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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第48回 デリケートなイチゴの品質管理 すべての農産物で対応可能?

前回に引き続き、日本からイチゴをオーストラリア市場に展開する際のケーススタディとして、「SWOT分析」で明らかになった「弱み:品質管理」の対応策を解説します。海外展開における「品質管理」では、「シェルフライフ(貯蔵寿命)」を一日でも長くすることが必須条件です。イチゴは、農作物の中でも最もデリケートで収穫後の扱いが困難とされているため、イチゴのシェルフライフのノウハウを習得することにより、ほぼ全ての農作物の品質管理が可能になると言っても過言ではありません。

シェルフライフを伸ばす「容器」

まず、輸送用の容器について考えてみましょう。イチゴの輸出に適した容器は、柔らかいフィルム素材でイチゴを宙づりにする構造になっています。これにより、輸送中のダメージを最小限に抑え、高品質を保つことができます。しかし、このような特殊な容器は、一容器あたり通常の10倍以上のコスト(100~300円)がかかることもあります。そのため、販売価格に対して容器のコストを抑える工夫が求められます。

例えば、イチゴが15粒入る容器の価格が300円の場合、イチゴの現地での販売価格は、容器代の数十倍の価格に設定しなければ、輸送コストを考慮すると利益を得ることが難しいと言えます。

イメージ 出所:近畿農政局 奈良いちごラボ

具体例を挙げると、同容器を使用する場合、イチゴ全体の重量(NET重量)を把握【全体で約750g(イチゴ50g/粒×15粒)】し、その重量をベース(kgベース)に豪州の市場価格(平均価格の一例は約1400円/750g)を参考にします。

豪州の容器のトレンドを理解する

豪州では、生分解性プラスチック(微生物で分解され、自然へと還っていくプラスチック)容器や紙容器などのリサイクル可能な材料に注力する傾向にあり、消費者の中には、プラスチック包装の農産物を敢えて購入しない層が一定数存在するほどです。このような傾向の多くは西洋諸国でみられると言えます。そのため、豪州に限らず、西洋諸国への海外進出前に同トレンドも考慮しなければなりません。
しかし、長距離輸送に耐えうる容器となると、現状ではプラスチック素材の使用が避けられません。この課題に対しては、容器に「輸送に必要不可欠なプラスチック」であることを明記し、消費者に訴えかけることが必要です。また、生分解性プラスチックを使用している場合は、「生分解性プラスチック」使用と容器に大きく記載することもブランディングの一部として活用できるかもしれません。
多民族国家である豪州では、ターゲット顧客層によって「プラスチック」に対する価値観が異なるため、事前にターゲット顧客を明確にすることも重要です。例えば、欧米人とアジア人では環境問題に対する意識や価値観が異なることが多く、その違いを理解し対応することが求められます。

まとめ(日本の農業者の皆様へ)

オーストラリア市場での成功は、日本の農産物の輸出全般における品質管理のノウハウを向上させる絶好の機会です。イチゴのようなデリケートな農作物のシェルフライフを延ばす技術は、他の農作物にも応用可能であり、日本の農業ビジネスの発展に大いに寄与するでしょう。オーストラリア市場での成功を足がかりに、日本の農産物の国際的な評価を高めることで、さらなる海外輸出の促進が期待できます。


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