【企業分析⑧】P&G
今回は世界最高のマーケティングカンパニーP&Gについて分析をします。
シャンプー・洗剤に代表されるような低関与商材(商品の機能での差別化が難しく、消費者もそのように捉えている商品群)を扱っていながら、取扱いカテゴリーのほとんどで大きくシェアを取っている同社ですが、その強さの秘訣はマーケティング戦略にあると言えます。
※逆説的ですが、そのような商材を取り扱っているからこそ、マーケティングを科学するという思想が生まれたのかもしれません。
今回のnoteでは、そんなP&G社の中でも最も戦略的なマーケティングを展開しているヘアケア(シャンプー)部門にフォーカスして、そのエッセンスを丁寧に分析・考察していきたいと思います。
【読んで欲しい人】
↓↓のような人向けの情報です!
・対象企業の現状を、サクッとどんな状況なのか知りたい。
・ビジネスモデル・マーケティングの勉強がしたい。
・就活対策のために企業の情報を網羅的に知っておきたい。
【ご注意事項】
・2017年時点での情報をもとに分析、考察しています。
・情報のソースは独自でかき集めており、分析内容には一部主観も含みますので、悪しからずでお願いします。
今回も同様に、以下の流れで分析をしていきます。
■市場環境(PEST分析)※全分析ともに共通
■ビジネスモデル(売上算出式)
■自社・顧客・競合分析(3C分析)
■製品・価格・流通・広告分析(4P分析)
■5F分析
■分析から見える課題
■分析を踏まえた新規施策アイデア
それでは今回も非常に長々と失礼しますが、お付き合いくださいませ!
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▼市場環境(PEST分析)※2017年3月時点・全分析ともに共通
・Politics(政治情勢)
農協の組織改革を柱とする農業改革、労働市場の柔軟化を含む労働改革、増え続ける社会保障費を抑制するための医療・年金・介護改革など、課題は山積みな状態。
米トランプ大統領がTPP脱退を宣言。TPP脱退実現の場合、TPP前提で計画されていた農業改革が遅れ、工業品の輸出が伸びない傾向。
同じく米トランプ政権の指針で、米軍駐留撤退の可能性あり。自国防衛についての議論が活発になる。→実際のトランプ政権の動きは現状不透明なため、影響を大きく受ける可能性あり。
・Economy(経済情勢)
米大統領選後、円安傾向が続いており、輸出企業(主にメーカー)の業績回復が見込まれ、景気は緩やかに良くなる基調。
2020年オリンピックに向けて公共事業・不動産開発はじめ、消費の拡大が続く見込み。
海外からのインバウンド来訪者数・消費額も年々増加傾向あり。
・Society(社会情勢)
2016年の労基関係事件もあり、働き方改革が緩やかに浸透し、企業活動において生産性が問われる。(プレミアムフライデー・週休3日制導入企業も出てきた)
流行モノはマス(TV)とネット(SNS)のセットで生成されるようになる。
・Technology(技術情勢)
AI、IoT、VR、ドローンなど、2016年騒がれた技術を活用した新端末・サービスが続々商品化、一般に普及していく見込み。
IoT、ロボット技術を活用したスマート家電商品も続々リリース、一般に普及見込み。
ビットコイン/ブロックチェーンのような仮想通貨の技術が、他産業にも応用される可能性が出てくる。
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▼ビジネスモデル(売上算出式)
ヘアケア部門全体売上 = (商品単価×販売数)× ブランド数
(対象ブランド)
パンテーン・パンテーンクリニケア・h&s・h&s for men・ヘアレシピ・ハーバルエッセンス・ヴィダルサスーン
※他消費財・ヘアケアメーカーと比較して、営業利益率20%と高い特徴あり(全部門での営業利益率は2016年度通気で20.6%)
→グローバルで都生産拠点を都度最適化し、規模の大きなブランドを複数抱え、スケールメリットも利きやすいため。
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▼自社・顧客・競合分析(3C分析)
■自社(Company)
【会社概念・事業理念】
・ビジョン:世界の人々の、よりよい暮らしのために
・企業目的:※抜粋
私たちは、現在そして未来の、世界の消費者の生活を向上させる、優れた品質と価値をもつP&Gブランドの製品とサービスを提供します。
その結果、消費者は私たちにトップ クラスの売上と利益、価値の創造をもたらし、ひいては社員、株主、そして私たちがそこに住み働いている地域社会も繁栄することを可能にします。
【直近業績】※グローバルでの業績
・2014年度連結
純売上:805億ドル(1ドル120円換算で9兆6600億円)
営業利益:147億ドル(1ドル120円換算で1兆7600億円)
・2015年度連結
純売上:763億ドル(1ドル120円換算で9兆1560億円)
営業利益:118億ドル(1ドル120円換算で1兆4100億円)
【経営資源】
・モノ:グローバルで最適化を実現する生産体制・流通網
180カ国でビジネス展開、売上10億ドル以上のブランドを25個も保有しているというスケールメリットをもって、生産工場・流通網ともに、状況の応じて随時最適化を図っている。
・人:"世界最高の人材輩出企業"と評される人材レベル
「社員の能力」ランキングで世界No.1。(米フォーチュン誌)
研修育成制度も充実しているが、人事制度も専門性を強化に特化して、原則は職能ベースで配属が行われる。
・情報:消費者リサーチ・マーケティング施策を徹底的に行う体制
1923年に「消費者・市場戦略本部」を設立。
消費者ニーズを的確に捉えるため、本部内の1万5000人の社員で、年間100カ国以上、500万人以上を対象に1万5000件の調査を実施している。
(Ex.)
・定量調査:POSデータ分析、消費者アンケートなど
・定性調査:おうち訪問、買い物同行、アイカメラモニターなど
【その他】
・製品ポートフォリオ(大きく10カテゴリ・65ブランドで事業展開)
ファブリックケア
ホームケア
ベビーケア
フェミニンケア
ファミリーケア
グルーミング オーラルケア
パーソナル・ヘルスケア
ヘアケア
スキン&パーソナルケア
ヘルスケア
【重点戦略】
1. イノベーション
新商品数は少ない(年間20-30ほど)が、1つの商品開発に数年をかけて、技術的イノベーションに重きを置く。
2. 大型ブランド育成
1つのブランドごとの売上を大きくして、スケールメリットを働かせる。
3. コネクト・アンド・デベロップメント
社外の技術も積極的に取り入れる姿勢。
■顧客(Customer)
【市場】※毛髪業市場、植毛市場、発毛・育毛剤市場、ヘアケア剤市場の合計
・2015年:4,383億円(前年度比99.3%)
・2016年:4,413億円(前年度比100.7%)
※ヘアケア剤市場規模のみに着目すると、2015年2,268億円(前年度比97.8%)で、微減傾向が見られる。
→ヘアケア剤のみで見ると国内市場は飽和していると想定される。
薄毛潜在層を意識した若干単価の高いスカルプケア系ヘアケア商品などが市場拡大を牽引する基調あり。
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