大地の果てを目指し鈍行列車で北へ向かった話【後編】
「北海道&東日本パス」を用いて鈍行列車を乗り継ぎながら青森県の竜飛岬へ向かう旅行記、完結編。前回と前々回で道中の観光や街歩きをしながら津軽線の三厩駅にたどり着いたところまで執筆した。
三厩から竜飛岬までは町内バスを利用することになる……のだが、実はこのバス、帰りの最終便は日の入りとほぼ同時に竜飛岬を発車してしまう。そんなわけで今回はレンタカーでアクセスしつつ、ついでに車中泊で宿泊費を浮かすという作戦に出た。1人旅では正々堂々と公共交通オンリーで行きたい主義なのだが、秘境の旅では少々卑怯な手も使わざるを得ないだろう。
ちなみに現在は「わんタク」という乗合タクシーが運行されており、運休の影響で終着駅となっている蟹田駅から竜飛岬まで任意の時間帯で利用できる。ただし営業時間が 17 時までとなっているため、夕日を拝みたい場合は 12 月などでないと厳しい。めっちゃ寒そう。
で、レンタカーを借りるために町内バスを利用して奥津軽いまべつ駅へ向かう。竜飛岬行きのバスは華麗にスルー。
竜飛岬に到着
レンタカーを借りた後は津軽半島をぐるっと西の方へ抜けて十三湖をぶらぶらし、竜泊ラインを北上して最終目的地である竜飛岬に到着した。なかなかダイナミックな景色を楽しめたが、運転中なので道中の写真はなし。
ちなみに私は津軽海峡冬景色の歌詞から「竜飛岬」と記述していたが、現地の表記では「龍飛崎」が正しいと思われる。今になってようやく気づいて過去の記事も含め直そうかと思ったが、面倒なのでやめた。ちなみに、先程の竜泊ラインのように龍と竜の表記揺れはありそうな感じだ。
わりと目立つところに歌謡碑を発見。ボタンがついており、押すとかなりの大音量で津軽海峡冬景色の2番が流れ始める。上野発の夜行列車も連絡船も過去のものとなってしまった……。
階段国道として有名な国道339号線へ。ここの表記は竜飛になっているな。
けっこうな傾斜を下りていく。国道に指定した当時は将来的に自動車が通れるよう整備する計画だったらしいが、ここまで急勾配だと厳しいのではないだろうか。
下りきった場所から見るとこんな感じ。
それにしても人いないな……。夏休み期間の観光スポットとはいえ、コロナ禍の平日だとこんなものだろうか。近くの飲食店もすでに営業終了していた。
で、再び階段国道を登ってビュースポットへ。CLANNAD のけっこう重要なシーンで使われたのがここ。
ちなみに、映画「中二病でも恋がしたい! -Take On Me-」という過去の京アニ作品の聖地が次々登場する聖地巡礼欲張りセットな作品でも、階段国道と一緒に使われている。気になる方はぜひ視聴してみてほしい。(ただし本編の視聴が前提なのでアニメ未視聴だと厳しいかも)
で、肝心の景色だが……
一面の曇り景色!一応うっすらと北海道を拝むことができるが、日は全く差さない状況。でも私はけっこう晴れ男なので、日没のタイミングでちょうど晴れ間が見えるのではないか……?
と期待して待ったものの、余裕で惨敗。残念無念。それどころか雨まで降ってきた。
翌日
というわけで車中泊を経て翌日。ちなみに入浴は近くにあるホテル竜飛の温泉をお借りした。
残念ながら雨は止んでおらず、当然日の出を拝むことも叶わなかった。そんなわけでだいぶ消化不良であるものの次の目的地へ。向かった先は青函トンネル入口広場。
その名の通りちょうど青函トンネルの入口に位置する広場で、トンネルを行き来する新幹線や貨物列車を間近で拝むことができる。
その後は奥津軽いまべつ駅に戻りレンタカーを返却。次の便まで時間があったためうろうろ探索していた。最も利用者の少ない新幹線駅とのことだが、駅舎はけっこう立派。
新幹線の改札口まで階段で行くのはだいぶきついので、大人しくエレベーターを使うのが吉。
青森観光
その後は青森駅まで戻って市内の観光を続ける。青森駅はかつて本州と北海道を結ぶ大動脈の結束点だったという背景から、駅設備はかなり余裕のあるつくりとなっている。かつて長大編成の夜行列車や優等列車が多数発着していたホームの端に、2両編成の列車がちょこんと停車している様が時代の移り変わりを感じさせる。
ホーム頭上にある出発信号には「東京・福島・三厩」の文字が。それぞれ東北本線・奥羽本線・津軽線の起終点を表しているが、今となっては直通する列車のない行き先が掲げられているのはなかなかエモい。津軽線の蟹田以降が廃線になってしまうとどうなるんだろう……。
現在改札口が置かれているのはホーム南側の駅舎のみとなるが、連絡船への乗降口に直結する北側の通路もかつては使われていたのだろう。
この連絡橋も本州と北海道を行き来する人々で賑わっていたのだろうか。
かつての連絡船乗降口には博物館へと改装された八甲田丸が鎮座している。現在、北海道まで行くフェリーの発着地は青森駅から3km ほど離れたターミナルとなっており、徒歩で連絡するのは少々厳しい。
で、さっそく八甲田丸を観光……せずにバスに乗車し、三内丸山遺跡へ。両方まとめて観光する時間はなかったため、駅から遠い三内丸山遺跡を優先したというわけだ。八甲田丸はまた青森に来る機会があれば訪れれば良いだろう。……ただし今になって振り返ると新青森駅から近いのは三内丸山遺跡になるため、もしかしたら二者択一の選択ミスっていたかもなあ。
