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近況(2024年7月16日)

サムネはGravnerの畑。行ってきたレポ、ざっと探した感じ見当たらないから意外とマイナーなのかもしれない。

さて、2週間ごとにこうして振り返りの時間を持てているのは悪くない。この2週間のうちにもいくつか物事はあったのだけれど、まずは最近の事柄から。

フリウリでアンフォラを使ったワイン作りをしているカンティーナで有名なGravnerに行ってきた。

日本語では「グラブナー」として認識していたけれど、電話したら「グラブネル」と言っていた。Gravnerはフリウリ東部、スロヴェニアとの国境沿いのGoriziaにある。カンティーナは市街地からバスで30分ほどの距離。暇だったから前日に徒歩で下見もした。ふつうは車で来るのだけど車、持ってないからね。

Gravnerのホームページはワイナリーとしては独特な作りをしていて。見るからに「個性派」なんだとはっきりわかる。イタリアに来た当時から「一度は行くぞ」と決意しつつもイタリアの東端にあることからなかなか辿り着けず、3月に時間があった時に凸電したが当然断られてしまった。

その後も一度メールして断られて。「これはこちらから日程を提示しないとダメなやつだな」と切り替えて改めてメールしたらようやく予約できた。ワイナリーは暇な時期と忙しい時期がある。7月は少し落ち着く時期らしい。逆に3月あたりは忙しそう。今回は僕の他にTrevisoの方から2人の男性が来ていた。つまり合計3名。アンフォラを扱っている小さなカンティーナという都合上、大人数での受け入れは難しいらしく、少人数の方が受け入れやすいらしい。常駐しているスタッフは4名だけと聞いてなるほどと思った。

カンティーナ訪問の流れは①畑の見学、②蔵の見学、③熟成庫の見学、④試飲となっている。

試飲は2015年と2016年の2つ。Gravnerのワイン自体は去年ピエモンテで一度飲んだことがある。だから試飲自体は味の確認程度。年によって味の違いが大きかったのは面白かった。2016年はエレガント、2015年は力強い。悪くいえば味のブレが大きい。良く言えばその年に応じた味わいを追求している、と言える。僕の好みは2015年。第一印象は2016年がおいしく感じるけれど2015年は時間をかけて香りが開く。生産者のJoskoによると2011年が最も良くできたワインらしい。

僕が今回最も感銘を受けたのはワイン畑の環境づくり。

Joskoは葡萄を育てる環境にこだわりがあるらしく、畑の中には池が配置され、随所にバードハウスが設置されている。池の水は山から引いていて一年中枯れることがない。葡萄作りでは鳥害が多いらしく小鳥の数が増えると葡萄栽培にも弊害があるとされるが、池がある場合は小鳥は池の水を摂取する。一方、気候が乾いていて近隣に水がない場合に小鳥は葡萄を食べる。だから、池を設置することにより虫は小鳥など自然環境を豊に保ちつつ葡萄栽培ができるとのことだ。イタリアに来て以来こんな説明を受けたのはここが初めてでびっくり。BIOとか農薬とかビオディナミとか、対処療法的な話はよく聞くがものづくりと世界との調和を丁寧に実践している様を見るのは初めてかもしれない。さすがはGravner。

主に育てているRibollaはできるだけ遅く収穫するとか、アンフォラを地中に埋めているとか、最近は屋外の地中にアンフォラを埋めようとしているとか、ガラスを使ったワイン作りを始めようとしているとか、興味をそそる事柄は他にもいくつかあったけれど、ただただ目指している世界観が好きだなと感じたカンティーナは初めてかもしれない。

さて、「近況」として書き残した記憶がないけれどこの冬にLa Biancaraというヴェネトのカンティーナにも行ってきた。La Biancaraは日本でも何度か味わっていて「美味しい(身体に合う)」と感じていた。Gravnerは飲んだことこそなかったものの価値観が合いそうだなと感じていた。どちらも行って良かったし、行くべきだったと感じているけれどそのどちらにも行ってしまった今となっては「行くべきところがなくなってしまった」だ。

