『ベンチャー企業がぶつかる「10億円の壁」』Vol.11:10億円の壁にぶつかるベンチャー企業が最も力を入れるべきこと
職場のリーダーとはどうあるべきか
今回が、本シリーズの最終回となる。前回、10億円の壁にぶつかるベンチャー企業が新卒採用で上手くいかない大きな理由に社長の存在を挙げた。
社長が独断専行で決めてしまうがゆえに、会社全体で採用する仕組みがつくれない。採用チームを結成したとしても、十分に機能しない。これでは、会社にマッチした人材を獲得するのは難しく、定着が難しい。
売上5~7億円までならば、社長がひとりで決断してもいいのかもしれないが、本シリーズで再三説明したように、10億円を超えるためには、社長以下、役員、管理職、一般職が1つの組織やチームとして動くことが最重要だ。
実はそれをできないようにしているのは社長であり、時に役員である可能性がある。だが、社長らを責めることはできないだろう。確かに無理もない。まだ、組織の仕組みが出来上がっていない時期であり、社員の仕事力は大企業やメガベンチャー企業と比べると低い傾向がある。一部に優秀な人材もいるのだろうが、全社員に占める比率は高くはないだろう。
あるいは、資金繰りの問題もある。顧客数が少なく、大きな額のビジネスをする機会が少ないために、大企業のように豊富な資金が手元にあるわけではない。常に資金繰りには悩むはずだ。つまりは、時間をかけて育成ができない。個々の社員に仕事を担当させても、その進捗や成果いかんではある程度のところで見切りをつけて、社長や役員らが独自の判断で進めていかざるを得ない。そうしないと、資金ショートに陥るかもしれない。
これが、10億円以下の多くのベンチャー企業の実態である。この壁を乗り越えようとするならば、リーダーとはどうあるべきかと考えざるを得ない。そこで今回は、職場のリーダーを検証するうえで、たたき台になりうる事例を紹介したい。この事例には、10億円の壁にぶつかるベンチャー企業の多くが直面している問題が凝縮している。特定できないように、事例の一部を加工したことをあらかじめ伝えておく。
■もくじ
職場のリーダーとはどうあるべきか
2人のリーダーをどう捉えるか
Aは仕事への姿勢がいいが、チームビルディングができない
Bは部下への権限移譲をするが、チームが機能しない
AとBの問題点
リーダーのあり方はステージによって変える
安心して仕事ができるような環境