防ぐためフェイクも交えて書きます。)
事の発端は数年前のある日、僕が警察署にて警察から取り調べを受けていたときのことだ。
はい。
こんな不穏な出だしに恐らく読んだ方のうち1人か2人は僕が何らかの犯罪に手を染めたのかと思うかもしれないけれど、あらぬ誤解を生みたくはないので前もって否定させてもらうけれど、僕が悪いことをして取り調べを受けたわけではない。
ある日、ちょっとした事件を目撃して通報した結果、証人として署まで呼び出されたのである。
幸い、人が死ぬような事件ではなかったものの、僕が通報した時点で犯人が逃走したため、特徴などを聞き取りたいとのことだった。僕は快諾して署まで向かった。
取り調べ自体はとても風通しの良い雰囲気のなかで行われた。
具体的に言うと署内の喫食スペースのような休憩室のような、ともかく何にでも使えそうな一室で行われた。
取り調べを受ける最中に警官がジュースを何度か買いに来るくらいの雰囲気だった。風通しが良すぎてもはや筒抜けだった。しかしそんな感じの緩い雰囲気のおかげで僕は無駄に緊張しなくて済んだのも事実である。
これはきっと小心者な僕に対する最大限の配慮に違いない。
「取り調べ室が空いてないからここでやるね」
「はい」
違った。
何はともあれ取り調べが始まった。とたんに犯人の特徴を根ほり葉ほり矢継ぎ早に尋ねる。
「性別は?」「髪型は?」「身長は?」「服装は?」「年齢は何歳くらい?」「体格は?」「どの方角に向かっていったかな」
警察官はしつこいと思えるほどに尋ねる。よほど捜査が難航しているのだろうかと僕は思った。僕は覚えている限りを話し、取り調べは終わりとなった。案外あっけないものである。どちらかというとその後の調書の確認作業のほうが大変だった。
やけに根掘り葉掘り聞くものだから、僕はきっとまだ犯人が捕まっていないのだろうと思った。
取り調べ後に軽く話す機会があったので、犯人についてそれとなく尋ねると、警察官は「いやもう大体目星ついてるよ」とのことだった。日本の警察は優秀だ。
そもそも僕の証言など必要ないくらいには捜査は進んでいたらしい。じゃあ僕いらなくな~い? と思わなくもなかったけれど、警察官曰く、第三者からみた客観的な視点が欲しいとのことだった。
なるほどなるほど。
そのあとで、取り調べの中で結構細かく聞いていた理由を教えてくれた。
「無意識の状態でぼんやり見たものって、目にしてから時間が経てば経つほど存在が曖昧になっていくんだよね。だから、すぐに聞かないと証言の意味がなくなっちゃうんだよ」
「ほえー」
「記憶が古ければ古いほど捏造しやすくなるからね。曖昧な記憶に付け込んで望み通りの証言を得るために誘導することだって容易になる。まあそんなことしないけどね」
「ほんとですかー?」
そのあとかなりグレーな話なども聞いたりしたけどともかく人の記憶力は信用ならないから、なるべく早く証言を集める必要があった、とのことだった。
つまり目撃証言とは、曖昧な犯人像を人々の記憶の中で覚えている部分を繋ぎ合わせて作り上げる共同作業ということらしい。僕の証言と、また別の人の証言と、そのまた別の人の証言。それぞれ憶えていた部分が重なり合うことで、一人の人間が浮かび上がるのだ。まあ今回は監視カメラが全部解決したらしいけど。
「というわけで見栄張って覚えている振りとかされると結構困るんだよね」警察官は語った。
みんなも取り調べでは犯人に対して憶えてないものは正直に憶えていないと話そう。僕との約束だよ!
取り調べは無事終わり、犯人もその日のうちに捕まった。
僕は警察署をあとにしながら、そういえば喫食スペースで取り調べやってたのにかつ丼出なかったなぁ、とぼんやり思った。
その日一日の出来事を振り返ったときに、僕は人の記憶力というものに興味を抱いた。
こうして出来上がったのが、アンネロッテさんの設定である(アンネロッテさんの設定というよりは、アンネロッテが出てくる話の設定だけれど)。
話の種はどこに転がっているのか分からない。
いつでも物語を作り上げることができるように、曖昧な記憶のない人生を歩んでいきたいですね。
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