女教師の恋、玉砕? 特別支援学校の男子生徒との“禁断の関係”の真相は…┃ヤスデ丸の裁判傍聴ファイル #13
〈来てくれてありがとう。会えて嬉しかった〉
〈抱き合うの気持ちよかったね。絶対肌の相性だと思う〉
〈どんな下着が好き? 今度着てくね〉
これは被告人の女性・A子(30歳・仮名)がある少年に送ったメールの内容である。
A子は特別支援学校の教師で、マッシュルームカットの黒髪ショートヘアに丸メガネ姿、化粧っ気はまったくない。身長は153cmと小柄で痩せ型で控えめそうな性格に見える。
A子の教え子であった少年・B(事件当時17歳)は軽度の知的障害を持っている。暴力的で問題行動の多いBに担任として頭を悩ませていたA子。Bの就職活動も難航しており、A子はBを他の生徒以上に気にかけるようになり、Bも次第にA子に心を開いていく。
それからわずか数週間、教師と生徒の禁断の恋の火はすぐに燃え上がり、ふたりは人目をはばからず、「就職活動の相談のため」と落ち合った商業施設内の駐車場に停めた車内で性交に至った。
被告人質問ののち、検察官は以下のように発言。
「あえてレンタカーを借りたのは、犯行が明るみに出ないようにしていたからでしょう。その時点で、二人の交際は真摯ではなかったと言えます。判断力が未熟なBに対しての犯行は悪質で、相当期間矯正施設にいれるべき。懲役3年に相当するでしょう」
さすがにA子だって、未成年、しかも教え子との禁断のセックスが法律的に問題アリなことはわかってただろうし、隠そうと努めるのも当然。ましてやA子はBのために携帯電話を新たに契約して手渡しまでしている。
しかし本当に「真剣な交際」ではなかったのだろうか?
私には、被告人席でうつむくA子が、罪を犯したことに対する後悔の念(仕事だってどうなるかわからない)より、それ以上にBに対する大きなショックを強く感じているように思えたのだ。
ところで気になるのは、「軽度知的傷害」と呼ばれる子どもたちは、実際どの程度の知能レベルなのかだ。検察官はBのことを“判断力が未熟”と表したが、果たして──。
検察官のオートマチックな話し方に対し、裁判官に、さらには我々傍聴人たちにも語りかけるような人情味のある喋り口でA子さんの心情や当時の状況を説明する弁護人。さらにこう続けた。
「Bさんは嘘をついています。たとえば、実際には二人きりで会ったのは2回のところ、『7、8回会ってる』と話しました。当初話していたことと言うことが二転三転している部分が多い。全体を通して見ていると、Bさんは自分の立場が悪くなると嘘を付く傾向があります」
弁護人の弁論を聞いていると、少なくともBにはA子を守ろうとする気持ちはないようで、つまりBはそこまでA子のことを恋愛として好きだったわけではないんじゃないか、そんな印象を持った。
以下は、検察官と弁護人とで事実の食い違った内容、また裁判官の心象に影響を与える可能性のある内容の一部である。
(検察官)
・A子が車内で「大丈夫、今日生理だから」とBに発言。つまりセックスOKのサインを出したのはA子
・コンドームがないためセックスする気を失ったBに対し、A子が自分の胸を触らせるなどして性衝動を促した
(弁護人)
・生理の血の量が多く、A子としてはとてもセックスができるような状況ではなかった
・Bは教師&生徒モノのAVを見ていた
・A子からBに「おなか大丈夫?」「叩いてごめん。蹴ったりもしたし」とメール。つまり、A子はセックスすることを断ったにも関わらず、やる気満々のB(しかもA子とは体格差がある)に無理やり挿入されそうになり、それに対してA子はできる限り抵抗したということ
ざっとこんなところ。まるで、好きな男の子と恋人関係になれたものの、まだセックスをする勇気を持てないでいる、うら若き乙女のような反応だが……。
下世話な傍聴人の私は、「マジでずっと処女で恋人もいない人だったら、別にありえなくもない話だな」と思いながら彼女を見ていた。もちろんだからって、未成年に手出したら男でも女でもアウトなんだけども。
ふと、今年公開された映画『メイ・ディセンバー 揺れる真実』を思い出した。
実際の事件をもとにした作品で、36歳の女が13歳の少年と不倫関係になり女は逮捕、好奇の目に晒され続けた二人だがそれから20年後、女が獄中出産した子供含めみんなで同じ屋根の下で普通の家族として過ごしているところから物語が展開していく。被害者の少年は立派な成人男性になり、良き父、よき夫として、心の底から「妻を愛している」と感じているのだが、外部からの刺激が加わることで次第に自分の深層心理に気づいていく──そんな感じの話。
この作品の中の女は、少年だった当時から成人した今に至るまで、相手を巧妙にマインドコントロールする確信犯的存在のようにも見えるし、そもそも何かしらの疾患を抱えているようにも見えた。
それに対して、今回の裁判のA子は、想定外にも好きになってしまった相手がたまたま少年で、しかもその少年にあっけなく自分を見放されたことに超ショックを受ける純朴な恋愛弱者的に見える。もちろん、あくまで私の偏った見方によるものだけど、素直な感想でもある。
この事件、本当のところはどうだったのかは当人たちにしかわからないような気がするが、両者にとって決して小さくはない傷を残す出来事にはなってしまったことだろう……。
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