創造的な学びの本質
従来の乳幼児保育では、「安全」「安心」「基本的生活習慣」が重視されてきました。もちろん、これらは大切な要素です。しかし、私たちはそれだけでは不十分だと考えています。
なぜなら、乳幼児期の子どもたちはすでに豊かな学びの主体だからです。そして、その学びは、単なる模倣や反復ではなく、創造的なプロセスとして展開されていきます。
私たちが考える創造的な学びとは、子どもたち一人一人が、環境との対話を通して新たな意味や可能性を見出していくプロセスです。それは、与えられた活動をこなすのではなく、子ども自身が世界を理解し、表現していく営みなのです。
では、子どもたちによる創造的な学びとはどのようなものなのでしょうか。
それは、子どもたち一人一人が素材や環境と出会い、心が揺さぶられる瞬間から始まります。感覚が研ぎ澄まされ、「もっと」という欲求が自然と生まれる。そんな「出会い」の中に、学びの芽生えがあるのです。
そして、素材との対話を重ねる中で、様々な可能性が見えてきます。時には思いがけない発見に目を輝かせ、また新たな試みへと向かっていく。この探究のプロセスそのものが、創造的な学びの本質と言えるでしょう。
さらに、そこで生まれたイメージは、子どもたちなりの表現となって形になっていきます。その表現は次の「出会い」へとつながり、創造的な学びは螺旋のように深まっていくのです。
例えば、アトリエでの創造的な学びの場面をご紹介します。
絵の具との出会いで、指先に伝わる感触に目を輝かせる姿。最初はそっと触れていた手が、やがて大きな動きとなり、偶然生まれた色の重なりに心を揺さぶられていきます。
カンナ屑との出会いで、その手触りや香りに引き込まれていく様子。素材を重ねたり、丸めたり、破いたりしながら、新たな可能性を見出してく探究の時間。
また、日常の生活場面でも創造的な学びは生まれています。
おやつの時間、何気なくテーブルを叩いた音との出会い。その音色に誘われるように、隣の子も参加し始め、やがて空間全体が即興の演奏会へと変わっていきます。叩き方を変えたり、リズムを重ねたりしながら、音への探究が広がっていく時間。
これらの姿は、単なる「活動」や「製作」ではありません。そこには、子どもたち一人一人の感性と、創造的な学びの本質が存在しているのです。
私たちは、このような乳幼児期からの創造的な学びの芽生えを大切にしたいと考えています。それは、レッジョ・エミリアが説く「子どもは有能である」という考えと深く結びついているのです。
次回は、このような学びを支える「レッジョ・エミリアが描く子ども像」についてお伝えします。
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