日々是暴食★トラウマめし【第36食】バラナシでラッシーを食いガンジス河で沐浴した話
ガヤーを発った列車は夜から朝にかけ延々と走り続け、昼過ぎにバラナシ駅に到着した。寝過ごして降りるタイミングを逃したら詰むから怖い。田舎町からやってくると人の数と喧騒が半端なくてクラクラする。
駅を出るとウザさMAXのタクシーの客引き軍団につかまる。なんとなく選んだ兄ちゃんが遠回りして「知り合いのホテルに泊まれ」としつくこく誘導してくるので「いいからさっさとガンジス河へ行け!」と怒ったらガートの一番端っこに降ろされた。
上等じゃん 歩いてやんよ!
ガートとは沐浴できるように整備された階段上の広場みたいな所のことで、バラナシにはガンジス河に沿って84ヶ所のガートがあり、その長さは約2キロほどだという。結果的にずーっと端から端までガート群を見ることができたのでよかった。
ここがヒンドゥー教の聖地バラナシか。流れる水はうちの会社の前の神田川レベルに汚く、べったりした灰色。しかし躊躇なくインド人たちは沐浴している。免疫のない日本人は河に入ると病気になるというが、せっかく来たんだから河に入って罪を洗い流したいよ。
河の対岸は〝不浄の地〟と呼ばれ何もない。ただ砂地が広がっている寂しい場所だが、何となく〝あの世〟感がある。三途の川をはさんだ〝この世〟と〝あの世〟みたいだ。死体も流すんだから、もうそうとしか思えない。バラナシはまことに不可思議な所だ。
ガートの裏は迷路のような細い路地が延々と続いていて気が狂いそうになる。宿を決めていなかったが、怪しいオヤジが「ここはオススメ!」というホテルに案内してくれた。絶対ぼったくりだと思ったが案外、本当にいいホテルで3泊することにした。
以前バラナシへ来たことのある先輩が「美味しいから食べた方がいい」と教えてくれた有名店『ブルー・ラッシー』へ来てみた。日本の飲むタイプのものより、やや粘度がある。上の緑色の物体はキュウリではなくピスタチオ。プレーンを注文したがしっかりとした甘みがあって美味しい。
美味しかったので別の店でバナナラッシーも食べてみたが、これも美味しかった。酸味はそんなになく、甘みとヨーグルトの旨味が強い。どちらの店もおじちゃんが豪快に作っていたがお腹を壊すことはなかった。
翌日の早朝、早起きして朝陽が降り注ぐガートへ降りてきた。実は今日は元旦だ。
寒中水泳ともいうべき沐浴にて、罪深い私めの煩悩を聖なるガンジス河で洗い流そうではないか。そうすればきっと今年はいいことがあるはずだ。
服を脱ぎ、持ってきた海パン一丁で恐る恐る足先から水に浸かってみる。水中まで続く階段はヌルッとしていたが、水に臭いはない。
ひんやりして水温は冷たいが肩まで浸かって少し瞑想してる……と思ったがこれは寒くて長くやってられない。勢いで頭までバシャっと浸かりすぐ出た。残念ながらガンジス河でバタフライできなかったがこれで十分である。
沐浴に来ていたインド人がニコニコ笑って「お前、いいことあるよ」的なことを(たぶん)言ってくれた。サンキューインド、サンキューガンジス。
ただしこの年に別にいいこと無かったことは言っておきたい。
ホテルに戻りシャワーを浴びて屋上で温かいチャイを飲んだ。体調は何も問題ない。
昨晩、年越しの時間が花火が上がってやかましかったが朝は実に穏やかだ。そしてインド人たちは正月という感覚もなく元日からガンガン働く。メシを食いに広い通りに出たら、客引きたちが押し寄せてきた。なんて元気な国だろう。
インド編<続く>
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