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日常の取るに足らないものこそ大事です

ご無沙汰しております。

私たちキャリアコンサルタントは人の人生について視て、聴いて、語るということがあります。キャリアコンサルタントの使命として、仕事に関することだけでなく、その人の人生にも深くかかわる姿勢を求められます。しかし、いくらキャリアコンサルタントの養成講座を受け、専門的知識と技能を身につけたとしても他人の人生についてそんなに簡単に理解をし、他人の人生を語ることができるのでしょうか。そのような以前からの疑問があって今回書いてみようと思ったしだいです。

まずは、自分の(ここでは私の人生というより、読者の方それぞれのという意味で)人生について考えてみたいと思います。たとえば、面接の場面など、私たちはしばしば自分のこれまで歩んできた人生を振り返り、人に語ることがあります。就活生でいえば、ガクチカなど学生時代の出来事とその時の自分の考えや気持ちなど物語として考えることがあると思います。

また、人生の要所で、私たちは自分のこれまでの歩みを振り返り、これから進むべきについて考えることが度々あります。自分のこれまでの出来事や経験から得た知識、スキルを物語のように話すことがあります。特に、面接の場面ではそのような物語性をライフストーリーとして語ることが求められることも多くあります。

特に、キャリアコンサルタント界隈では、この物語性、ライフストーリーが重要視されているようにも私からは見えます。しかし、私はそんなに簡単なことではないと思っています。それは、自分の人生での出来事や経験してきたこと、その時その時の気持ちや考えたこと、身近な人からかけられた言葉など、さまざまなことがあります。

自分が見たもの、聞いたこと、匂い、味わったもの、手触り、感じたこと、ありとあらゆるものも含めての自分です。しかし、自分の人生を語るという行為は、自分の人生を要約するようなものです。キャリアコンサルタントの仕事の中で、クライアントの話を聴き、それを要約することがあります。またそれを求められることもあります。

しかし、これはさまざまな多くのものを見落としているともいえます。これは、ある意味必要のないものとしてそぎ落としてしまっているともいえます。人生の中ではさまざまな出来事があります。今後の自分の人生を左右することから日常の取るに足らないこと、その時の季節に感じる風景、温かい春の陽気、植物や生き物たちの命の息吹、夏の蒸し暑さや雨上がりのアスファルトの匂い、秋の空の高さや涼やかな虫の音色、冬の肌を刺す寒さやどことなく寂しげな空模様と朝のすがすがしさ。

こういったものは普段、私たちが人として自然と見て聴いて感じていることです。しかし、私たちはこのようなことを取るに足らないこととして、自分の人生についてのストーリーからそぎ落としてしまっているのではないでしょうか。




私は、このようななんのへんてつもないもの、これこそが人生において重要な役割のように思えてなりません。

自分の過去の経験で、その当時よく聞いていた音楽を何かの拍子に久しぶりに聴いたとき、その当時の出来事や感情を思い起こすといった経験が誰しもあると思います。その当時は、その頃によく聞いていたその音楽が自分にとってかけがえのないものだったはずです。しかし、少なくともキャリア面談の中で、あるいは面接の場面ではその当時、よく聞いていた音楽に自分がどれだけ励まされ、助けられたという経験を語る機会はほとんどありません。

そこでは、自分の人生をライフストーリとして語るという形で要約することを求められるからです。

自分が一番しんどかったとき、一番つらかった当時によく聴いていた音楽、よく読んでいた本や観た映画、自分の好きな風景、みたこと、きいたこと、感じたこと、ありとあらゆる物事こそが人生を形作っていると思えてなりません。自分の人生も人の人生も、私たちキャリアコンサルタントは多くの大事なことを見落としていいるのかもしれません。

自分の人生も人の人生も、人生を語るという行為はそれほど簡単なものではないと思います。しかし、少なくともキャリアコンサルタントとしてその立場になったとき、私たちは有能感や全能感を感じてしまうのもしれません。

人の人生について考えるとき、そういった驕りのようなものから解放されず、とらわれることによってあたかも人の人生についてすべてわかったような振る舞いをしてしまう恐れもあるかもしれません。いくらキャリアコンサルタントであっても、私たちはそんなにできた人間ではありません。

少なくとも私は、むしろ欠陥だらけです。すべてのことを知ることなんて不可能です。それをわかったように振舞うのはいかがなものかとも思います。そのような危うさが私たちの仕事では常に付きまとってきます。

このようなことを肝に銘じておかなければならないと思いを新たにしました。


人生を語るという行為は、そんなに簡単にできるものではない。

軽々に人の人生を要約することはできるだけ控えたい。

自分の人生をそんなに簡単に要約することもしてほしくない。

少なくとも、自分がこれまで感じてきたありとあらゆるものについてわかってほしいし、だからこそ、人のそのようなこともできるだけ理解したい。

人の人生において、実はとるに足らないものこそ、重要な人生のひとつのピースなのかもしれません。

取るに足らないものことこそ、人生に彩りを与えてくれているのかもしれません。

実はそこに、重要な何かが隠れているように思えてなりません。


今回はここまで。
ありがとうございました。

また次回よろしくお願いします。


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