『xxxHOLiC』とイタリア語 - Volume 5 -
イタリア語の勉強のマンネリをずっと感じていたのだけれど、たまたま滞在することになったヴェネトのお家の娘さんが日本好きで(会えてはいない)、お部屋になんと「xxxHOLiC」があるではないですか。読み始めたらもうやめられない止まらないハウスかっぱえびせん。イタリア語はわからないのにストーリーがスルスルと入ってくる。何が言いたいかがわかる。キャラクタがー喋り出す。漫画ってすごい。
語学の勉強は英語もそうだったけれど単語や文法は地道に学ぶとして、フレーズはシチュエーションと一緒に学ばなきゃいけないから難しい。合いの手というか、今 この位置、このタイミングじゃないと気持ち良くないフレーズってままある。それを学びたいのだけど、何せ一期一会だから学びづらい。でも漫画ってその手のフレーズに溢れているというか、その手のフレーズしかない。映画もきっとそうなんだけど、自分のペースで読めるってのが漫画のいいところ。
そんなこんなで記憶を頼りにイタリア語を訳します(意訳)。
エピソード・雨わらし
serio は英語のserius. sul serio で「真剣に」という副詞的なはたらき。"Dici?"だけでも「マジで?」と使うけれど多分こちらの方がきれいな言い方。ホワイトデーのお返しが一切届かないことを憂いた侑子さんに四月一日が「何か作りましょうか?」と言った際の侑子さんの返答。ニュアンス的には「え、マジで?!」。
イタリアではご飯を食べる前にBuon appetitoと言うけれど「ご馳走様」はない(と思う)。付け足すとしたらGrazie. この記事を書くときにGoogle翻訳にかけたらGrazie per il pastoと出てきたけれどそんな言い回しは聞いたことない。era tutto squisitoで「全部とっても美味しかったです(しみじみ)」という意味なので使うかどうかはともかく絶妙な訳だと感じた。
マキネッタでコーヒーを入れるときに「Volete caffe?」は超頻出フレーズだけど、ti va del … という表現は知らなかった。magari del … というのも日本語だとあるあるだけれどイタリアではあまり耳にしない。多分日本語的表現なんだと思う。
"c'"というフレーズは c'è または ci sono、英語で言うところの there is/are のようによく使うけれど、c'entra を使ったことはほとんどない。c'entra, ci entra で「ここに入る、収まる」という意味の否定系で「ここには何も入らない、、何の関係もない」となり、日本語的にはそれとこれとは無関係、みたいなニュアンスかな。
止まない雨に小言を言った四月一日に雨わらしが登場早々ビシッと釘を刺した一言。イタリアには罵詈雑言の語彙が五万とある印象なのですがChe cavoloはあまり耳にしないフレーズ。Polco dio, Dio cane, Che cazzoあたりはよく耳にします。神も豚も犬も身近なものなので良く使われますが、cavoloもその一つ?
雨わらしシリーズで大好きなネタです。侑子さん、百目木、ひまわりちゃんの元に駆け込む綿貫が三者それぞれに同じことを言われます。ポイントはそれぞれによって言い回しが変わっていること。
侑子「te ne sei tornato a casa piangendo proprio come nobita di doraemon」
百目木「te ne sei spuntato qui piagnucolando … come nobita di doraemon」
ひまわり「sei venuta qui piagnucolando… come nobita di doraemon」
日本語でもちょっとずつ言い回しが違ったことは覚えているんだけど、翻訳ってここら辺のニュアンスをどう使い分けているのかとても気になる。
Va bene? は何にでも使える便利フレーズなのですが、va beneだけを覚えてしまうと言い回しがとても拙くなってしまうのが玉に瑕。qualsiasi は「どれでも」という意味で英語の whetherever 的な立ち位置だと思うのだけれど頻出用語でもなくていまいち使い所に困っていた。英語だとwhenever/whereeverあたりは使いやすい単語だけどイタリア語の場合 quando vuoi/dove vuoiみたいに一単語にまとまらないからここら辺の使い勝手が結構変わる。una cosa qualsiasi で「こんなものでも」みたいな不定のオブジェクトを意図できると学びました。本編だとひまわりちゃんが髪を結ぶのに使っていたリボンを解いた時のフレーズ。ちなみにリボンはNastro。
certo che で「〜なのは確実」
ne hai di faccia tostaで「あなたは神経質です」
fare il filo a una del genere「そんな人を愛する」
Certo che は割とよく耳にする。「〜なのは確実だよね」という言い回しは日本語でもよく使いますよね。そのノリかな。本編では「あんなのと(ひまわりちゃん)よく仲良くできるわね」といったようなセリフだったと思う。どうしてこんな言い回しになるのか気になる方は本編1巻から読もう!
