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「SHARE SUMMIT 2024」の「ACTIVE CAREER」聴講記録

 2024年11月5日、一般社団法人シェアリングエコノミー協会が主催する「SHARE SUMMIT 2024」に参加しました。このイベントは、シェアリングエコノミーが地域社会や経済に与える影響を探り、その可能性を議論し合う場です。

 セッション、「ACTIVE CAREER 都市でも地方で「最高の仕事」に出会うには?」というテーマを軸に、働き方や地域活性化、そして社会課題の解決を繋ぎ合わせるための議論が交わされました。

 このセッションでは、吉田雄人さん(一般社団法人 日本GR協会 代表理事/宮崎県高原町産業官民連携推進官/元横須賀市長)がモデレーターを務め、伊藤文隆さん(アクシスコンサルティング株式会社 代表取締役社長 COO)、永岡里菜さん(株式会社おてつたび 代表取締役CEO)、佐々木俊尚さん(ジャーナリスト)がスピーカーとして登壇しました。それぞれが自身の知見と経験をもとに、「最高の仕事」に出会っていく各人の活動が披露されました。以下にその聴講記録をまとめます。


1.官民連携による社会課題解決のモデル

 吉田さんは、モデレーターとして議論を進行する中で、ご自身の経験を交えた官民連携の重要性を語りました。特に、行政が抱える諸課題に民間の持つ創造性や資源を活用する「官民連携」の可能性を提起しました。

(1)社会課題の分類と解決の方向性
 
 吉田さんは、課題を「普遍性」と「解決の難易度」で整理するアプローチを示しました。これにより、官民の役割分担を明確にし、効率的な対応を提言しています。例えば、地域インフラの整備は行政主導で進めていくでしょうが、地域医療や高齢者支援などのサービス分野では、民間のリソースやイノベーションが求められています。

(2)ガバメントリレーションズ(GR)の活用

 官民連携を円滑化するためには、共通のプラットフォームが必要となります。吉田さんが提案しているのは、行政と企業が情報を共有し、課題解決に向けた議論を進めるプラットフォームの整備ですが、この取り組みは、地方自治体の課題解決だけでなく、都市部との連携を深めるための基盤となりそうです。


2.高度人材のシェアで地方を再生する可能性

 伊藤さんは、人材不足に悩む地方企業が、都市部で働くの高度人材を取り入れることで成長を実現するモデルを提案しました。

(1) 人材の流動性が生む成長の可能性

 地方企業の中には、隠れたポテンシャルを持つ企業が多く存在します。しかし、専門知識やスキルを持つ人材が不足しがちであり、成長課題となっています。伊藤さんは、プロフェッショナル人材を短期的に活用する仕組みが、この問題を解決する鍵になると指摘しました。

(2)地方の酒造メーカーの事例

 デジタルマーケティングの専門家を外部から導入したことで、海外市場への展開を実現した事例が紹介されました。このように、外部人材の活用が地方企業の可能性を広げることが分かります。

(3)柔軟な企業文化の必要性

 企業が外部人材を受け入れるには、既存の組織文化を柔軟に変えていくことが求められます。その端緒として、短期プロジェクトやリモートワークを活用する仕組みを整備することは、成長への原動力となります。

3.関係人口を生み出す地域活性化モデル
 
 永岡さんが代表を務める「おてつたび」は、地方と都市部の人材を繋ぎ、地域課題を解決する新しいプラットフォームです。特定の地域に定住することなくとも短期間でも関わる人々がつながり合う切っ掛けをつくっています。

(1)未だ見ぬ魅力との出会い
 
 「おてつたび」は、地方の農業や漁業などの現場で短期労働も体験できます。地域の魅力を再発見する切っ掛けが提供されています。この体験を通じて、参加者は地域の魅力とともに固有の課題にも直接触れ、ご縁があれば、それを解決してみようという自己の再発見もあるかもしれません。

(2)多様な利用者層

 若年層からプレシニア層まで、多様な世代が参加している点が特徴的とこのことです。転職期間中の30代や、子育てを終えた女性が「おてつだび」を利用し、新しい地域とのかかわり、働き方の可能性を見出しているようです。

4.テクノロジーが拓くこれからの働き方

 佐々木さんは、テクノロジーが距離という物理的制約を取り払い、都市部と地域とを繋ぐ働き方を実現する可能性を自らの体験も踏まえながら、これからの社会について話されました。

(1)距離を超える他拠点型の働き方

 リモートワークやオンライン会議が普及している今、活用している方々にとっては、地理的な障壁が取り払われました。地方で働きながら都市の企業に関わるといった多拠点型の働き方も定着しています。佐々木さんは東京、軽井沢、福井の三拠点生活をされているとのことで、その典型ともいえます。

(2)これからの働き方
 
 テクノロジーの活用により、地方でも都市に居ずとも仕事が進められるようになりました。これにより、「場所」に縛られず、個人が自己を発揮できる環境がさらに整備されていくでしょう。

5.感想:繋がりと共有が育む「最高の仕事」

 「最高の仕事とは?」というセッション表題の問いかけには、自己実現に留まらず、社会や環境との繋がりを深めるプロセスそのものということを私になりの感想とします。心理学者アブラハム・マズローの「自己実現の欲求」を超える段階、自己超越に通じるものが思い浮かびました。

 自己超越は、自分自身を満たすことよりも、他の人や社会全体のために貢献したり、大きな目的のために生きたりすることを重視する段階です。「自分らしく生きる」を超えて、「自分を超えた大きな価値や目標のために生きる」ことが中心テーマとなります。この段階では、自分のためだけでなく、周りの人や社会に役立つことが大切になります。共感や人を助ける喜びが、行動のエネルギーになります。吉田さんが行う官民連携のフレームワークや永岡さんの関係人口創出の取り組みは、この自己超越に向かう一つの例といえます。

 また、伊藤さんが指摘した人材流動性を活かす地域企業や地域経済の活性化の事例や、佐々木さんが紹介した働き方は、個人の能力を引き出すだけでなく、地域社会全体の価値向上にもつながるものを秘めています。

 ということで、「最高の仕事」とは、その瞬間の最高地点における達成感だけでなく、社会や関係性の中で価値を生み続けるプロセスと書きました。


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