傾聴のコツ
本の詳細(読了日:2022/3/9)
書名:傾聴のコツ―――話を「否定せず、遮らず、拒まず」
作者:金田 諦應
出版社:知的生きかた文庫
ASIN: B07LGPGQFF
この本では、傾聴、つまり聴く力の重要さとその力の高め方を作者自身の経験を通して書いたものである。
会話をする際、いうまでもなく話す人と聞く人がいる。近年、そのうちの聞く人の力に注目が集まっている。聴く力がある人は信頼され、昇進しやすいなど仕事上で有利になれる。
仕事において、報連相が大事と言われているが、この本ではそれを信頼をベースにした人間関係をつくるということだとしている。プライベートにおいても夫婦関係や親子関係を円滑にする手段として聴く力の重要性を説いている。人は自分の話を聞いてもらえるだけで元気になれるからだ。自分の話をする方が好きという方もいるだろうが、聞いてもらう人がいるからこそ話すことができるのだ。
作者は宗教人で、東日本大震災の際に東北でカフェを開き、被災した方の話を聞いたり交流する場所を数年経営した。彼は被災した方の力になりたいという思いから、暇げで軽みのある佇まいを心がけて傾聴活動としてカフェを開いた。暇げで軽みのある佇まい。聞きなれない表現だ。ずっと昔からそこにいた存在、空気のような存在で暇そうだということだそうだ。
この表現を読んだとき、意表をつかれた。最近は仕事が忙しく、あくせくしていた。最近入社した、会社の後輩が聞きたいことを全然聞きにきてくれず、頭を抱えていたのだ。何がいけないのか空いている時間にずっと考えていた。確かに、忙しそうな人には積極的に質問しようとせず自分でなんとかしようと思い込んでしまうものだ。よっぽど重要なことでないかぎり、あの人に質問するのは後にしようと思われていたに違いない。
ほっとする場所やほぐされる場所にいてこそ、人は悩みを人に話すことができる。そうして話し尽くしたあとに人の話をきく余裕が生まれるのだ。だから、人の話を聞きたいと思ったときは、相手の話を聞き終わるまで「あなたの思いが伝わったと」いう意思表示をしながら適切な相槌をうつべきなのだ。
自分の友人でとても聞き上手な人がいる。会うととても話やすく、自分の思いや考えをなんでも話してしまいたくなるのだ。その人はこの本に書かれている傾聴する力のほとんどすべてを満たしていた。この本を読んでそのことにとても驚いたし、自分もその人のようになりたいと思った。