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満員電車に突如現れた救世主。

仕事終わりの電車は、時間によっては結構混んでいて。
「降りたくてもなかなか降りられない現象」が起きたりするもんだ。
今日も、それだった。

「すみません、降ります!」

そんな声も、たくさんの人に吸収されて消えていく。

目の前にいる長身の男性はイヤホンをシャカシャカ言わせていて、私の存在には全く気づいていないようだった。

「ああ、今日はもうだめだ」

扉まで、あと1メートル。
ゴールはすぐそこだったが、心の中で小さく敗北宣言をした。
もう少し戦っても良かったんだけど、今日はもう戦う覇気は残っていなかった。

そんななか、状況が一変した。
目の前のシャカシャカ君が私に気づき、私が降りる花道を作ってくれたのだ。
それはそれは、ものすごいスピードだった。

「この人、絶対降ろしてやる」

そんな決意が伝わってくるようだった。

◇◇◇

ギリギリ降りることができた私は、彼にぺこりとお辞儀しお礼を言った。

その後から私は少しおかしい。
心臓がバクバクしていて、胸が熱いんだ。

日常生活のなんてことないこと。たぶん、これからもよくあること。
だけど、嬉しかった。私に気付いてくれて、なんとかしなきゃって動いてくれたことが、すごく嬉しかった。

人の親切で、こんなにも心が動かされるなんて。
ときめいたんだ。人から受けた親切に。

人の心をときめかせるようなこと、できてるかな。
誰かの助けになれてるのかな。

難しいことではないかもしれない。
そこに「誰かのために」という気持ちがあるのであれば。

たとえ今日初めて会った人でも。
もう二度と会えなかったとしても。
誰もが、誰かの「救世主」になりえるのかもしれない。





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