【3・11フクシマ アンダーグラウンドからみた復興】彫り師・HOTEI13といわき
観光名所になった〝被災地〟
駐車場はファミリーカーで埋めつくされていた。刺青を隠しているとはいえ、布袋十三(HOTEI13)の屈強な体は、連休中のショッピングモールには不釣り合いだった。
「自分は映画見る時ぐらいしか来ないっスから。でも昨日も人すごかったんですよ」
広場では大道芸人がこどもたちに囲まれていた。「イオンモールいわき小名浜」は、福島県最大、東北でも有数の巨大モールだ。
映画『フラガール』の舞台になった「スパリゾート・ハワイアンズ」以外、名所の少なかった街は見ちがえるように変貌していた。湾岸道路をはさんだ海沿いには、リニューアルされた小名浜港や水族館「アクアマリンふくしま」といった観光エリアがひろがり、開通した「小名浜マリンブリッジ」が海上にアーチを描く。布袋は「ライトアップするから、夜はもっと綺麗ですよ」と言う。
「発展してるの、ここらへんだけですけどね。イオンが出来たせいでいわき駅のまわりは寂れちゃったし」
商店街がシャッター街となり、ショッピングモールがにぎわう光景は今、どの地方でも見られる。それでも違和感がぬぐえないのは、2011年におなじ場所から見た景色となかなかオーバーラップしないせいだった。
2011年3月11日、福島県最南東部にあるいわき市は、東日本を襲った震災に見舞われた。15時39分、NHKが放映した津波中継では小名浜港が飲みこまれていく様子が映し出された。
3日後、同地に取材に入った時の記憶は今も鮮明に焼きついている。それは瓦礫が散乱するほかの湾岸地区の惨状とは異なっていた。
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