あの日セラピさんに言えなかったこと
「僕の仕事は人に堂々を言えるものじゃないから」
そう言って、少しだけ遠くを見つめているセラピストさんを見ながら私は何を言ってあげたらいいかわからなかった。
とあるお店で職業を聞かれた。
その時にセラピストさんは前職の職業を答えて
周りに「女風セラピストだと思われないように」してくれた。
その帰り道にポツリと
「botちゃんみたいに立派な仕事じゃないしね」
「人に堂々を言えるものでも、受け入れられるものでもないから」
人が溢れる交差点でポツリと呟かれた言葉が
今もずっと心に残っている。
「そんなふうに私は思っていないよ」
「たくさんの人が救われていると思うよ」
きっとこの時にかけて欲しかった言葉はこれじゃない。
生きていれば、いろんな葛藤がある。
「所詮男娼」だとか「所詮股舐め男だし」とか
そう言う言葉を掲示板でも度々見かける。
セラピストとして働いていく中で
お金を稼げたり、いろんな貴重な経験ができる反面
辛いことや苦しいこともあるんだと思うし
「じゃあやめたら?」と言う人もいると思う。
でも自分で選んだ選択肢だったとしても
辛い時はある。
職業蔑視する人は想像以上にたくさんいる。
風俗という世界は、よりそれを強く感じるんだと思う。
でも、私はそうは思わないことも許してほしい。
セラピストさんが選んで、その道を歩むと決めて
その道で出会って、いろんな話をして
たくさんのユーザーさんが心を救われている。
どんな仕事も誰かのありがとうが集まって
お金になり、経済が回っていく。
どんな職業なのか?どんな肩書きなのか?ではなく
大事なのは「ありがとう」と言う人たちの存在を忘れず
ネガティブな声を入れないか?は
多くのビジネスにおいて大事だ。
「私は味方だよ」
そう言ってあげたら少しは気持ちが楽になったのだろうか。
私は風俗の世界で働いたことがないから
『綺麗事を言うな』とか
『気持ちなんてわからないよ』と言われてしまうかもしれないけど。
あの時は何も言えずにじっと
セラピストさんの横顔を眺めているだけだった。
人が溢れる渋谷のスクランブル交差点を通るたびに
いつもそのシーンを思い出す。
あなただったら、なんと声をかけますか?