三菱商事はホワイト企業か?人的資本データから分析
“キングオブ商社”三菱商事の人的資本データを分析
今回は就活ランキングで常に上位、平均年収も2090万円とバグった数字を叩き出している三菱商事株式会社のホワイト企業診断をしていきたいと思います。
誰もが羨む大企業なので、分析する必要ある?という声も聞こえてきそうですが、実際に細かく数字を読み込んでみると、面白い事実も見えてきました。客観データを分析する醍醐味です。ぜひご一読ください。
今回の情報ソース
2023年6月23日提出の有価証券報告書および企業ホームページに掲載されている人事データを主に参考にしました。
それでは早速参りましょう。
平均年収
三菱商事の平均年収…2090万円
最新の有価証券報告書によると、2090万円という日系大手企業の中でも異次元の数字となっています。
日経新聞の記事によると
とのことで、エネルギーバブルの波にも乗って、絶好調です。日経新聞が総合商社の平均年間給与の推移がグラフ化していましたが、この10年の伸び方は凄いです。
従業員数
連結:79,706人
単体:5,448人
従業員数は、連結で約8万人、単体で約5,500人と、日本を代表する大企業と言える規模です。
いわゆる本社正社員の1学年の人数は5,448÷38=約143人というイメージ。
※22~60歳まで均等にいたとして計算
連結で8万人いるのはグループ会社の多さ、世界拠点の多さからくる数字でしょう。
離職率
自己都合離職者の比率:1.3%(2023年3月末 従業員数比)
有価証券報告書には離職率に関する明確な記載はありませんでしたが、人事データページから自己都合離職者の比率が1.3%であることが分かりました。
これは、他の企業では見たことないくらい、めちゃくちゃ低い数字です。高給だしクビもなく、居心地がいいのだろうと予想できます。
総合商社に勤務する年収2000万円の窓際族のことを「ウィンドウズ2000」と揶揄されることがありますが、そういう人も多くいるのでしょうね。丸の内に存在する天国なのかもしれません。
総研修費用
情報なし
大企業にしては珍しく、総研修費用は開示されていませんでした。人的資本投資への意識の高まりから、近年、研修費用を開示する企業が増加しているので、不思議です。
研修制度について
以下のような研修を実施している記述がありました。さすがの大企業。非常に充実していますね。
新入社員研修: 新入社員向けに、社会人としての基礎知識やスキル、三菱商事の企業理念や事業内容などを学ぶ研修を実施。
階層別研修: 各階層の社員向けに、必要な知識やスキル、マネジメント能力などを習得するための研修を実施。
職種別研修: 各職種の社員向けに、専門知識やスキルを深める研修を実施。
海外研修: グローバルに活躍できる人材育成のため、海外での勤務や研修の機会を提供。
語学研修: ビジネスに必要な語学力の向上を目的とした研修を実施。
自己啓発支援: 社員が自ら学び、成長することを支援するため、通信教育や資格取得支援などの制度を提供。
リーダーシップ研修: 経営層を含む各階層のリーダー向けに、リーダーシップスタイルのアップデートやダイバーシティマネジメント、成長支援スキル強化などを目的とした研修を実施。
EX関連研修: エネルギー・トランジション(EX)分野において、企業価値向上に貢献できる人材育成を目的とした研修プログラムを整備。
DX関連研修: デジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進できる人材育成のため、プログラミングやプロダクトマネジメントなどのDX関連研修を充実。
地域の匠育成プログラム: 各地域に精通し、「生きた」インテリジェンスを獲得できる人材育成を目的としたプログラム。
グローバル研修生制度:
海外のビジネススクールへの派遣。中国やインドをはじめとした世界各国の文化と言語を習得するための語学研修
入社2年目以降に世界各国でトレーニングを積むトレイニー制度
中途採用に関して
キャリア採用比率:44%(2024年3月31日時点)
人事データページから、2024年3月31日時点のキャリア採用比率は44%とかなり高い水準でした。
2023年度には、第二新卒採用とバックオフィス職採用も積極的に行っているとのこと。バックオフィスの皆さまは三菱商事に入るチャンスがあります。今すぐビズリーチに登録を!
