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【参加レポ】今年の新語2024meets国語辞典ナイト

お久しぶりです、Lakkaです。
もうすぐ年末ということで、12月3日に行われた今年の新語2024meets国語辞典ナイトをレポートしていきたいと思います。

↓↓ 昨年の記事はこちら ↓↓


今年の新語2024

今年の新語とは?

辞書のトップメーカーである三省堂が皆様から2024年に「よく見た」「よく聞いた」言葉を募り、その中から辞書を編む専門家が「今年の新語2024」を選んで後世に遺します。
ベスト10に選ばれた言葉には、国語辞典としての解説(語釈)をつけて発表します。

「今年の新語2024」特設サイト

ユーキャン新語・流行語大賞との違いは「今後辞書に採録されてもおかしくない言葉」を選ぶこと。2014年に飯間浩明先生(『三省堂国語辞典』編纂者)が独自に行った「今年からの新語2014」を前身とし、2015年から毎年開催されています。

今年は10周年という節目の年。
辞書好きとして知られる俳優・鈴木絢音さんや、有隣堂しか知らない世界のMC・ブッコローからお祝いメッセージが届くというサプライズもあり、会場は大盛り上がり。鈴木さんは着物で登場しその美しさで、ブッコローはあまりの尺の長さに「何かやけに長くない…?」と会場をざわつかせました。

↓↓ 鈴木さんの辞書本 ↓↓

↓↓ 三省堂辞書編集部長・山本さんが何度も出演しています ↓↓

大賞は「言語化」

選考委員の小野先生、飯間先生、山本さん、そしてゲストとして校正者の牟田都子さんを迎え、10位から順に発表されました。

結果はこんな感じ。昨年同様、ちょっと解説したりコメントしたりします。丁寧な解説は特設サイトの選考結果と選評をお読みください。

🥇大賞「言語化」
全く予想していなかった言葉でした。昨年の大賞「地球沸騰化」もめちゃくちゃ予想外だった(選外だと思っていたら大賞だった)のですが、それとは違った斜め上から来た感じです。
日常で当たり前に使っていたため新語と認識できていなかったのですが、選評を読むと、現在の用法で使われるようになったのは2020年代になってからとのこと。
選考発表会で牟田さんが「言語化という言葉をみんなが求めていた」とおっしゃっていたのが印象的でした。

🥈2位「横転」
Twitter(現X)を中心に広まった言葉で、上位にランクインするのも納得感があります。数年前から使用例はありましたが、今年「新婚さんいらっしゃい!」の初代MC・6代目桂文枝さんの椅子コケ画像と共に、ネットミーム化、盛大な広がりを見せたという印象です。

🥉3位「インプレ」
主に「インプレゾンビ」という用法で、Twitter上で多く使われていました。リプライ欄がネットミームで溢れていた時代に戻りたいです。

4位「しごでき」
本当に今年なのか…?という疑問はやや拭えないものの、「しごおわ」という言葉もあるように、「しご○○」という形の言葉はいくつか見かけます。漢字だと「し・ごと」に分かれるところを「しご」の部分だけ取り出されているのが面白い、という話には納得しました。

5位「スキマバイト」
「スポットワーク」とも言うそうですが、個人的には統括して「タイミー」と呼んでいるのもよく見かけます。また、「スキマバイトのクオリティ」ということを嘲って「タイミー」という用法も複数ありました。今後の動向に注目したいです。

6位「メロい」
正直、ようやく入ったかという感じです。
自分のツイートをさかのぼってみたところ、ちょうど2年前に「メロい」という言葉をよく見かけるというツイートをしていました。私のタイムラインにはなぜかジャニーズファンの方のツイートが頻繁に流れてくるのですが、そこで多く見かけたように思います。

選評の ”投稿者は30代以下の女性が多いのが特徴です。また、「メロい」とされる対象は男性アイドルが多い傾向があります” というのは私の体感とも合っており、改めて興味深いと感じました。

しかし、語釈の「だらしなくなるほど」という文言には疑問を抱かざるを得ません。
そもそも私は「めろめろ」に「だらしない」イメージがあまりなかったのですが、手持ちの辞書をいくつか確認してみたところ、語釈に「だらしない」「しまりない」と入っているものがほとんどでした。ということは、本来「めろめろ」にはだらしないとかしまりないといったイメージがあったにも関わらず、そうしたマイナスイメージが時代と共に失われているという可能性があります。

例えば、デビュー曲『かわいいだけじゃだめですか?』で話題になったアイドル・CUTIE STREETの『ひたむきシンデレラ!』のサビはこうです。

Ah バズっちゃバズっちゃやぁだ!
ねえ かまってかまってもっと!
誰もがあなたを狙っちゃう
ウインクひとつでメロメロにさせちゃって
こっちの気も知らないで!

