「IT業界マップ2022」【超詳細版】を、IT業界の中の人間が作ってみた![前半パート:デザイン編]
昨今のIT業界ではいわゆるカオスマップ(会社や製品のロゴをうまくグルーピングしたすごくわかりやすいデザイン)がかなり流行しています。
デザインもオシャレですし、わかりやすいので、流行るのも頷けますね。
しかし・・・カオスマップなんてまだまだ甘い!
カオスマップは全体の有名企業やサービスの全体像をザックリ把握することはできますが、良くも悪くもそれだけです。
「各IT企業同士の取引関係や違いを深く知りたい」
「企業の特徴や会社の規模はどう違うんだろう」
などなど・・・
色々と興味もわいてきましたので、それなら、いっそのこと自分で「IT業界マップ」を作ってしまおうと思いました!
(あと、IT業界の中に実際勤めている身として「いやカオスマップ、テキトーすぎやろ(笑)」とか)
1|IT業界相関マップ2022
それでは早速、結論から。色々思考錯誤し完成した「IT業界相関マップ」がこちらです!!(バン!!)
いやあ~完成するまで、むちゃくちゃ時間掛かりましたが、なかなかよいものができたのではないでしょうか!!(作ってる途中でカオスマップにしておけばと後悔したのは秘密)
細かなことは言わず、このマップを見て頂ければ全部わかるようになっているはずなので、要はご覧頂ければと思いますが、もしかしたら、気になる方もいるかもしれませんので、以下に、
✓作成やデザインで工夫した点
✓逆に、むちゃくちゃ苦労した点
✓マップ内に記載し切れなかった各IT企業の解説やポイント
を少々お話ししております。
IT業界に興味があられる方や、もしかすると就職活動等の参考にもなるかもしれませんので、もしよろしければ、以降もお読み頂けると嬉しいです。
2|全体資料デザインの検討
まず、資料作成の手前の準備のお話、全体マップデザインの検討にあたり、はじめに取り掛かったことは2つです。
他社のカオスマップや業界地図を調べる
紙に手書きでザックリとドラフトを書く
-1.他社のカオスマップや業界地図を参考にする
やはり先人達に学びましょう。冒頭カオスマップについて少し批評しましたが、デザイン的にはシンプルかつ素晴らしいのは間違いないです。どうグルーピングし、どのような企業を選定しているかを参考にいたしました。
また、書籍も非常に参考になります。日本経済新聞社と東洋経済新報社から発行されている業界地図があり、毎年発刊されております。デザインの参考にしたのはもちろんですが、せっかく作成するのなら
「四季報に負けない、IT業界の人じゃないと作れないレベルでつくってやろう」
と、マップの完成レベルの目安・基準にもさせて頂きました。
-2.紙に手書きでザックリとドラフトを書く
2つ目に、やはり紙でドラフトを記載するのは大切ですね。過去のnoteでも解説していますが、いきなりパワポをいじるのではなく、紙でざっくりとドラフトを記載する方が、手戻りや修正が少なくなり効率的です。
かなりお恥ずかしいのですが、自分自身でもこんな風にザックリデザインを検討しました。
3|リサーチの難しさ・・・
たたき台ができたところで、いよいよ作成していきます。はじめは、パワポで編集していたのですが、企業の売上や特長は一気にリサーチしてまとめておいた方がよいと気づき、一旦リサーチをすることにしました。
ところが・・・
正確で100%間違いない売上や利益の情報がGoogle検索しても中々出てこないんですね。
一応、上場企業はIRもありますが、会計年度も違いますし、IT事業のセグメントの分け方も各企業もちろんバラバラです。外資系企業にいたっては為替レートも海外連結売上しか出てないとかもありました。
はい…
これ、どうやって同じIT企業として、並列で比較するの???
本当に、難しい作業というか、どうしても主観が入るので悩みに悩みました。。。結局は「細かな枝葉の情報は省く、でもIT業界をとらえらる数字はちゃんと見せる」というちょうどよい塩梅を狙ったつもりです。
(私自身業界の中にはいるので、このまとめは、中らずと雖も遠からずとは思います)
4|SIER・ITコンサル業界
では、一つ一つ業界を解説していきます!まずは左上部、SIERとITコンサルです!