また、三菱商事は「ダイナミックな人材シフト・登用」を掲げ、全社横断的なタスクフォースを組成し、部門を超えた人材登用を積極的に行っています。人事の流動性を高めたい意志を感じることができる記述であり、中途入社の人にとって魅力的な点と言えるでしょう。
その他中途採用の戦略
近年、三菱商事は従来の新卒採用を中心とした採用戦略から、より多様な人材を獲得するために、中途採用を強化しています。特に、デジタル化や脱炭素といった社会変化に対応できる、高い専門性と経験を持つ人材を求めています。
中途採用者の活躍を促進するため、社内制度や企業文化の見直しにも取り組んでおり、中途採用者も活躍しやすい環境が整いつつあると考えられます。
女性活躍推進について
女性管理職比率:12.0%(目標値:15%)
男性育児休業取得率:44.3%(目標値:100%)
男性の育児関連制度利用率:89%
女性管理職比率12.0%は、他の大企業と比較しても比較的高い水準です。目標として2025年度末までに15%以上を掲げておりますが、この目標数字を達成するのは、現場の肌感からすると、実は結構ハードです。
というのは、管理職候補の世代というのは、まだ圧倒的に同期の中の男性比率が多いため、その中から女性を積極登用しないといけないからです。
そういう意味で、女性活躍推進への本気度を読み取ることができます。さすがの三菱商事様といった感じです。
男性育児休業取得率44.3%に関しては、他企業と比べるとぶっちゃけ低いのです。しかし、男性の育児関連制度利用率は89%という記述があり、長期間の育休と、出産立会などの単発の特別休暇を分けてカウントしているのだと思われます。
三菱商事が言うところの「育児関連制度利用率」を「男性育児休業取得率」としてカウントしている企業も多くあるので、育休も取りやすい企業だと言えます。
にしても、このあたりもちゃんとしていて、真面目というか、流石です。
ダイバーシティスコア
情報なし
ダイバーシティスコアは開示されていませんでした。近年、投資家からの要請もあり、多様性に関する情報開示の重要性が高まっています。三菱商事では、「多彩・多才」な人材の活躍を推進するとしており、今後、ダイバーシティスコアなどの指標を用いた開示にも取り組むことが期待されます。
福利厚生プログラムの概要
情報なし
福利厚生プログラムの詳細な内容は開示されていませんでした。社員の健康やワークライフバランスを重視する企業として、充実した福利厚生制度を設けていることが期待されます。
労働環境(平均労働時間、残業率)
年間平均総実労働時間:1993.8時間/年
月間平均残業時間:29.9時間/月
平均年間総実労働時間は1993.8時間、月間平均残業時間は29.9時間です。
他の大企業と比較して、月間平均残業時間はやや長い傾向にあります。
他の総合商社の月間平均残業時間を調べてみると
三井物産…34時間
伊藤忠商事…42時間
住友商事…12時間
丸紅…18.4時間
でした。三井物産、伊藤忠も同じような数字なので、総合商社の中でもこの3社は、割とハードワーカーが多いということが予想できます。
ちなみに、住友商事の友人は、他の商社と比べて、社風がゆるいと言ってましたが、平均残業12時間というのと整合性が取れますね。
従業員満足度
社員エンゲージメント度数:74%
社員を活かす環境度数:69%
社長と社員の対話に関する肯定的回答率:96%(会社や仕事に対するエンゲージメント向上、中期経営戦略・経営への理解度向上)
従業員満足度を示す指標は、いずれも高い水準で、愛社精神の高さが伺えます。三菱商事の友人は、三菱商事社員であることを誇りに思ってる節を感じますが、その感覚とも合っています。
社長と社員の対話機会を設け、96%の社員が会社や仕事に対するエンゲージメント、中期経営戦略・経営への理解度が向上したと回答している点は高く評価できます。
キャリア開発支援制度の有無と内容
公募型異動制度「Career Choice 制度」
社内他部署における複業制度「Dual Career 制度」
国内外での学位取得を目的とした「サバティカル休職制度」
配偶者の国内外転勤に伴う再雇用制度
三菱商事は、社員が主体的にキャリアを形成できるよう、多様なキャリア開発支援制度を設けていますと謳っています。
「Career Choice 制度」は、社員自らが希望する部署や職種に応募できる制度であり、チャレンジ精神や成長意欲の高い社員にとって魅力的な制度と言えるでしょう。
「Dual Career 制度」は、社員が複数の部署を兼務できる制度で、幅広い経験を積むことで、スキルアップやキャリアの幅を広げることが期待できます。
「サバティカル休職制度」は、社員が一定期間休職し、自己啓発や研究活動などに取り組むことができる制度です。社員が長期的な視点でキャリアを考え、能力開発に励むことができる環境が整っていると言えるでしょう。
「配偶者の国内外転勤に伴う再雇用制度」は、社員が配偶者の国内外転勤に同行するために退職する場合、一定条件のもと、再雇用する制度です。結婚や出産などのライフイベントを経ても、安心してキャリアを継続できる環境が整えられている点は高く評価できます。
客観的に見ると、上記のような制度は大企業がだいたい取り入れているような制度ではありますね。
まとめ
三菱商事株式会社は、人的資本への投資を非常に重視している企業であることがわかりました。充実した研修制度、多様なキャリア開発支援制度、社員のエンゲージメント向上への積極的な取り組みなど、社員の成長と活躍を支援する土壌が築かれています。
また、平均勤続年数が長く、自己都合離職者の比率が低いことからも、社員の定着率が高く、働きやすい環境であることが伺えます。
近年は、従来の新卒採用中心の戦略から転換し、デジタル化や脱炭素といった社会変化に対応できるような、高い専門性と経験を持つ即戦力人材獲得のため、中途採用を強化しています。
社内制度や企業文化の見直しにも取り組んでおり、中途採用者も活躍しやすい環境が整いつつあると考えられます。
一方で、女性管理職比率の低さは、依然として課題と言えるでしょう。目標達成に向け、女性リーダー育成のための研修やメンタリング制度の導入、女性社員の活躍を推進する社内風土の醸成など、具体的な取り組みを強化していく必要があるでしょう。このあたりに、少しコンサバな社風が見てとれました。
また、離職率以外の詳細な人事データや福利厚生、ダイバーシティに関する情報が、開示されていない点は、今後の課題と言えるでしょう。
キングオブ商社・三菱商事のホワイト企業レポートは以上になります。
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最後に、note内で三菱商事の関連記事も参考までに掲載します。
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