オンラインコミュニティの今後
オンラインコミュニティは生活や事業に欠かせない基盤となり、個人や企業がつながりを深め、社会的な連帯感を保つための新しい方法として浸透しています。10月17日にVenture Café Tokyoで開催された「“変革するオンラインコミュニティ”ポストコロナ時代のプラットフォームの展望とは」で拝聴した対談では、オンラインコミュニティがどのように進化しているのか、また、オンラインとオフラインの融合が未来に向けた課題として浮かび上がっているかについて、現場からの声を寄せた議論が交わされました。
特に、オンライン基盤のコミュニティが成長する中で、従来のオフラインでのつながりが如何に新しい価値を生み出しているかという点がポイントのように思います。以下にまとめます。
1.コロナ禍がもたらしたオンラインの普及とオフラインの価値再認識
(1)オンラインの急速な普及とそのインパクト
新型コロナウイルス感染拡大による対面への制限は、オンラインコミュニティの発展を加速させました。これにより、場所や時間の制約がなくなり、異なる場所から様々な背景を持つ人々がつながることでもできました。また、オンラインの普及により、企業の社員間の交流やスキルシェア、コミュニティ活動が進化し、これまで以上に多様な人々が集い、一体感を感じられる場が創出されています。
(2) オフラインの持つ「空間価値」と直接体験の重要性
オンラインが普及したことで、対面ならではの「空間価値」も再評価されています。たとえば、今回のトークセッションのモデレーターを務められた3×3Lab Futureのネットワークコーディネーターの田邊智哉子さんは、対面コミュニケーションが持つ意義にも注目されています。
確かに、五感を通じた体験や、場を共有することで得られる心理的安全性は、オンラインでは完全に再現できないものです。田邊さんからは、特に社会課題の解決に向けたプロジェクトや協働においては、対面での信頼醸成は欠かせないところであり、オンラインとオフラインを相互補完的に活用するアプローチが重要となってくる点の解説をいただきました。オンラインの利便性とオフラインのリアルな体験が相乗効果を生む形というのはポイントになりそうです。
2.バーチャルオフィスの活用と次世代コミュニティの形成
リモートワークの定着とともに、バーチャル空間が新たなコミュニティとして注目を集めています。oViceの宮代隼弥さんが紹介するバーチャルオフィスは、オンライン上で「場所」としての役割を持ち、従来のオフィス環境に近い感覚で人々が交流できる場を提供しています。oViceではユーザーがバーチャル空間内で自由に移動し、リアルタイムでコミュニケーションを取ることができ、まるで現実のオフィスで働いているかのような体験を可能にしています。こうした仮想空間は、時間や地理的な制約を超えて、チームやコミュニティが新たな形での一体感を形成するための手段となっており、リモートワークの拡大と共に、コミュニティの拠点としての役割も期待されています。
また、オフィスワークだけでなく同窓会やコミュティの活動拠点なでも利用されているそうです。
3.顧客エンゲージメントと体験共有の工夫
(1) オンラインとオフラインの融合によるつながりの構築
麻生未帆さんのコミューン株式会社は、企業と顧客の一体感を形成するためオンラインプラットフォームを活用しています。コミューンは、特にBtoB分野での顧客エンゲージメントに注力しており、オンラインイベントやオフラインイベントの融合を通じて顧客に特別な体験を提供しています。このような取り組みは、ブランドや企業と顧客が単なる交流を超えて共感や信頼を深めるための強力な手段となり、顧客が積極的に参加し、発言や共有が行われる場を生み出しています。
(2) 体験の共有が生み出す一体感
麻生さんからは、オンラインとオフラインの同時開催のイベントで参加者に同じ日本酒やおつまみを送付するなどの関与先企業のアイデアが紹介されました。こうした工夫により、物理的に離れていても共通の体験を通じて一体感を得ることにつながり、オンラインならではの「特別な場」やオン・オフでの一体感が提供されます。こうした方法は、共通の体験を持つことで、参加者が物理的な距離の制約を抑え、リアルな繋がりを形成しやすくもなり、今後のオンラインイベントに示唆を与えてくれています。
