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書籍紹介 ジム・ロジャーズ 著、花輪陽子/アレックス・南レッドヘッド 監修・翻訳『捨てられる日本 世界3大投資家が見通す戦慄の未来』

 世界三大投資家の一人といわれるジム・ロジャーズ氏が執筆し、花輪陽子さんとアレックス・南レッドヘッドさんが監修・翻訳をした『捨てられる日本 世界3大投資家が見通す戦慄の未来』SB新書(2023)、はタイトルの通り、日本が直面する経済的、社会的な課題を詳説した上で読者に向けて日本の未来についての洞察と警告を発しつつも、打開するための戦略を提示しています。以下に内容をまとめます。

1.世界から捨てられる日本
 筆者は、日本円が信頼を失い、世界市場から見放される可能性を示唆しています。日本のエネルギー自給率や食料自給率の低さがインフレと円安を引き起こし、経済に大きな影響を与えていることに警鐘を鳴らしています。エネルギー自給率は約12%、天然ガスは98%が輸入に頼っています。世界的な天然ガス価格の急騰や円安がエネルギー価格を押し上げ、インフレと円安が日本経済を圧迫していると指摘しています。また、膨大な負債を抱える日本は、経済成長が難しくなっていると指摘しています。

2.「二流国」に転落した日本
 筆者は、日本が失われた30年を経て国際競争力を失った理由を分析しています。イギリスやシンガポールの事例を挙げています。イギリスが北海油田の開発による経済の復活やシンガポールの事例を挙げています。
さらに、情報化社会への適応が遅れたことで韓国や中国の台頭を許したとも指摘します。

1995年以降、急速に進んだインターネットの商業化により、世界中の人々があらゆる情報を手軽かつ安価に入手できるようになり、社会・経済に大いなる革新がもたらされることになった。「IT革命」に乗り遅れ、さらには韓国や中国の台頭を許し、ここ数十年にわたり衰退の道を進んでいる。

出所:本書(P71)

3.日本政府はもう頼りにできない
 日本政府の無策と過去の成功体験に縛られた政策を批判し、クリプトエコノミーへの移行や「新しい資本主義」の限界について言及しています。フィアットエコノミーからクリプトエコノミーへの移行については、「昨今、フィアットエコノミー(従来のような法定通貨によって形成される経済圏)からクリプトエコノミー(仮想通貨などの暗号資産によって形成される経済圏)への人口移動が加速している。 クリプトは印刷費がかからず、誰が何のためにお金を使っているかを把握することができる点が、これまでの法定通貨にはないメリットといえる。」(P108-109)と言及しています。
 また、アベノミクスの失敗や岸田政権の「新しい資本主義」の限界についても「アベノミクスから数年経過した今の日本の状況は、残念ながら悪化の一途をたどっていると言わざるを得ない。」(P111)と言及しています。

4.国を頼れない時代の人生戦略
 個人が国家に依存せず、自らの力で生き抜くための戦略を提案しています。特に、海外への移住や転職や教育の重要性についての考えを提供しています。
 国際金融都市の可能性については「近年、大変な状況に見舞われている香港に代わって、アジアのどこかに次の金融都市が生まれるはずだ。日本も『国際金融都市・東京』構想を掲げているが、はたしてどうなるだろうか。」(P131-132)と疑問を投げかけています。
 有事に備える資産防衛や危機の時代の投資戦略についても詳細に述べています。資産防衛、資産の置き所として、スイスやルクセンブルク、シンガポールを紹介しています。

5.日本が「捨てられない国」になるロードマップ
 筆者は、日本が再び「捨てられない国」になるための方法を提示しています。円安を起爆剤とした日本株の上昇予測や、観光業、農業、教育といった分野での新たなビジネスチャンスを強調し、これらの産業が日本再興の鍵となることを示しています。観光業では、日本が外国人観光客にとって魅力的な場所となるための施策を提案しています。また、農業については、若者が農業に参入することや移民の受け入れについては、「今は、国内に農地はあってもそれを耕す人が乏しい。日本人の担い手を増やすことが難しいなら、海外から人を雇えばいい。」(P172)と提案し、規制緩和の重要性を強調しています。
 教育については、外国人留学生の受け入れを増やすことを「まさに、留学生の受け入れは優秀な学生を集める絶好の機会といえる。実際、すでに外国人留学生を積極的に受け入れる大学も増えてきており、学生寮なども盛んにつくられている。」(P175)として推奨しています。国際的な競争力を高めるための施策の本書で提案しています。

6.最後に
 以上、日本が直面する現実から目を背けずに、自らの判断で適切な行動を取っていくにあたり、参考となる一冊です。


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