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【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】東京都・JRお茶の水駅前の『お茶の水橋』

 2020年10月、鉄道マニアや廃線マニアから、お爺さんまでが「おおお!!!」と唸ってしまうような鉄道遺産が出現した。場所は、JRお茶の水駅前にかかる「お茶の水橋」(東京都千代田区・文京区/神田川)。当時、現場では橋梁補修補強工事が行われており、都電(旧・東京市電)のレールが”出土”した。

 このとき”出土”したのは、昭和6(1931)年に完成した2代目となる「お茶の水橋」(1代目となるお茶の水橋は、明治38(1905)年に完成)に敷かれた東京市電外濠線(通称:錦町線/※)のレール。アスファルトの下に90年近く眠っていたことになる。

 2代目の「お茶の水橋」が建造され、それと同時に敷設されたレールの利用が開始されたのは、昭和6(1931)年6月8日のこと。しかし、戦時中(昭和19(1944)年)に不要不急路線と見られたことで休止になり、戦後に廃止されている。その後、レールだけは「お茶の水橋」に残されたままになっていたが「自動車交通の妨げになる」ということから、敷石とともにアスファルトで舗装された。

 90年という時を経て”出土”したレールは、ちょっと変わった形をしていた。“溝付きレール”と呼ばれているもので、車輪のフランジを逃がすための溝がついている。普通のレールに曲線的なペリカンのようなくちばしのようなものがくっついている感じと言えばいいだろうか。レールに刻まれているホールマークから、英ボルコウ・ボーン製であり、昭和5 (1930)年製であることが判明している。工事を進める中で、当時の面影を伺い知ることのできる石畳も姿を現していた。

 もう、「お茶の水橋」でこれらの遺構を見ることはできないが、朗報がある。CST MUSEUM(日本大学理工学部科学技術史料センター)船橋キャンパスに行けば見ることができるのだ。屋外には、軌道敷やレール、枕木が復元展示されており、屋内に溝付きレールなども展示されている。興味のある人は、足を運んでみよう。

※外濠線は、明治37(1904)年に東京電気鉄道が開業した御茶ノ水~新常盤橋の区間

〒274-8501  千葉県船橋市習志野台7-24-1, 日本大学理工学部船橋キャンパス テクノプレース15
日本大学理工学部科学技術史料センター
TEL : 047-469-6372
E-mail : cst.museum@nihon-u.ac.jp


写真・文◎酒井透(サカイトオル)
 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。
 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイール(現:コンゴ民主共和国)やパリなどに滞在し、ザイールのポピュラー音楽やサプール(Sapeur)を精力的に取材。帰国後は、写真週刊誌「FOCUS」(新潮社)の専属カメラマンとして5年間活動。1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(警察庁広域重要指定第117号事件)の犯人である宮崎勤をスクープ写する。
 90年代からは、アフロビートの創始者でありアクティビストでもあったナイジェリアのミュージシャン フェラ・クティ(故人)やエッジの効いた人物、ラブドール、廃墟、奇祭、国内外のB級(珍)スポットなど、他の写真家が取り上げないものをテーマとして追い続けている。現在、プログラミング言語のPythonなどを学習中。今後、AI方面にシフトしていくものと考えられる。
 著書に「中国B級スポットおもしろ大全」(新潮社)「未来世紀軍艦島」(ミリオン出版)、「軍艦島に行く―日本最後の絶景」(笠倉出版社 )などがある。

https://x.com/toru_sakai

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