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西宮さんみたいな人が店に来た

接客の最初の一声というのはとても難しい。

ありきたりな一言だと、「あ、あざっす」

みたいな感じで終わるし、素っ気ない反応をされたり

少しでも距離感を間違えるとそそくさと店を出てかれる。

話しかけるタイミングも難しいし、接客というのは奥が深い。

だが、接客のコツをつかみお客様が笑顔で靴を買ってかれる姿はとてもやりがいがあり充実感で満たされる。

そういったものを店のインターネットで調べ

見た俺は、早速実行しようとした。

行動力はあるのである。続かないだけで。

さっそく、カップルが入ってきたではないか。ビシネスチャーンス。

「あ、その靴可愛いですよね〜。昨日入ったばっかりで誰も持っていないと思います〜。もし良かったら履いてみますか??」

カップルの女性のほうに声をかける。最大限の笑顔で話す。フレンドリーに。フレンドリーながらも距離感は間違えずに。

と、そのお客様はこちらを見て、何も話さない。
困ったような、そんでもって笑顔のような。

少し離れてほかの靴を見ていた彼氏がやってくる。
その女性は彼氏と話している。


あ、これの24センチありますか?

彼氏が言う。自分じゃなんも言えんのかい!!

とか、恥ずかしがり屋なのかな?とかいろいろ交錯しながらバックヤードからとりにいく。

24センチの靴を持ってきて、またも女性に履いた感触を聞こうとしたその時、耳に補聴器が見えた。

あ、この人耳聞こえないし喋れないんだ。

そこでやっと合点がいった。
こんなん聲の形の西宮さんでしか見たことがなかった。

なるほどう、最初に話しかけたときの困ったような笑顔のような顔で黙ってらっしゃったのはそーいうわけか。

そこからは彼氏を通じて、話した。
彼氏は手話をしながら俺の伝えたいことを翻訳してくれた。

見た目は普通だし、普通に話しかけてなにも言ってこないって勘違いされたりするだろーなー。大変だろーなと思う。

できるだけ、声じゃなくジェスチャーで女性の方に伝えたり、数字を見せたりして何とかコミュニケーションを保った。結局買っては行かなかったが、自分が出来ることを精一杯してそのカップルもおれも笑顔になった。

人に優しくすることによって、自分自身が優しい気持ちになるのがわかった。

優しさを与えることによって実は優しさを貰っているのかもしれない。

まったくもって、お客様に同じ人はいない。千差万別なのである。

そう、接客というのはとても奥が深いのである。

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