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研修医教育における「フィードフォワード」の実践について考える

早いもので、研修医になってからもう2ヶ月のジョンです。ご無沙汰しています。

6月からは「循環器内科」をローテートすることになりました。実は2ヶ月間、同じ上級医の元で「総合診療科」をローテーションしていて、新しい上級医に付くのはかれこれ2ヶ月ぶり、という状況です。

人が変われば、受けるフィードバックも変わる‥ということで、今日は最近流行りの「フィードフォワード」について、考えてみたいと思います。


フィードフォワードとは何か?

フィードフォワード、という言葉を知っていますか?最近チラチラSNSで見かけていた言葉なんですが、先日松村先生のNoteを拝見し、しっかりと学ぶ機会になりました。


フィードフォワードを簡単に言うなら、「未来軸の思考」ではないでしょうか。先を見据えて、これからどうすべきか、を追求していく考えのこと。
フィードバックが「改善」ならば、フィードフォワードは「向上」というイメージです。
ティーチングとコーチング、に対応するような用語でしょうか。


個人的には、
「フィードバック」はPDCAの中のC; Check を、
「フィードフォワード」はPDCAの中のC→A;Assessment の2つに対応しているように思います。

例を出しましょう。

例:腹腔穿刺を行うことになった
あなたはまずキシロカイン5%を用いて、局所麻酔を行う。
その際、シリンジに陰圧をかけながら吸入麻酔薬を進め、シリンジを進めながらその都度麻酔薬を注入し、腹水が引けてきたことを確認。その後麻酔薬を注入しつつ、針を戻してきて、局所麻酔終了とした。

この時、私は、「シリンジを押しながらその都度麻酔薬を注入していたけれど、陰圧をかけて腹腔に入るまでは局所麻酔薬は注射せず、腹腔に入ったことを確認した段階から麻酔薬を投与しないと、静脈麻酔になってしまうから気をつけたほうが良いよ」と言われた。

個人的にこの例は、フィードフォワードに入ると思う。

「シリンジを押しながらその都度麻酔薬を注入していたけれど」→Check 

「陰圧をかけて腹腔に入るまでは局所麻酔薬は注射せず、腹腔に入ったことを確認した段階から麻酔薬を投与しないと、静脈麻酔になってしまうから気をつけたほうが良いよ」→Assessment 

ここで例えば、
「シリンジを押しながら麻酔薬を注入していたね、どうしたら良かったと思う?」でとどめた場合、それは「フィードバック」に該当するように思う。

なぜ今、フィードフォワードなのか??

カオナビというサイトでは、以下の3つがフィードフォワード発展の理由とされています。

1.時代背景の変化ー変化が激しく、Cを行うだけの従来のフィードバックでは、時代についていけない。

2. 人材不足が深刻化ー労働人口の不足、特に若手人材の流出が問題となっている現代に於いて、フィードバックだけを行っているとモチベーションの維持が難しく、人材流出に繋がるため。

3.フィードバックはパワハラ気質?ー誤ったコミュニケーションを用いたフィードバックは、寧ろ受け手の自信を喪失する可能性もあり、慎重に行う必要がある→難しい。人を選ぶ。

また、この様な記載もあります[1]

フィードフォワードを行うことで、次の具体的な行動を促すことが出来る。フィードバックでは「この部分は直したほうが良い」という要素が強くなるあまり、「自分は認めてもらえていない」と感じ取られがちである。

株式会社武蔵野 武蔵野コラム, 「フィードフォワードとは【コミュニケーション/人間関係】」


研修医にはどのように指導すべきか?〜指導のゴールで使い分けて〜

これまでの中で

フィードバックはPDCAサイクルの中で言うところの「C」を

フィードフォワードはPDCAサイクルの中で言うところの「C→A」をやっている

という内容に触れました。

個人的に初期研修医に理想的な状態は何かというと、「C→Aを一緒に考えること」かな、と思っています。というか、人に仕事を振る、ってそういうことでしょう。

例えば
「先生、この臨床疑問についてちょっと調べてみようか(考えてみよようか)」
とAの部分を丸投げするフィードバックを研修医にやってしまうと、日々新しいことを学ぶ研修医は処理しきれず、どこかのタイミングで爆発することが多いでしょう(と思っています)。



逆に「C→A」の部分を指導医で済ませてしまうフィードフォワードばかり研修医にやってしまうと、どうなるでしょうか。

経験した症例・疾患についてはそれなりに手が出せるけれど、少し変化球になると手が出せなくなる、応用が効かなくなる。
親鳥の餌(=A)を待つひな鳥状態になってしまいます。これでは、別の場所に行った時、使い物にならないでしょう。


理想的な状態は、Cを行ったうえで、「じゃあ次どうしたら良いか一緒に考えようか(Aを一緒に考えようか)」とするパターンなように思います。

一緒に考える中で研修医は、上級医の思考プロセスを学ぶ。一方研修医から、「〇〇(治療方針)はぶっちゃけありですかね」と案が上がった時には、上級医はそれに対してのPros And Cons を伝える。そんな中で、上級医と研修医も「Shared Decision Making 」しながら治療を進めて行くことができれば、研修が終わる頃には「自分で考えながら治療を進める」型がある程度出来てるんじゃないかな‥と思うわけです。妄想レベルですが。

自分が気になった「〇〇(治療方針)」についてであれば、自分で考えようかな、という気分が出てくるような、そんな気もしています。


学習者の受け取り方で「フィードバック」を「フィードフォワード」に

ここまで指導サイドに焦点を当てて話を進めて来ましたが、じゃあ実際指導を受けている初期研修医は、どうすれば良いのか?というスタンスについて、最後に軽く触れたいと思います。

ズバリ、「ポジティブ思考」です。「なんとかなる」と似てますかね。

ケ・セラ・セラ。正確には「なるようになるさ」という意味。

例えば毎日研修をしていて、指導を受ける機会、ってあると思うんですよね。

そんな時、ポジティブに「なるほど!次気をつけます!」と明瞭に回答する。
これって実は、自然と「C→A」とサイクルを回しているように思うのです。

正確には、「次気をつける」というハチャメチャAssessment をしている、と言えるでしょう。

「次気をつける」というレベルの意識で再発予防に繋がる様な物は、そもそも気にするようなミスではないのかもしれません。
最も、「次気をつける」という意識レベルでの改革、ソフトレベルでの改革は8割型、同じ失敗をします。ハードレベルの改善が必要となれば、「しっかり」考える必要があるでしょう。その時は是非とも上級医の皆様、さじを投げず、向き合ってくださると研修医冥利に尽きます。何様やねん、って感じですが。


君も明日からフィードフォワードでPDCAガン回し!!

PDCAなんてね〜、なんぼ回してもええですからね〜。

向き不向きもあるかもしれませんが、ついつい考えすぎちゃう‥という人は、ポジティブ思考を取り入れてみて下さい。

逆に上級医から指導されまくって、甘々環境だな〜、と思っている人は、自分で考える癖をつけると更に学びが加速するんじゃないかなと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!


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それでは、また👋

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