SIERの企業選定自体にはさほど苦労しませんでした。業界ランキングや就職企業ランキングのようにWeb上でもたくさん情報が出てきます。
ただ、各企業の特長を一言で書いていったのですが、これが大変です。自分の肌で感じた経験を記載しては、定量情報でもなければ、客観性もないですので、きちんとその根拠となる数字を調査致しました。
例えば、野村総合研究所(NRI)がグループの野村証券との関係が強いのは社名を見ればすぐわかりますが、今回、IR資料をきちんと確認し、具体的に金融業界向けの売上比率が何位%かということまで確認いたしました。
(※これがカオスマップには絶対にないポイントで、カオスマップが雰囲気はつかめても、"気づき"や"発見"までには、ならない理由です)
このレベルは、今回、全企業もちろん調査していますし、いざ、調べてみると色々な発見がありますので、以下に面白かった企業をピックアップします!
-日鉄ソリューションズはインフラが得意?
日鉄ソリューションズは、日本製鉄グループなので製造業・鉄鋼業に強いのはなんとなくイメージできると思います。ただ、私個人の経験として、昔から「ITインフラ構築に強い」と言われていることを薄っすらと覚えていました。
その記憶を頼りにIR資料を見てみると、ちゃんとITインフラの売上内訳が記載されていました!(驚)
おそらく日鉄ソリューションズ社自身も自社の強みとして認識しているのではないでしょうか。
今回の業界地図を記載するにあたり、この内訳金額を計算いたしました。
業務SOL374億円+サービスSOL352億円/合計2703億円=26.8%
ですね。これが高いか低いかと言われてると他社のITインフラ売上高が公開されていないので、なんとも言えないのですが、会社がIR資料に記載するということは、ちゃんと理由があるのです。
-大塚商会はSIERか?
大塚商会は、決算資料の記載の上では、システムインテグレーション事業が5140億円(全8280億円の内)と、まさにSIERですね。それに従い、SIERに私も分類しました。
ですが、典型的なSIERとはだいぶ実態が異なると思います。
まず、たのめーるという(似たサービスにAskul)法人向けの通販プラットホーム事業だけで1800億円(事業分類としてはサービス&サポート)もあります。つまり、全体8000億円のうちなんと1800億円がBtoB通販事業と言うことです。
また、複合機、サーバ、パソコンの販売台数が公開されていましたので、売上を推計してみました。
かなり適当な推計ですが、複合機=20万円、サーバ=20万円、パソコン=10万円と考えて計算し、低く見積もっても1500億円以上の売上があると思います。
SIERと一口に言っても、売上構成や中身は各企業によって全然違いますね。
-ITコンサル≠戦略コンサル
SIER業界と関連する業界として、隣にITコンサル業界を配置しました。
本来コンサルティング業界は戦略系(マッキンゼー、ボスコンetc.)、シンクタンク系(三菱UFJ リサーチ&コンサルティング、日本総研etc)、会計系(PwCetc.)、人事系(KMGコンサルティング、リンクアンドモチベーションetc.)などに分かれますが、IT業界と絡みが多くあるのは、やはりITコンサル業界かと思います。
昔は、ITコンサルは上流工程(絶対に開発はしない)、SIERが設計以降のシステム開発とうまく棲み分けしていましたが、今は多くのITコンサル会社がシステム・エンジニアを抱えています。アクセンチュアなんかは、本当にSIERっぽくなってきたと感じます。
そもそも、ITコンサルの定義そのものがけっこう曖昧で、今回のマップでも✓NRI⇒SIERではなく、シンクタンクでは?
✓日本IBM⇒ITコンサルではなく、SIERでは?
✓フューチャーアーキテクト⇒コンサルではなくSIERでは?
みたいなツッコミは多々あると思うのですが、あくまで、作成者本人のイメージとデザイン上の分類なので、ご容赦ください・・・
5|次回以降へ続く
解説が非常に長くなりそうですので、他の業界解説は、次回の記事に回したいと思います。
事務機業界やディストリビューターのように、地味だけど取引数は多い業界。その反対に、技術や露出度も上がっているSaas業界など解説したいポイントが盛り沢山です。
もし続きが気になるという方がいらっしゃいましたら、いいねを頂けると嬉しいです。(まだ一文字も後半解説記事は書いてませんので・・・)
以上です、ありがとうございました!
※本日のスライドのPowerPointファイルは、ポケプレから無料でダウンロード可能です。
※こちらが続きです。業界解説中心・・・(9/9追記)