四月一日と百目木の会話を中断する雨わらしのセリフ。Su はsu/giùと上下を指すイタリア語なのですが、こういう使い方もあるみたい。alle cianceは「おしゃべりをする」という慣用句。ciance自体の意味は「せせらぎ」。alle cianceで「せせらぎの中にいる」という意味だけど流れている川の中にいることを指しておしゃべりとは何ともイタリア。
四月一日が赤い紫陽花に背を向けているときに発した言葉。「寒気がする」と言うイタリア人に未だかつて会ったことがない。というか日本人特有の表現な気がする。correnteは普段は「電気」を意味する。ちなみに紫陽花はイタリア語でortensia。
四月一日が紫陽花に吸い込まれた後に出会った少年に発した一言。僕は普段何が起きているかわからない時はChe ha successo?と言うけれど、多分自然な言い回しじゃない。その他にもこの巻には "che ti prende? (大丈夫?)", "ma che ti è preso? (一体どうした?)" といった表現が出てくる。日本人的感覚だと「何が起きたの?」と主体に対しての疑問が先行することが多いけれど、イタリア的には「あなたに何が起こっているの?」とあくまでも人間を中心に添えた感覚が自然なのかも。
四月一日が少年に最後にかけた言葉。イタリア三大どうやって言ったらいいかわからないフレーズの一角を落とせました。sei stata coraggiosaは直訳すると「勇敢だった」だけれど日本語だと頑張ったねが自然な訳。ご馳走様、頑張ったね、お疲れ様はイタリアではなかなか自然じゃない言葉なので言えなくていつも困ってる。
百目木が警察からの報告を皆に伝えるときに前もって発した一言。口語だと mi hannno chiamato … というのが自然だけれど、百目木らしさ、少し堅い表現だとこうなるのかな。
scoppiareは「爆発する」なので意訳すると元気いっぱいかな。お見舞い&様子見に来た雨わらしが四月一日にかけた一言。元気いっぱいとか日常生活では絶対に使わないフレーズだから漫画でこういうの学べると楽しい。
Visto che non … は「〜ないのに」という接続詞かな。これもよく耳にする。雨わらしのエピソードだとここら辺の回収が秀逸で好き。Visto che は肯定的にも否定的にも使う。
四月一日に恋する座敷わらしを意図した雨わらしの発言。本編では同じセリフを2回言っていて、確か日本でも少し言い回しが違ったはず。イタリア語だと初出は "Insomma! Non capisco cosa ci trovi in te…"。non capisco che の後の trovare が条件法になっているので四月一日に良いところがあることを疑っている雨わらしの感情がよく表されている。
エピソード・羽根
「動く」を表す動詞 muovere の passato prossimo. 英語で言うところの move。管狐が筒から初めて出てきた時の四月一日の一言。ちなみに管狐は volpe nel tubetto。管狐といえば地獄先生ぬ〜べ〜ですよね。
日本語でもよく使うフレーズですね。でもイタリア語でなんて言うかは知らなかった。ここら辺の日本語、小説や漫画、初等教育で自然に覚えているってすごいことだと思う。女の子の背中に生えた羽根について四月一日が侑子さんに話したときにみなまで言わずとも知っていた侑子さんに四月一日が発した一言。
ひまわりちゃんに帰り道を誘われた掃除中の四月一日が返した一言。Google 翻訳にかけると「とても懐かしい」と出てくる。"mi manca …" は寂しさを表す常套具だけれどここは文脈的に「もう少しで終わるよ」となる。
女の子の背中に生えた羽根を初めて見た四月一日が直後に発したセリフ。直訳すると「暑さが悪い冗談を言っている」となるけれど欧米特有の言い回しだと思われる。小説など文語でもよく使われる「悪い夢でも見たんじゃない?」も多分欧米起源じゃないかな。
羽について四月一日と百目木がディスカッションしていた際の百目木の一言。"Mi sembra strano" のように不思議さを表明する言い回しは日常生活でも多用するけれど相手に同意を求める表現は使ったことがない(というか多分日本人的表現な気がする)。文脈的に複数の事柄を指しているからsembrano/straneとなっているけれど単一の事象なら Non ti sembra strana?。
