聴覚過敏の人、loop engageを装着して東京に行くの巻(耳栓レポ)
聴覚過敏ってご存知だろうか。
よく知らなくても字面で察しがつく人が多そうだな。読んで字の如く、聴覚が過敏だぜっていう特徴っていうか特性だ。
わたしは子どものころから聴覚過敏がある。接触過敏、視覚過敏もそれぞれに軽くあるが、それとは比べ物にならない感じで、聴覚過敏がある。幼稚園への登園を拒否っていた理由のひとつが「幼児の声がうるさい」だった。わたしも幼児のひとりだったんだがな。
こういうものは人それぞれ症状の差みたいなものがあると思うので、あくまでもわたしの聴覚過敏の話になるけど、あらゆる音が主役級の存在感で聞こえる。たとえば電車に乗っていると、同行者の話し声、半径1.5m範囲内くらいの人たちの話し声、走行音、車内アナウンスが全部主役のボリュームで聞こえる。するとどうなるか、逆になにも聞こえない。いや、聞こえはするのだが、音がごちゃごちゃして外国語に聞こえる。そして、それをなんとか聞き取ろうと無意識に頑張ってしまうので、体力と集中力がゴリゴリ削られる。めっちゃ疲れる。
めっっっちゃ疲れる。
考えてみてくださいよ、音量的な話だけでも毎日がライブ会場。爆音ワールド。疲れるよ普通。だから普段、どこへ行くにもワイヤレスイヤホンを耳につっこんで、音楽を聞いている。うーん、現代人ですね。
しかし、これは地元だからなんとかなるわけだ。地理を把握し、周囲になにがあるかを知っていて、行き先が明確だから耳にイヤホンつっこんでいても無事におうちに帰れるのだ。
東京に行くとなると、話が変わってくる。地方民にとって、東京は意味不明なカオス空間。とくに、主要ターミナル駅な。東京駅で神隠しにあってる人とかいるだろ絶対。
イヤホンを装着して東京に行くのは危険行為だ。そういうわけで、わたしは東京に行くときは耳にイヤホンをつっこまず、裸耳(らみみ)で過ごす。すごく疲れる。すごく疲れているのに、爆音にさらされていたせいで神経が昂ってしまい、その晩はろくに眠れなくなる。死。
そこでだ。耳栓を買った。
耳栓。10代のころに散々試してきた。ありとあらゆる耳栓を買った。そして装着した。聞こえの改善については、一周回って聞こえにくいに着目し、補聴器まで使ったことあるしな(まるで意味なかったけど)
しかし、今回の耳栓はちぃとばかりワケが違う。なにしろ4700円くらいする。
4700円の耳栓……はっきり申し上げて貴族の耳栓である。その名をloop engageという。
loopシリーズのことはかなり前から知ってた。しかし「高ぇなおい」と思って買わなかった。耳栓というものは百均でも買える。……けどものっすごくクチコミがいいのだこの耳栓。雑音や騒音は抑制され、大事な音声は聞こえるとかなんとか。
迷ったすえ、買った。さようなら4700円、こんにちは高級耳栓。高級耳栓と呼ぶのも他人行儀なので、以降、こいつのことはloopちゃんと呼ぶ。
loopちゃんはとてもオシャレな見た目をしている。アクセサリーみたい。しかしねわたしは見た目なんかには惑わされないんですわ。大事なのは機能。なにしろこちとらきみに4700円使っている。
そんなloopちゃんとともに、東京へ行った。今までのはすべて前フリね。
そしてまず思ったんだが、東京、前に来たときより静かだ。
なんで? と考えて思い出した。わたしの耳にはloopちゃんがはまっている。忘れてた。
……これはわたしがアホだから忘れたんじゃないよ。loopちゃんの付け心地がものすごくいいんだよ。
耳栓というのは耳を塞ぐワケであって、すると自分の呼吸の音とか内臓の活動音とかが無駄に響くことが多い。というか、従来品はだいたいそんな感じだったと記憶している。これが聴覚過敏者的には意外とうるさくて苦痛、ということが多々ある。
しかしloopちゃん、呼吸の音も内臓の音もほとんど気にならない。口から音声を発すると多少こもった感じに聞こえるが、今回は一人旅でレジで「袋いらないですー」という以外ではほぼ喋らなかったので、loopちゃんを装着していることを忘れてしまったのだ。
この時点で、わたしのloopちゃん愛がレベルアップ。感動しながら山手線に乗る。
乗ったのは、朝の9時過ぎくらいの、まだ通勤ラッシュが終わりきっていない電車だ。ラッシュのピークは過ぎているけど、人がいっぱい。田舎者にはおそろしい。
そんな電車に乗っても、まったくうるさくない。都会の通勤者たちはこれからはじまる労働を思ってどんよりと静かなのかもしれないが、電車の走行音も気にならない。そのわりに、車内アナウンスは聞こえる。
車内アナウンスが聞こえる!!!
都心の土地勘がないわたしのような人間にとって、車内アナウンスは命綱。これが聞こえると聞こえないでは、東京砂漠の生還率が雲泥の差。これを聞き逃さないために今まではワイヤレスイヤホンを外し、裸耳(らみみ)で電車に乗っていたわたしにとって、「騒音カット」と「車内アナウンスが聞こえる」の両立は都合が良すぎておそろしい。
そんな感じで電車を乗り継ぎ、用事を済ませるなどして中継地である池袋駅にやってきた。
池袋は、正直意味わからんほど人がいた。池袋駅そのものだけでも意味わからんのに(西口に東武百貨店、東口に西武百貨店とか、ちょっと都市開発の計画性がなさすぎると思う)、人の量も意味わからなん。あと、池袋駅が擁する電車の路線の数も常識的に考えておかしいよたぶん。駅っていうより街じゃね? やめてくれ。以前、約束の時間が迫っているのに駅から出られず右往左往したのが軽いトラウマだ。
というストレス(とトラウマによるびびり)もあって、いつも池袋ではぐったりしているわたしだが、聴覚疲労が軽減されているだけでこんなにも池袋が普通の街に見えるのかと感動した。
大波と地鳴りを足して2で割ってボリュームアップした感じの人々の足音と話し声が減少するだけで、こんなにも親しみやすいぞ池袋。大きなジュンク堂とパルコとビックカメラがあった。ジュンク堂はたぶん3回くらい行ったことあったけど、今回はじめて冷静に街を散策できたので、正確な位置をようやく把握できたと思う。次は迷わん。
ところで、わたしは方向音痴だ。自分では、致命的で絶望的な方向音痴だと思っていた。
しかし、loopちゃんを装着し、聴覚情報を制限してストレスを減らすと、まあちょっと残念寄りですかね…、程度の方向音痴であることが判明した。今までは、情報過多とストレス過多であわあわして困り果てているせいで判断力・思考力が低下していたらしい。よかった、致命的で絶望的なポンコツではなかった。
そういうわけで、loopちゃんを装着したわたしはその日いちども都内で道に迷うことなく、電車の乗り換えをミスることなく、約束の時間に遅れることもなく、一日の日程を終えてお家に帰ってきた。こういう一日を過ごすと、いつもは聴覚の刺激で神経が昂ってまるで眠れないのに、朝までぐっすり眠れた。
QOL爆上がりだぜ。4700円でこの効果なら安い。
聴覚過敏で困っている人は、loopを試してみてもいいんじゃないかな。いろいろ種類があるので、ホームページで比較してみてほしい。わたしはもう一個予備を買おうか迷ってる。
公式ホームページ貼っとくね!
おしまい!