日本は今、人的資本の会計時代の幕開けを迎えた
多くの経営者が人的資本を「最も重要な資産」として位置づけているにもかかわらず、貸借対照表上では資産として認識されてこなかった。なぜ人的資本が資産計上されないのかという点に問題意識を抱き、いち早く人的資本の本質的な特性をふまえて、人的資本の会計を究明してきたのが、神戸学院大学経営学部教授の島永和幸氏だ。著書『人的資本の会計-認識・測定・開示-』では、人のもつ知識・スキル・能力等に着目した会計のあり方、すなわち「人的資本の会計」がいかにあるべきかを探究している。「日本も人的資本の会計時代がようやく幕開けした」と語る島永教授に、人的資本会計への向き合い方を聞いた。
インタビューの前編では、人的資本経営を巡る論点や情報開示の意義を語ってもらった。
■前編の目次
政府主導の下、急ピッチで進められた日本の人的資本経営の情報開示
まだまだ人的資本経営に関する論点が整理されていない
情報開示をすることで投資家とのギャップが埋まる
任意開示と法定開示の役割をわけなければいけない
マクロ経済の中で企業が果たす役割に基づいてジョブ型雇用を考える
インタビューの後編では、人的資本会計の概要や時代観を語ってもらった。
■後編の目次
人的資本会計は、日本経営の成長エンジンとなる
人的資本が抱える問題は社会問題の縮図
島永 和幸 氏
神戸学院大学 経営学部 教授
1975年長崎県生まれ。1998年長崎大学経済学部卒業。2003年神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了(博士(経営学))。2003年神戸大学大学院経営学研究科 助手、2004年神戸学院大学経営学部 専任講師、准教授を経て、2019年より現職。
専門は、人的資本会計、サステナビリティ基準、国際会計。とくに、人的資本の開示や会計問題に関心を持つ。主な著書に、『人的資本の会計-認識・測定・開示-』(同文舘出版、2021年)がある。同書にて、グローバル会計学会2020年度学会賞(2021年)、日本公認会計士協会学術賞(2022年)受賞。