中はこんな感じ。竪穴住居や物見やぐらなどがわりとコンパクトにまとまっており、サクッと歩いて回ることができる。
教科書で見た景色がそのまま目の前に現れるというのはなかなか面白い。
ちまっとした竪穴住居だけでなく、かなり大きな建物もある。
前述の通りコンパクトにまとまっているため短時間で楽しむことができ、入場料も安いので観光スポットとしてもけっこうおすすめだ。
最終日
翌日、東京を出発してから5日目の今日が旅の最終日である。
青森駅周辺で海鮮でも食べようと思ったのだが、早朝&コロナパワーでどこも開いておらず、仕方なくのっけ丼へ行った。価格はそれなりに良心的でモリモリサービスしてくれるので楽しいが、「The 観光地のアトラクション」感が強すぎてローカルエリア好きの私としては微妙な気持ちになった。
で、青森駅。前日と違い快晴。
「あ~、帰りは新幹線に課金して帰るのか」と思った人もいるかもしれないが、捻くれ者の私はそんな単純なルートは使わない。乗るのはこちらのリゾートしらかみだ。
リゾートしらかみは青森~秋田間を五能線経由で運行している観光列車で、指定席に課金すれば乗車券部分は 18 きっぷや北海道東日本パスで乗車可能だ。青森~秋田というと奥羽本線で結ぶ特急つがるが走っているが、リゾートしらかみは五能線を経由するため日本海の風光明媚な景色を楽しむことができる。
ちなみにこの便は朝ラッシュ時間帯に青森を出ることもあり、青森駅から乗車してくる観光客はだいぶ少なかった。そして車内で発車を待っている中ふと横を見ると、大量の通勤通学客を乗せた青い森鉄道が滑りこんでくる。「オールロングシートとかふざけてるだろ……」と思っていたが、やはりラッシュ時間帯は瞬間的に首都圏並みの混雑になるのね。
で、スカスカの状態で出発。新青森でちょこちょこ乗車があったが、本格的に人が乗ってきたのは弘前だった。
ちなみに青森方面から五能線へ行く場合は弘前を素通りすることになるのだが、リゾートしらかみは乗降の多い弘前で客を拾うために川部~弘前間をスイッチバックしながら往復する。来た道を逆走するというのはなかなか面白い。
五所川原駅ではストーブ列車で有名な津軽鉄道に接続……するのだが、場内進行時に支障物が線路上に見つかったらしく、安全確認のため5分ほど遅れてから到着。そして津軽鉄道は接続待ちせずに出発していくという……もし乗り継ぐ旅程組んでいる人がいたら悲劇だ。
日本海沿岸に出てしばらくすると、千畳敷駅というところで観光のため 15 分停車する。ただし、今回は先程の安全確認による遅れがダイレクトに影響して 10 分の停車となってしまった。
わちゃわちゃと外に出て千畳敷海岸を散策する。発車数分前には汽笛でアナウンスされるためうっかり置いてけぼりにされる心配は無用だ。
その後は荒々しい日本海を眺めながらひたすら南下。青森出発時には快晴だったのに雲行きが怪しくなってきた。
で、五能線を走りきって五能線が再び奥羽本線に合流する東能代駅に到着。めっちゃ雨降ってきちゃった。
ここから秋田へ向かうため、リゾートしらかみは再びスイッチバックを行う。今回のスイッチバックは区間がそれなりに長いため、みんなで座席を進行方向へ転換させるのが一般的なようだ。
で、終点の秋田駅に到着。フリーきっぷに指定席券を課金するだけで乗れる列車としてはかなり快適な旅だった。
秋田観光
最終日のダメ押しとして秋田を観光していく。さっそく秋田犬がお出迎え。
といっても観光情報を全くリサーチしていなかったため、行き当たりばったり観光。ひとまず駅近くにある久保田城跡(千秋公園)というのが目についたため行ってみた。
天守閣っぽい建物が再現されていた。御隅櫓(おすみやぐら)という武器庫兼物見やぐら的な建物らしい。
さらに赤レンガ郷土館へ。前回の岩手銀行赤レンガ館では到着が営業時間外だったため、こちらでリベンジ。
岩手と同じくこちらも元々は銀行として建てられたらしい。明治~大正期の歴史を感じさせる建築様式が良い感じ。
東京へワープ
そんなこんなでテキトーにぶらぶらしてから、最後は贅沢に課金してワープする。鈍行で5日間かけて来た道のりを飛行機で華麗にすっ飛ばしていく。
ちなみに東京に戻ってからもフリーきっぷは有効なため、品川からは JR でで帰宅。本当は蒲田までバスで出るのがフリーきっぷ勢の最安ルートなのだが、そこまでの時間的余裕はなかった。
おわりに
というわけで、全3回におよぶ東北鈍行列車の旅もこれにて完結。鈍行用のフリーきっぷを使って何日も旅を続けるのは初めてだったが、あまり無理のない旅程を組んだこともあり満足度はかなり高かった。
もちろん、フリーきっぷの効力をフル活用するために始発から終電まで乗り続けるような旅も楽しいだろうが、ちょこちょこ途中下車して観光や街歩きを楽しむのも面白いものだ。個人的には車窓が見えないと鉄道旅の魅力も半減してしまうため、日の出ている間だけ移動して夕方以降は街をぶらぶらするというスタイルが性に合っている気がした。まあ観光スポットは営業時間終わってて入れないことも多いが。
今回の旅では下北半島の大湊線方面はスルーしてしまったほか、一番の目玉である竜飛岬では残念な景色になってしまったため、青森にはまた再訪してリベンジしたいところだ。あと、東北地方で唯一スルーされてしまった山形県にも行かねば。
……といったところで今回はここまで。