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【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】京都市下京区の西本願寺の『親鸞聖人の〝骨仏〟』
毎年、正月やお盆になると数多くの参詣者を集めている京都市下京区の西本願寺に『骨仏』が奉安されている。
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この『骨仏』は、親鸞聖人の木像で、国の重要文化財となっている御影堂(重要文化財指定名称は「大師堂」)の中にある。親鸞聖人の往生後(1262年没)に荼毘に付された聖人の灰を漆に混ぜて木像に塗り込めたとされていることから、「骨肉の御影」という名がつけられている。
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朝早くから参詣をする人たちで賑わっている御影堂。しかし、親鸞聖人の木像が『骨仏』であることはあまり知られていない。
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「聖人さまのお像にご遺灰が塗られていはるのですか。私は子どもの頃からお参りに来ていますが聞いたことがありませんね…」(京都市内に住む70代の女性)
「本当に『骨仏』なんですか…。『骨仏』で有名なのは大阪の一心寺ですよね。そのようなことどこにも書かれていませんでしたねぇ…」(高槻市内に住む50代の男性)
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実際、西本願寺で売られているパンフレットを見ても、同寺に『骨仏』が奉安されていることは書かれていない。国内外の民俗信仰に詳しい識者に聞いた。
「御影堂に祀られている親鸞聖人の木像に、聖人の遺灰が漆に混ぜて塗られているのは事実です。この木像が『ホンモノ』であることを知らしめるために、聖人の周りにいた僧が塗ったという説があります。大阪の一心寺は『お骨佛の寺』として有名ですが、あそこに祀られている骨仏は、納骨された遺骨から造られたものになります。骨仏を作るときに遺骨を使うようになったのは、現代に入ってからのことなるのですね。それ以前は、遺灰を漆や膠(ニカワ)に混ぜていました。このような方法で造られた『骨仏』は、日本全国にいくつかありますが『骨肉の御影』が日本最古の『骨仏』であることは、おそらく間違いないでしょう」
親鸞聖人の木像は、2011年4月9日から翌年1月16日まで行われた『親鸞聖人750回大遠忌法要』に合わせるような形で約50年ぶりに修復されている。その高さは85センチ、幅は105センチで、ほぼ親鸞聖人の等身大になっているという。黒衣と黒袈裟を着け、念珠を手にしている姿は、訪れる人たちに心の安らぎを与えている。
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写真・文◎酒井透(サカイトオル)
東京都生まれ。写真家・近未来探険家。
小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイール(現:コンゴ民主共和国)やパリなどに滞在し、ザイールのポピュラー音楽やサプール(Sapeur)を精力的に取材。帰国後は、写真週刊誌「FOCUS」(新潮社)の専属カメラマンとして5年間活動。1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(警察庁広域重要指定第117号事件)の犯人である宮崎勤をスクープ写する。
90年代からは、アフロビートの創始者でありアクティビストでもあったナイジェリアのミュージシャン フェラ・クティ(故人)やエッジの効いた人物、ラブドール、廃墟、奇祭、国内外のB級(珍)スポットなど、他の写真家が取り上げないものをテーマとして追い続けている。現在、プログラミング言語のPythonなどを学習中。今後、AI方面にシフトしていくものと考えられる。
著書に「中国B級スポットおもしろ大全」(新潮社)「未来世紀軍艦島」(ミリオン出版)、「軍艦島に行く―日本最後の絶景」(笠倉出版社 )などがある。
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