映画「怪物」の感想
ネタバレ的な要素もあるので、まだ本作ご覧になっていない方はご注意ください。(とてもよい作品だったので是非劇場で鑑賞していただきたい!)
映画「怪物」を観て感じたことを書いてみる。
序盤、学校でのいじめの物語かと思いきや、完全にミスリードさせられていた。
次第に、誰が悪なのか、誰が犯人(怪物)なのかを考えながら鑑賞するが、物語が進むにつれてその観方自体が間違っていたことに気付かされる。
物語の中には実質的な悪は存在せず、登場人物たちは自分の見た事実の側面(事実の一部)の解釈を誤ったために自ら作り出した、架空の「怪物」に苦しまされるのである。
事実は解釈や捉え方によって虚構になりえる。
さまざまな視点から描かれ、視点によって見え方が異なる物語は、まるで多義図形(見る人によって何に見えるか違う絵)のようだった。
見ているものが全てではない。そして見て分かったつもりのものが事実とは限らない。
そんなメッセージを強く感じた。
自分は特に、怒りの感情が芽生えたときにこの考え方をすごく意識している。
例えば、駅構内で後ろから走ってくる人にぶつかられ、イラッとしても「いやいや、この人は親の死に目に会うために走っているんだ」とか「きっと奥さんの子供が今にも産まれそうなんだ」とか考えるようにしている。
もちろんそんなことはないかもしれないけれど、可能性は0%ではないし、自分が見えていない事実が存在する可能性を、排除してはいけないと考え、想像することで怒りも幾分緩和される。
そういうパラダイムシフト的な考えを普段も意識しているため、この映画のひとつのメッセージにはすごく共感したし、改めてステレオタイプなものの見方や、先入観をもたないよう、知らず知らずにバイアスをかけないように気を付けようと思った次第である。
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