4. オンラインコミュニケーションの進化と継続性の重要性
(1)事前準備と一体感を生むオンラインイベント設計
Slackでサクセスマネジメントを担当する森本紗代さんは、オンラインイベントやコミュニティ運営において、事前準備と告知がいかに重要であるかを発言されました。そこには、イベント前に参加者が一体感を持てるような準備を行うことでの「初めて会った」感じをなくし、参加者同士がすでにつながっているような雰囲気を作ることの意図が込められています。ひ実際の成功事例を加えることで、準備の工夫がどう効果を生んだかが具体的に伝わるでしょう。参加者が心理的な負担感なく交流できるようになれば、イベントへの没入感も高まり、結果として、オンラインコミュニティの持つ一体感が強化されます。
(2)非同期のコミュニケーションによる継続性の確保
Slackの非同期(その場で同時でのやり取りとではない)でのコミュニケーションは、オンラインならではの利点として、場所や時間を超えたつながりを生み出します。たとえ短時間の接続であっても、頻繁に続くやり取りであれば、参加者の「帰属意識」が育ち、オンラインコミュニティにおける継続的な関与に大きな役割を果たします。森本さんのお話からは、こうした非同期のやり取りの継続からも参加者同士の信頼が築かれ、コミュニティの基盤が強化されていくような所を感じました。
5. 地域コミュニティにおける新たな可能性
(1)地域ユーザー間の横のつながりと地域価値の再認識
対談の中で、地域におけるオンラインコミュニティの発展が新たな価値を生むことについても議論が行われました。これまで東京や都市部に偏っていたコミュニティ活動が、オンラインを通じて地域にも広がり、地域ユーザーが互いの存在を認識し、横のつながりを強化するケースが増えていることが例示されました。こうしたオンラインでの地域連携は、それぞれの地域に根ざした活動がデジタル空間で可視化され、都市と地域、地域と地域とが新しい形で結ばれる機会を提供していると感じました。
(2)地域特性に応じたハイブリッド型コミュニティ運営の可能性
地域ユーザー、地方ユーザーが参加しやすい形でのハイブリッド型運営も今後の課題として挙げられました。オンラインとオフラインの融合は、地域特性に応じて柔軟に運用することが求められており、オンラインでつながった地方のユーザー同士が対面イベントでも一体感を得られる工夫がますます必要になりそうです。各地の事情に応じたハイブリッド型コミュニティ運営は、地方に住む人々が新たな交流やつながりをオンラインで形成する手段として、今後の展開を注目します。
6.オンラインとオフラインの利点を最大限に活かすコミュニティ運営
(1)オンラインとオフラインの特性を活かした一体感の形成
ポストコロナ時代において、オンラインとオフラインのどちらか一方ではなく、双方の利点を最大限に引き出すコミュニティ運営が求められていることを感じました。オンラインでの柔軟なつながりと、オフラインでのリアルに得られる信頼関係の構築とが、参加者の一体感を育むポイントとなります。今後、この二つを融合させ、参加者が自然に深く関与できるコミュニティを設計することが企画側の課題となりそうです。
(2)未来のコミュニティ運営における展望と課題
今回のトークセッションで得られた気づきの一つは、オンラインが持つ柔
性や非同期性の価値を維持しつつ、オフラインの体験を「特別な価値」として組み込むことの重要性です。コミュニティの参加者が信頼や共感といったものを醸成しながらつながりを深めていくような形づくりのヒントをいただきました。
7. 最後に
以上、今回のトークセッションを通じ、オンラインとオフラインの融合がこれからのコミュニティ運営にとってポイントであるという認識はより一層深まりました。それぞれの登壇者のアプローチを踏まえて私になりに、今後のコミュニティ像も考えてみます。
その際、オンライン上のつながりはますますと広がっていく中、それらの柔軟さや気軽さとともに、深い関係を育んでいける機能を、どのように組み込み機能化していくかというう所にポイントを置いてみます。