見出し画像

宅建業者が取り組む不動産コンサルティングの事例 ~K-コンサルティング~

 JARECO(日米不動産協力機構)では、日大教授の中川雅之先生を囲む社会人講座として連続講座が開催されています。本講座に通底するコンセプトは、「不動産再生の最前線~不動産コンサルティングは地域再生のカギになるか~」です。

 第4回講座では、『宅建業者が取り組む不動産コンサルティングとは?』と題し、株式会社K-コンサルティングの代表、大澤健司さんのお話を伺いました。

 不動産関連ビジネスにおいて、従来の売買仲介や賃貸管理だけでは差別化が難しくなってきている中、依頼者に寄り添い、公平で最適な解決策を提供する不動産コンサルティングの重要性について学びました。以下にまとめます。

1. 不動産業界の現状と課題

 地方ではアパートの空室増加や家賃の下落が顕著で、管理会社や仲介会社の収益が悪化し、廃業・倒産が増加傾向にあります。また、都心部でも競争は激化しております。財閥系は、もとより、電鉄系、外資系、税理士系、ネット系など多様な不動産業者が乱立する中、差別化が急務となっています。従来のやり方ではもはや競争に勝つことが難しく、業界全体が効率化と専門化の二大潮流にシフトしています。

2. 効率化と専門化の潮流

 不動産業界では、不動産DXによる効率化と、宅建士や上位資格取得による専門化が進行しています。その中で大澤さんが提唱するのは、個人の強みを活かした「不動産コンサルティング」へのシフトです。このシフトは、単なる物件の売買や賃貸管理ではなく、依頼者の問題解決を中心に据えたコンサルティングサービスです。

3.不動産コンサルティングの実践とその価値

 不動産コンサルティングの核となるのは、依頼者の財産の分配や活用において「公平さ」を実現することです。特に相続においては、被相続人の存命中に公平な分配が可能となるようなワンストップの支援が不可欠です。

(1)公平を意識したワンストップの相続支援

 相続において、不動産は分割が難しく、またその価値や評価が不透明であるため、相続人間でのトラブルが発生しやすい資産です。大澤さんは、被相続人の存命中に資産を適切に分配するための支援をワンストップで提供しています。具体的には、相続財産診断、遺言作成サポート、生前贈与サポート、家族信託、土地活用提案などを組み合わせて行い、依頼者が公平かつスムーズに相続準備を進められるようサポートします。

 依頼者が感じる不安や課題に対して、具体的な数値やシミュレーションを提示し、最終的な売却や分割におけるメリット・デメリットを明確に示すことで、最適な解決策を提案します。これは、不動産の査定額や売却額を「見える化」することで、依頼者が納得して意思決定を行えるようにするアプローチです。

(2)コンサルティングフィーの獲得と長期的な関係構築

 不動産コンサルティングは、継続的な収益基盤を確保できます。さらに、大澤さんのアプローチは、一度の契約に終わらず、相続手続きや土地活用のサポートを通じて、長期的な依頼者との関係を築くことも可能としています。

4.大手との差別化 ~社員のタレント化~

 不動産コンサルティングのもう一つの鍵は、社員個人のタレント化による大手との差別化です。大澤さんは、依頼者に選ばれるためには、企業のブランド力だけでなく、担当者個人の信頼性やスキルが重要であると主張されています。これにより、大手企業との競争においても、個人の信頼性を高めることで十分に差別化が可能だという考えです。

 不動産業界における「タレント化」とは、コンサルタントが個人のブランドとして確立されることを意味します。大澤さん自身もセミナー講師や書籍の出版を通じて、自らの知識や経験を広く発信し、信頼を築いています。これにより、依頼者は個人としての大澤さんに信頼を寄せ、単なる「不動産会社」ではなく、「信頼できるプロフェッショナル」として選ばれるというわけです。

5.空き家問題と不動産コンサルティングの役割

 空き家問題は全国的に広がっており、再建築不可や近隣トラブルといった課題を抱えた不動産が放置されることが多いです。この問題に対しても、不動産コンサルティングは重要な解決手段を提供します。

(1)ワンストップでの空き家管理支援

 空き家問題に対して、大澤さんのアプローチは、相続手続きから遺品整理、売却までの全プロセスをワンストップで提供することです。依頼者が手間を感じることなく、不動産を効率的に処理できるようにサポートすることで、放置されがちな空き家の問題解決を図ります。

(2)潜在顧客の深耕

 空き家を含む不動産相続に関心を持つ潜在顧客層を対象に、セミナーやその後の継続フォローを通じて関係を築いていくことが重要です。大澤さんは、このような顧客層との接触を定期的に行うことで、長期的な信頼関係を築き、結果的に案件化を進めています。

6.不動産評価と相続におけるポジショニング

 不動産の評価は、相続において非常に重要です。評価基準は、相続税評価額、固定資産税評価額、時価評価額など複数存在し、依頼者にとって最適な評価方法を選択することが必要です。不動産コンサルティングの現場では、これらの評価基準を的確に使い分け、依頼者に対して公平かつ納得のいく不動産評価を提供しています。

7.まとめ
 
 
今回の講演を通じて学んだことの一つは、不動産が単なる資産以上の存在であり、所有者や相続人の感情が深く交差する対象であるということです。不動産は時に相続における欲の対象となり、また時には負担となることもあります。その中で第三者として立ち回り、依頼者にとって最適な解決策を提供できる存在が、不動産コンサルタントです。

 大澤さんの講演を通じて、不動産コンサルティングの役割の深さを改めて理解することができました。

 特に、大澤さんの落ち着いた雰囲気からにじみ出る安心感、お人柄が強く印象に残りました。講演を聞いていると、こうした人柄が依頼者からの信頼を集める大きな要因であり、多くの方が安心して相談できる理由であることが感じられました。

 また、今後AIが業務により深く入り込む中で、コンサルタントとしてのスキルを持ち、AIを駆使しながら依頼者に寄り添い続けることの重要性も強く感じました。AIが業務の効率化を進める一方で、依頼者の個別の感情やニーズに応えるのは、人間のプロフェッショナルです。大澤さんの講演から、自己研鑽を続け、プロとしての矜持を持って解決策を提供する重要性を気づかせていただきました。

 この講演を通じて、不動産コンサルティングの可能性を広く感じるとともに、コンサルタントとしての在り方や、依頼者との信頼関係をどう築くかという視点で多くの示唆をいただきました。不動産業界における「真のプロフェッショナル」としての役割を担うために、今後さらに深い知識とスキルを磨いていく必要性を感じています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?