松平頼曉 アリアと変奏 リハーサル風景から2
12月1日開催の「松平頼曉 アリアと変奏」。本日は、メゾソプラノの秋本悠希さんと榑谷静香さんとで、≪ベッドサイド・ムーンライト≫のリハーサルが行われた。
秋本さんは、ベルギー在住の薬師寺典子さんよりご紹介頂いた。聴くのは現代の器楽作品が中心、伝統的オペラからは少々縁遠い私は、今まで秋本さんの歌声を聴いたことがなかったはずだ、と思い込んでいたところ、そうではなかったことが判明した。
昨年の11月23日。エルンスト・クシェネクがアメリカ亡命後の1945年に書いた、極小編成のオペラ《信じること その値段は》(4人の歌手+ピアノ)が日本初演された。私はこれに出かけ、さらには音楽現代3月号(2月15日発売)に批評まで書いていたのだが、秋本さんがこれに出演されていた方だったことに、ついこの間まで気づかないでいたのだった(男声二人は良く知った方々だったので、その印象にマスクされていたのかも知れない)。
クシェネクのオペラは、12音技法による無調の音世界に、作曲者自身の台本による少々コメディタッチの筋書きを載せたもので、演奏時間は短くとも(正味30分強)、無調のオペラを暗譜して上演することが難しくないわけがない。このオペラを見事に歌われた秋本さんが、本公演の演目の中でも最も旋法的で、伝統的な意味でも美しい一曲を歌われる。これも聴き逃せないものとなると思われるので、12月1日は是非杉並公会堂までお出かけ頂きたい。