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鮭と一緒に銃を密輸……裏社会で暗躍した“武器商人”が見た闇取引現場 「北朝鮮の覚醒剤はモノがいい」

銃、クスリ、外国人犯罪──。かつて“武器商人”として裏社会を渡り歩いた男が、自身が手がけていた〝案件〟や目撃した取引現場について語った

3万で買って100万で売る

ナイフ一本でも持っていれば銃刀法違反の疑いをかけられ職務質問対象となる日本では、「銃」はあまりにも縁遠い存在。国内で合法に銃を所持するのは、狩猟を生業とする者や射撃関係者、特別な届け出を出した者、あとは警察くらいだろうが、銃といえば暴力団とは切っても切り離せないだろう。

暴対法施行前、あの『山一抗争』で関係者たちに銃を手配した男がいる。しかも敵対する両組織に用意したという恐れ知らずの商売人。

その男は“武器屋”や“道具屋”と呼ばれ、裏社会で長きにわたり暗躍した武器商人、田平京三。現在は裏の商売人からは足を洗っている。

田平は“ハジキ”を必要とするヤクザたちに何丁もの銃を売りさばいてきた。

ロシアや中国から銃を仕入れたという田平さん

「豆腐屋のように『欲しいのは何丁ですか?』って聞いたりしてね。鉄くずから再製造された中国製の銃なんかは3~4万円で買えました。抗争があると価格がつり上がるので、一丁110万円くらいで売れましたよ。22口径から45口径までいろいろ揃えてましたから、(注文に)間に合ってましたね」

当時、取引国は複数あったようだが、なかでもロシアの取引は斬新だった。

「ロシアの鮭って密輸が多かったんですよ。その鮭を入れた箱の中に銃も入れる。一緒に船で密輸されてましたね」

人気は「北朝鮮の覚醒剤」

田平が目撃してきた取引現場は、銃だけではない。違法ドラッグも様々な国から海をわたり日本へと運ばれてくる。

麻薬カルテルが政治家以上に力を持つともいわれるメキシコからは、覚醒剤やコカインが密輸された。

「メキシコに行ったとき、体育館みたいな大きな倉庫の中に、直径3メートルくらいの大きな塊がいくつも置いてありました。何トンもの覚醒剤。あんな量は初めて見ました」

近隣諸国では台湾やフィリピン、中国や北朝鮮からも違法薬物が密輸された。とりわけ「質が良かった」のは北朝鮮の覚醒剤だという。

「私が現役の頃は、北朝鮮からは一度に300kg近くの覚醒剤を月末に仕入れてました。1kgあたり120万円近くで卸してましたね。中国製は100万円くらい。北朝鮮の覚醒剤はモノが良かったので、少し高くてもよく売れました」

北朝鮮といえば、武器開発やマネーロンダリングの計画、メタンフェタミン(覚醒剤)研究所の存在を裏付けたドキュメンタリー映画『ザ・モール』(2020年公開)が記憶に新しい。その北朝鮮の覚醒剤の「モノが良かった」のはなぜなのか。

「ちゃんとした“博士”が管理された工場で作っていましたので。他の国はあくまで“密造”なので、出来栄えにムラがありました」

原価1500円のオリジナル銃

”武器屋”と呼ばれた田平は、その呼び名にふさわしく、顧客のニーズに合わせてオリジナルの改造銃を用意することもあった。

テロリスト対策のCIAの機密資料をもとに製作した銃の原価は、なんとわずか1500円だったという。

「資料は知り合いのフランス人が持っていました。私が注文を取って、そのフランス人が製造をしました。材料はホームセンターで買えるもの。売上は折半だったので、15〜20万で売りました。結構長いこと売ってましたよ」

ポケベルが流行した時代は、銃弾を2発仕込める22口径の「ポケベル型銃」がその利便性の高さと画期的アイディアで人気を博した。田平が手がけた品物の中でもヒット作だったという。

ポケベル全盛期から30年あまりの時を経て、現在は「スマホ型拳銃」も出回っているという。サイズ感もスマホそのもの、カメラレンズもデザインされたこだわりぶり。トランスフォーマーのように形を組み替えることで撃つことができるそうだ。

「銃も時代とともに変化してるし、ドラッグは昔より種類も豊富になって、日本に入ってくる量は増えたんじゃないでしょうかね」

かつて田平が見てきた闇取引は、今も世界のどこかで行われている──。

▼田平京三
武器屋・道具屋として長く裏社会で活躍。現在は足を洗い過去の自身の経験を元に裏社会の事情通として各メディアで情報を発信している。

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