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田中芳樹「マヴァール年代記」再読 ~「のじゃ姫」の系譜~
昔書いたブログネタからの引用です。今スランプ気味なので、昔の資産で食いつなぐ~。
田中芳樹さんの小説と言えば、銀英伝の地名度が圧倒的ですが、自分が最初に読んだのは、確かマヴァール年代記だったように思います。銀英伝に関しては、小説やアニメよりも、PC9801時代のゲームで入ったのが最初で、小説→アニメの順で入った、そんな記憶があります。もう20年以上昔になりますか。
当時は、創竜伝、アルスラーン戦記、タイタニア、七都市物語・・と、色々書いておられたように思いますが、その中で、困ったことに「完結している」という理由だけで、マヴァール年代記は読む価値ありの作品になってしまっています。まさか、20年前は、アルスラーン戦記といいタイタニアといい、20年経っても終わっていない、なんて事態は予想していませんでしたから。。(2024年現在、どちらも完結済み)
話の内容は、コンパクトにまとまった銀英伝、とでもいいましょうか。執筆は銀英伝の方が先、マヴァール年代記の方が後になります。
父親を弑逆し皇帝となったカルマーン、その事実を知りながら、その部下として仕え、いつかカルマーンから簒奪を企む、ヴェンツェルン、幼き頃の二人の学友にして、ただ野心もなく生きるリドワーンと、三者三様の主人公たちの話になります。
(銀英伝のイメージで言えば、カルマーン=ラインハルト、ヴェンツェルン=ロイエンタール、リドワーン=ミッターマイヤー、という感じ)
作品としては30年前の作品なれど、今これがライトノベルとして現れたら、もっと評価されるのに・・という感じもして、もっと読まれてもいい話なのになぁ。。と思います。
ただ「皆殺しの田中」の異名は、ここでも発揮されるというか、今思うと、マヴァール年代記にも、最後の方で「粗さ」が目立つんですよね。。。それは、当時、高校生の頃に読んだ頃には気づかなかったものが、この歳になって読み直したから気づいた、というのもあるのかも知れません。
最後は、カルマーンとヴェンツェルンが激突することになるのですが、ええええ、というか、タイタニアやアルスラーンの最後のあたりを思い出すと、むしろマヴァールの頃にその萌芽はあったと考えるべきなのか・・と思ったりもします。そう思うと、銀英伝の頃は、余裕があったのか、最後の話の終わりは綺麗に終わっているなぁ・・と思うんですよね。特に田中芳樹さんの作品は、謀略家だの野心家だのと言った曲者がたくさん出てきて、うまく「始末」しないといけないので、どうしても最後にそうなってしまうのかな?と思います。(銀英伝で言えば、最後にオーベルシュタインが死ぬシーンがありますが、主人公ラインハルトより生き残っていたら、話が終わらない気がしますものね)
物語は、最後を片付けるのが難しい。。。という実例かも知れないですね。
そういえば、と、田中芳樹さんの作品には、結構昔から、ロリではないですが「のじゃ姫」が出てくるなぁ・・というは、昔、ネタにしたことがあって。
銀英伝には出てこないのですが、アルスラーン戦記に出てくる女神官のファランギース→タイタニアに出てくるエルビング王国のリディア姫(こっちは10歳なので、のじゃロリそのものとも言える)なんて、脳内では同じ声でしか再生されないとかネタにしてたものです。
マヴァール年代記では、主役格の三人(カルマーン、ヴェンツェルン、リドワーン)とは別に、それに華を添える紅一点のアンジェリナ姫というのが出てきます。ヴェンツェルンの妹にして、後、リドワーンの恋人→妻となる人物です。
これが田中作品に出てくる「のじゃ姫」の系譜に忠実というか、女傑というイメージよりも、水滸伝に出てくる一丈青扈三娘のような剣技にたけ、かつ、洞察力も鋭い、という、その手のキャラクターのイメージ付に便利なのかな?と思ったりします。
田中作品に限らず、他の作品でも出てくるのですが、自分の中で印象深い「のじゃロリ」と言えば「狼と香辛料」の賢狼ホロなどを思い出します。あちらは「のじゃ」というより「わらわ」や「ありんす」と花魁言葉の中に「のじゃ」が混じっているような感じですが。
ただ近年になって「のじゃロリ」なんて言葉が出回りだした頃に、その元祖は?と考えてみたときに、アンジェリナ姫を思い出すんですよね。ロリではないけれど、のじゃ姫=鋭い・老成しているというテンプレを、無意識に生み出したキャラなのではなかろうか?と。