渡伊以前、気になっていたカンティーナはL'ArcoやLa Biancara、Edi Keberなどヴェネト、フリウリに集中していた。カンティーナ訪問や試飲会を繰り返すうちに地域ごとの味の傾向や土着品種などを知り、今は以前よりもずっと知識と経験がある。何も知らなかったからこそのイタリアのカンティーナへの好奇心はほぼ消え去り、今はイタリアに影響を与えてきたオーストリア、スロヴェニア、フランス、そしてジョージアに対して興味を持ち始めている。ワインは元より、言語(方言)や料理に対しても他国からの影響が強い。

料理やワイン、オリーブオイルにチーズ、パンに発酵といろんな物事に興味を持って果てはイタリア以外の国に対しても目を向けようとするなんて正気の沙汰かと自分でも思うけれど、今僕が気になるのはオーストリア、スロヴェニア、ジョージアのワイナリーで、フリウリの料理名や味付けにも影響を与えているフリウリ語である。ちなみにインターネット調べによるとフリウリ語はケルトの影響を受けているらしく、こんなところで物事は繋がるんだなと趣深い。

話は変わるけれど雨季が終わり、夏が始まった。忙しかった畑仕事は過ぎ去り、今は水を与えるだけ。畑からはニンニク、レタス、イタリアンパセリ、セージ、ズッキーネなどが採れ始めている。去年も感じたけれど採れたてのものが一番美味い。

手作りのパン酵母は2週間が経過した。パン酵母らしさが少しずつ感じられるようになっている。最初の1週間は仄かな甘みが感じられたけれど今は酸っぱさが支配的。最初に作ったパン酵母はTipo 2の小麦粉で作ったが失敗した。発酵は始まったが続かなかった。本にはライ麦を使用せよ、と書いてあったが手に入らなかったのだ。ライ麦の場合は100gのライ麦と100gの水から酵母を育てるがTipo 2の小麦粉の場合はその分量を調整しなければならなかったのだろう。あるいは砂糖を入れるなど。ライ麦は一番早く酵母を作ることができるらしい。酵母には2日ごとに栄養を与えるが1週間が経過すると毎日栄養を与える。余分な酵母は捨てなければならないのでパン作りに精を出したりパンケーキを作ってみたりと工夫している。「発酵の技術」というE-bookを少し前に購入して勉強した知識がここで生きている。

「自分が今いるべき場所」みたいなものをずっと探していて。フリウリ近辺であることは合っている気がするのだけれど、まだしっくり来る感覚がない。それがなぜかはわからないけれど、急いでも答えが出る類の問題でもない気がしている。「ここがいいかな」という気持ちが存在するのなら、その心に従って時間を過ごし続けるのもいいか。そんな気持ち。


以下、気になっているカンティーナメモ。

FLUS。農業組合みたいの。Triple Aの試飲会で飲んだ。サーブしてくれた人がこだわり強そうだったので特に印象に残っている。

Zurab Topuridze。ジョージアのカンティーナ。

Christoph Edelbauer。オーストリア。

Georg Schmelzer。オーストリア。Vini Vignaioliのイベントで見つけた。

Domaine Bruno Duchêne。フランス、ラングドック・ルーション。La Lunaを作っているところ。

Nikoloz Antadze。日本で気に入っていたジョージアのワイン。

Iago Bitarishvili。去年見つけたジョージアのワイン。Triple Aの試飲会でも見かけた。

Ploder Rosenberg。オーストリア。去年テラコッタの製造所で見つけたカンティーナ。ウーディネの試飲会で偶然再会して愛を確認した。

https://www.awa-inc.com/cms/wp-content/uploads/2022/09/Ploder-R.pdf

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不定期連載。実験的に始めます。買い切り。

イタリア滞在期(2022.10~)を連載中です。イタリア料理、ナチュラルワイン、日々のこと。エッセィ。

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