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統合報告書は、あらゆるステークホルダーとの対話ツールと成り得る

人的資本経営は、もはや開示をどう進めていくかにテーマが移りつつある。背景には、年度決算から上場企業に課せられた人的資本情報開示の義務化がある。
また、投資や経営の広がりも大きな要因と言える。これに伴い、最近クローズアップされているのが統合報告書だ。あらゆるステークホルダーに自社の現状や方向性を説明する有効なツールとして注目度が高まっている。だが、単に流行っているから作成するでは意味がない。価値創造に向けた企業の本気度が伝わる統合報告書でなければ、ステークホルダーに何も刺さらないからだ。
そこで、証券市場論と機関投資家論を専門とされる明治大学商学部の三和裕美子教授に企業とステークホルダーにおける今後の関係性や統合報告書の意義を聞いた。


インタビューの前編では、近年における日本の資本市場の変化や人的資本情報開示の意味合いなどを語ってもらった。

【前編はこちらから】

■前編の目次

  • 投資家が人的資本経営のあり方を評価する時代が到来

  • 東証PBR改善要請が大きなインパクトをもたらした

  • 「負の外部性」が企業内に取り込む活動が重要

  • 読みやすさと情報量をいかに両立させるかが、統合報告書の課題


インタビューの後編では、統合報告書の位置付けや新刊『投資家資本主義の未来 : ESG投資の行方』に込めた想いなどを語ってもらった。

【後編はこちらから】

■後編の目次

  • 自ら試行錯誤しながら統合報告書を作成することに価値がある

  • 統合報告書は自社を知ってもらう最適なツール

  • 持続可能性を考えた投資をしなければいけない

  • 社会に向けた自社の取り組みを発信する大切さを理解したい


三和 裕美子 氏
明治大学 商学部 教授

大学卒業後、1988年から1991年まで野村證券岐阜支店に勤務。その後同志社大学アメリカ研究科修士課程、大阪市立大学大学院経営学研究科博士課程を経て、1996年より明治大学商学部および大学院にて「機関投資家論」を担当している。1996年から1998年には米ミシガン大学にて客員研究員を務める。主な研究分野は、機関投資家とコーポレートガバナンス、機関投資家のエンゲージメントとESG投資、資本市場と女性活躍、アクティビストが企業に及ぼす影響など。関連論文を多数公表している。主な著書として、『激動の資本市場を駆け抜けた女たち』白桃書房(2022年)、『ファイナンス入門』(共著)、ミネルバ書房(2021年)、『DXと人的資本』(共著)、税務経理協会(2023年)、『投資家資本主義の未来 : ESG投資の行方』千倉書房(2024年)などがある。