誰かのために本を選ぶ
みなさん、こんにちは!
きょうは、「誰かのために本を選ぶ」ということについて、お話をしたいと思います。僕は、塩屋のとなり、須磨で、「自由港書店」という本屋さんをしています。スマスイ(須磨海浜水族園)のすぐ近くだよ。本屋さんだから、自分のためじゃなくて、お店に来てくださる「誰か」のために、本を選んで、置いています。「誰かのために本を選ぶ」っていうのは、どうやったらいいんだろう?みんなだったらどうするかな?正解はないけれど、きょうは、そのことについて、みんなとお話ができたらな、と思っています。
「自分のために本を選ぶ」のであれば、自分が読みたい本を選べばいいよね。じゃあ、「(知ってる)あの子のために本を選ぶ」にはどうしたらいいだろう?自分が読んで面白かった本をおすすめする?それもいいね!でも、どうだろう。ひょっとしたら、その子が求めている本とはちがうかもしれないね。じゃあ、その子の好きそうな本を探して渡してあげる?それもいいね!きっと喜んでくれるね。でも、どうだろう。それだと、その子にとっては、発見がないかもしれないね。自分で選ぶのとあまり変わらない本と出会うことしかできないかもしれない。よーし、そしたら、「その子がきっと必要としてるだろう、と思う本」を提案してあげる、っていうのはどうだろう?ーーーその子のことを想像してみよう。その子が必要としてるだろうから読んでほしいな、って思える本を思い浮かべてみよう。読んで、その子がどう思うか聞いてみたいな、って思う本を思い浮かべてみよう。ーーーそういう本を、その子に手渡してあげる、っていうのはどうだろう?その本は、ひょっとしたら、その子に、ぜんぜん合わないかもしれない。でも、その子は考えるはずだね。この本、なんだろう?なんでこの本をすすめてくれたんだろう?ひょっとしたら、その子にとって、新しい気付き・出会いがあるかもしれないね。新しい世界が広がるかもしれない。その子がどう感じたか、聴くことで、会話が生まれるね。わくわくするね!そう、一冊の本が、ガラリと世界を変えることもあるんだね。
それじゃあね、最後に、きょうのテーマを考えてみようね。じぶんの知らない、「誰か」のためにーーみんなのためにーー本を選ぶ、っていうのは、どうしたらいいだろうね?たとえば、本屋さんを開いて、そこに本を並べるとして、どんな本を選んで、どんなふうに並べたらいいだろう?難しいよね!だって、誰が来てくれるか、わからないんだもの!おまけに、来てくれたひとが、どんなひとか、わからないんだものね。おすすめするのも難しいよね。ようし、そしたら、誰もが知ってる話題の本、大人気の本ばかり集めたらいいかもしれないね!みんな、「いいね!」って言ってくれるかもしれないね。・・・でも、それもいいけれど、ちょっと「無難」で、・・・「ぶなん」ってわかるかなあ、「つまらない」かもしれないね。来てくれた人みんな、楽しんでくれるかもしれないけれど、新しい発見はないかもしれないね。じゃあ、どうしようね。選びようがないから、こちらで勝手に絞っちゃう、というやりかたもあるね。「特定のジャンルの本」に絞ったり、「特定のタイプの人のための本」に絞ったりして選んじゃうという方法だね。でも、それだと、<壁>をつくることになっちゃうよね。ある人にとっては関心がある本がたくさんあるけれど、ある人にとっては、自分に向けて開かれているように感じられる本がまったくなくって、まるで、自分が歓迎されていないような気分になってしまうかもしれない。そういう場所になってしまうかもしれないね。なにより、「こういう本はこういうジャンル」「こういう人はこういう本が好き」なんて、簡単には決められないものだからね。
ーーーうーん、それじゃあ、どうやって、本を選んで並べたらいいんだろう?たとえばこういうのはどうだろう?「こういう本」っていうので選ぶんじゃなくて、まず、「みんなはこういうことについてどう思う?どう感じる?どう考える?」っていう「投げかけ(問い、提案)」を考えてみることから始めてみたらどうだろう?それから、その「問い」をみんなで考えるためにきっと役立つだろう本を集めて並べていく、っていうのはどうだろう。たとえば、「自由ってなんだろう?」「どうやったら、ひとは自由に生きていけるんだろう?」っていう「問い」を立てて、その「問い」についてひとりひとりが自由に考えられるような本を並べて、棚をつくっていく、っていう流れだね。そう、僕がやっている、「自由港書店」っていう本屋さんは、そういうふうにして、本を選んで、並べているんだよ。この、自分が、「みんなに投げかけたい!」と思う気持ちの中身のことを「コンセプト」っていうんだね。「コンセプト」は、なんにしてもいいんだよ!じぶんが、日頃、「なんでだろう?」「みんなはどう思ってるんだろう?」って思っていることを、そのまま、「コンセプト」にしたらいいんだからね。大切なことは、恥ずかしがらないことだね。じぶんの気持ちに忠実に、そう、直感を大切に、「きっとこっちだ!」と思うほうへ、声を出すことだね。話していて、「なんか違うな」って感じたら、移動するんだよ。じぶんのなかの違和感、「なんか違うな」って感覚を、大切にしてね。小さな声でもいい。勇気を出して、「コンセプト」を名前にして、呼んでみよう。そしたら、きっと、みんな集まってきてくれるよ。「コンセプト」、「問い」は、みんなに開かれたものだからね。みんなに問いかけることで、みんなそれぞれに新しい発見が生まれて、会話が生まれるね。そうすると、自然に、「コンセプト」にあった本が、次から次に集まってきてくれるはずだよ。そう、みんなが、教えてくれるからなんだ!あなたが投げかけたことで、今度は、みんなが、「じゃあ、これはどう思う?」って、投げ返してくれるんだね。そうして、世界が、自然と広がっていくんだね!「コンセプト」を決めて、本を選んで、本を集めた場所を作ったら、きっと、毎日いろんなドラマが生まれて、きっと、とっても、楽しいよ!あなたが、ずっと、「なんでだろう」って思ってることはなんだろう?その気持ちを、大切にしてね!
(このお話は、2022年9月11日(日曜日)に、「塩屋heso.」というコミュニティスペースで運営されている「<神戸・垂水>こども編集部」さんの集まりにゲストとしてお招きいただいた際にお話をさせて頂いた内容をもとに構成しています。写真は、許可を得て掲載させていただいております。当日の様子は、ぜひ、「<神戸・垂水>こども編集部」の編集部員さんが書かれた素敵なレポート記事もあわせてご覧くださいませ。)