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【後編】慰謝料踏み倒し上等?パチンコ帰りにバイクと衝突…裁判官も呆れた男の弁明【ヤスデ丸の裁判傍聴ファイル #6】

>>前編

ため息をつく裁判官
「刑務所に行きたいなら別だけど」


 弁護人質問で「直接会って謝罪したい。自賠責で賄えないお金は働いて返す」と答える被告人。しかし、元職場は解雇され、家族や友人に当たったものの、現状新たな職は見つかってないという。裁判官からため息が漏れ、被告人に問いかける。

「あなたね、昨日今日起きた事故じゃないんだから。この裁判までの間、一体何をしてたんですか? 少しでもお金を作ろうと努力しましたか?」

 その後もややキレ気味の裁判官から責められる被告人。マズイと思ったのか、弁護人がすかさずフォローに入る。

「ちょっと待って。大阪(実家)に帰るお金もなかったよね。それに、もし仕事が決まっても刑務所に入る可能性もあるから、就活はしづらかったんじゃないですか?」

 裁判官、まさかのそっぽ向いてる。回転椅子ごとクルッと違う方向向いて目瞑ってる。なんだかヤバそう。正面に向き直し、裁判官が被告人にさらに問いかける。

裁判官「じゃあ、そういう具体的な話を親御さんにしたんですか?(怒)」

被告人「はい……」

裁判官「ほう⁉ 刑務所に行くかもしれないから就活はまだできないと。まるで免罪符のようですね。刑務所にどうしてもいきたいなら別だけど

 おぉ~……なかなかハードボイルドな裁判官だ。確かに人がひとり亡くなってるっていうのに、どうもボケーっとしたこの被告人の態度はいささか気になるところではあるが……。
 ふと、私の隣に座る母娘(母=50代、娘=20代後半か)が、裁判官の言葉に頷いている様子が目に留まる。被告人に苛立ちを覚えているのは裁判官だけではないようだ(そりゃそうか)。

 最終的に、検察側の求刑は禁固1年6ヶ月。初犯なうえ、過失運転致死罪ということで、例に漏れず執行猶予つきとなるんだろうが、となると思う存分シャバで就活ができることになってしまう……どうする、被告人!

事故といえど、人ひとりの命を奪った罪は重い(画像はイメージ)

 最後に何か言いたいことはあるかと問う裁判官。通常ここでは「反省しています」「罪を償います」など反省の言葉を述べるのだが……。

「……ありません」

 あーあ、言っちゃったよ!
 このとき、私は弁護人の顔を見逃さなかった。苦虫を噛み潰したような顔って、こういう表情のことを言うんだろうな。箸にも棒にもかからないといった態度で裁判官が吐き捨てる。

「うん、他の似た事件の被告人さんと比べてね……。なんていうかなぁ。ハッキリ言って、ガッカリですね」

 その後、被告人が意図に気づいたのか、謝罪の言葉を並べるも、裁判官は被告の顔すらも見ていない。ほ〜珍しいな~。ある意味、人間らしい裁判官だ。私は嫌いじゃない。しかしこの裁判官の態度には賛否が生まれることは避けられなさそう。

 エアコンの温度設定以上にキンキンに冷えきった法廷を後にし、先程隣にいた母娘とエレベーターに同乗。

「なんなの、あの裁判官! 他の被告と比べるなんて人としてありえない!」

 そう早口でまくし立てる母に続いて同意する娘。同意を示すように頷いていた途中までとは打って変わり、どうやら最後の裁判官らしからぬ言動に腹が立った模様。あとで裁判官の名前を確認するとか言ってたし、SNSで拡散でもするのかな? ひぃ~。

 ルールとしてまかり通っている「制度をもって人が人を裁くこと」の正当性を問うことは、我々人間の一つのテーマのように感じる。しかし純粋な正義心っていうのは、やっぱりなんだか危険なニオイがするもんだなぁ〜。と、最後は母娘に気持ちが引っ張られてしまいました。チャンチャン

【著者プロフィール】
ヤスデ丸(やすでまる)
▶『実話ナックルズ』の女性編集部員。埼玉生まれ中東ハーフ、いよいよアラサー。乗っているバイクはYZF-R3。オススメのプロテインは「ウマテイン ミルクティー味」「ウルトラ 黒ゴマきなこ風味」。