才能と性格と仲間――私にとってのスポーツ漫画の醍醐味
アニメで知った『忘却バッテリー』が面白すぎて、放映終了後も漫画で続きを追いかけています。
アニメのほうはスポーツ漫画というかむしろギャグ漫画のような感じで、大笑いしながら見ていました。圭(けい・主人公?のキャッチャー)の記憶喪失も、いつも場を混乱させておかしな方向へ持っていく要素の一つであって、実は背景に深刻な原因があったとは思ってもみませんでした。が、今回はその話はおいておいて。
『ハイキュー!!』のときもそうだったけれど、『忘却バッテリー』も、読んでいる間ずーっと鼻の奥がつーんとしていて、今瞬きしたら涙がこぼれる……という状態が続くのです。
スポーツ漫画ではたいてい、前半のほうはチームメートの一人一人の背景、過去、今なぜそんな風にプレーをしているのかが描かれます。そして物語が進み、対戦相手が出てくると、今度は彼らについて、また一人一人に物語があることが描かれる。
という構造がわかっているのに、いちいち一人ずつの物語に入り込み、泣きそうになります。それが主人公とその周りの主要人物であれ、ライバルチームの憎らしい相手であれ、いつでもそうです。
なんでこんなにせつなくなり、心を揺らされるのだろう?
それはたぶん、キャラクター一人一人が自分の才能、性格、個性と必死に格闘する姿に感動してしまうから、だと思います。
一目でわかる才能から隠れた才能、穏やかな性格から攻撃的な性格、人との関係の築き方、日々の練習への向き合い方、努力の仕方に出てくる個性……
人によって全然違うそういうものを、存分に生かせたり、抑えつけたり、評価されたり、無視されたり。それでもどうにかしていこうともがく姿に、私は何度でも心を動かされてしまいます。
そして仲間。仲間がいるから頑張れる、という話だけでなく、どういう仲間が周囲にいるかによって、その人の才能や個性のどの部分が引き出されるか、どの部分は不要になってしまうかは変わってきます。どこまで本人が自覚して仲間に関わっていこうとするか、あるいは切り捨てようとするかも。
その組み合わせはあまりにも多様です。同じスポーツでも、同じチーム内でも、時期によっても変わります。でも、一人一人に切実な物語が必ずある。
面白いスポーツ漫画っていつでもそういうものだな、と思います。