これはファン目線の、アイドルに向けての曲なのですが、ここでは「メロメロ ≒ 好き」というような意味で使われているように思います。
上の例しかり、私が女性アイドルの曲ばかり聴いているからかもしれませんが、「メロメロになる」と言うと、少女漫画の「トゥンク」「キュン」みたいなシーンが頭に浮かぶんですよね…。少なくともそこに「だらしなさ」はありません。

ダラダラと書いたわりにはっきりとした結論はないのですが、「メロい」を立項する前に「めろめろ」の意味を見つめ直す必要があるように感じました。自分でも今後もう少し慎重に調べてみようと思います。

7位「公益通報」
初めて聞く言葉でした。発端となったのは兵庫県知事の事件。

8位「PFAS」
ニュースでよく出た言葉とのこと。私はテレビを持っていないため、残念ながら解説できるほどの知識がありません。

9位「インティマシーコーディネーター」
ドラマや映画で性的描写や身体の露出が伴う撮影時に、俳優と制作側の間に立つ専門職です。
日本では今年、映画『先生の白い嘘』の問題を巡り話題になりました。

10位「顔ない」
Twitterで本当によく見ました。どこが発端でいつから使われるようになったのかいまいちわからないのですが、自分のツイートをさかのぼると自然に使っていて不思議です。もっと上位にランクインすると思っていたので、一番に発表されて驚きました。

注目されていた「界隈」は選外に

「○○界隈」という言葉は、年間を通じて本当に長く、多く見た言葉です。「界隈」は『三省堂国語辞典』にすでにこの意味の語釈が掲載されていることから入選が見送られたようですが、個人的には「界隈」とセットで多く使われた「キャンセル」にも焦点を当てるべきだったのではないかと感じています。

『三省堂国語辞典』でキャンセルを引くと、「予約や約束の取り消し(をすること)。解約。」と説明されていますが、今年「○○キャンセル界隈」という形で広まった「キャンセル」は、予約や約束などがなされていないものごとに使われていることがほとんどです。風呂、睡眠、歯磨きなど、本来生きる上でやらなければならないことができない(精神的な問題を抱えている場合もある)ということをカジュアルに表現する手段として「キャンセル」が使われています。

「界隈」も同じような側面があり、これまでの「界隈」よりも、より狭い範囲でカジュアルに使われるようになったと感じています。これらを新用法と認定するかどうかは難しい問題ですが、「界隈」「キャンセル」という2つの言葉の意味が、この1年で大きく広がったことは間違いないでしょう。

国語辞典ナイト

引き続きゲストの牟田さんを迎え、レギュラーメンバーの飯間先生、西村さん、見坊さん、稲川さんの計5名が登壇しました。

今回は、これまでの「今年の新語」を振り返ろう!というのがテーマ。こうして一覧して見ると、それぞれの言葉が時代を表していることを感じます。

なんか見たことのあるカード

飯間先生のホームページを見ながら今年からの新語2014(今でもサイトは健在)を振り返ったり、ランクインした言葉は本当に辞書に載ったのかみんなで確認したり…

中型辞典である『大辞林』、新語に強い『三省堂国語辞典』は、多くの言葉を立項していることがわかります。対する『新明解国語辞典』は全く載せていない!!新語に慎重な姿勢をとるという軸がぶれていないことから、「体幹の強い辞書」と評されており、とても良かったです。今度から新明国を人に勧める時に積極的に使っていきたいと思います。
『三省堂現代新国語辞典』があまり載せていないのは意外でした。高校生向けの国語辞典として現代文キーワードなどを掲載していることを売りにしているので、そちらを優先させた結果でしょうか。

ファンからの苦情も。私もまだしっくりきてないです!!!!

総評

大賞の「言語化」は意外でしたが、全体的にバランスの良い結果となったのではないかと思います。「キャンセル」と「界隈」のどちらかがランクインすれば全く心残りはなかったのですが…

また、国語辞典ナイトでは過去の新語を振り返ることができました。
毎年思うのですが、普通に一語につき30分くらい解説がほしいので全く時間が足りていない。なので、今回の国語辞典ナイトで過去の「まだ足りてないよ!」と思っていた言葉の解説や、実際辞書には載っているのか?という結果を見ることができて嬉しかったです。定期的に振り返り回ほしい。偉い方、よろしくお願いします。

さて、みなさん、今年の新語2024が終わったということは、今年の新語2025がもうすでに始まっているも同然!!!来年の募集期間に向けてこれから用例採集を始めましょう。私も頑張ります。


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