夏祭りの集合場所に着いた四月一日が早く到着していたひまわりちゃんにかけた言葉。ラブコメ夏祭りの定番セリフ。イタリアでこの掛け合いを聞くことは生涯一度もないと思うけれど教養として覚えていたいフレーズです。è molto che aspetti? で条件法になっているのがイタリア語っぽくていい。
羽根の生えた女の子がとある男性と喧嘩している時のセリフ。posto という単語は英語で言うところの place でよく使うけれど fuori posto というのはあまり耳にしない。fuori strada はオフロード、山道を意味するように fuori posto であるべき場所にない、つまり、間違っていることを指していると思われる。
matta はあまり綺麗な表現じゃなくて口語のイメージ。英語で言うところの mad。良い意味だと「粋」だし、悪い意味だと「ばか」。
目の前で羽根が成長したことに対して四月一日が発したセリフ。イタリアに一年以上いて davanti と avanti の違いをよくわかっていないのでこれを機に覚えるぞ。davanti ai miei occhi で in front of my eyes。
イタリア人はとにかく così を使うのだけれど、正しくこのように使われている。でも普段は日常会話の中にサラッと出て消えていくからいまいち用法を覚えきれていない。マ・エラ・コジィ、タント・ペル・グアルダーレ。
ここのやりとりって日本人っぽいなと思う。感情的なセリフと理性的なセリフの対比。これがイタリアだと感情的な言葉には感情的でより長いセリフが返ってくるので更にヒートアップして論点がさっぱりわからなくなる。Non serve affatto という強調表現は覚えておきたいところ。
per caso, nel caso, ogni caso と "caso" を使った表現はたくさんある。同士と一緒に覚えたいね。
エピソード・ホワイトデー
ホワイトデー本編で四月一日が前回までのあらすじから本題へと話題を移したときに侑子さんが発したセリフ。trattare は「扱う」という動詞で di che si tratta? で「どんなことについて扱いたいの?」が直訳かな。日本語版の表記は「それで?」とかだと思う。
猛暑の日に庭のプールに入った侑子さんが発した一言。「生まれた」は sono nata/o だけど「生まれ変わった」は普段使わない割に使えると表現の幅が広がるフレーズなので覚えておきたい。
壺を勝手に持ち出してきた(盗んできた)侑子さんに突っ込む四月一日の一言。「羽根」のエピソードで百目木が "non è quello!(そっちじゃない)" とシリアスに告げるシーンもある。
元の姿に戻れなくなった管狐と四月一日を瓶に満たした水の中に入れることに成功した時の侑子さんの一言。日常だと"Ho fatto", "Fatto bene" などと事務的に言いがちだけれどユーモアな表現も覚えたい。
壺の中の水を通って知らない風景に直面した四月一日が発した一言。動転した気持ちを伝えるのがche accedentiなのかな。Che è successo?とうまく使い分けられるようになりたい。
この表現はどこまで正確なのかわからないけれど、mi vuoi ascoltare? は「あなたは私の話を聞きたいですか?」が直訳だと思うけれど、自分の要求を表すときにも使うみたい。
ホワイトデーのお返しを受け取った座敷わらしが発した一言。日本語だとなんてセリフだったか全く覚えていないけれど、多分こんな感じ。Mi hai reso felice を直訳すると「あなたは私を幸せにしてくれました」となってルパン三世のエンディング間際で使われそうなセリフなんだけど座敷わらしがそんなロマンチックな言葉をこの場面で言うわけがない。「本当にうれしい」とか「… ほんとうにうれしい」みたいな大和撫子なセリフを翻訳者が粋に訳したのだと想像している。
その他
fratellone:お兄ちゃん
un dono:贈り物
fuso orario:時差ぼけ
le ali:羽根
bancarelle/chioschi notturni:屋台
una cosa del genere:そんなこと
è in grado di fare:〜できる
con tutta questa fretta?:そんなに急いで
narciso:水仙
chiudi il あ!:黙って!
dacci dentro:(不明)
xxxHOLiC は擬音語もよく使われていて、これもまた普段全然耳にしない言葉ばかりなのでこちらもまとめたい。
Grazie per leggere. Ci vediamo. 読んでくれてありがとう。また会おう!