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Final Stage-3〜[JISAIONE セッション・コラボ ]〜"Distant Rumble"

「音楽・詩・小説・ナレーション等のセッション・コラボ」的な"JISAIONE Session"

Stage 1 ナレーション+サウンド
Stage 2 デモ曲1に歌詞を付けていただく
Stage 3 デモ曲2を仕上げて、他の素材とミニ・シアター的に組み合わせる

っていうような3本立てで、ようやくStage 3のファイナルに辿り着きました。

スタートはJISAIONEのデモだったのですが、そこからリレー形式でPJさんの小説〜cofumiさんの詩とバトンを渡して、「最終的にミニシアター/ラジオドラマ的な動画付台本」みたいな形で一つにまとめました。

構成はー

JISAIONE 曲
|
PJさん 小説〜PART 1
|
PJさん&JISAIONE ナレーション&サウンド
|
PJさん 小説〜PART 2
|
cofumiさん&JISAIONE
PART 1 ナレーション&サウンド
PART 2 曲

になってます。

「核」となるのは、PJさんの小説。

なので、ここでのオープニング曲は最終的に1コーラスのみのショート・バージョンにしました。フル・バージョンは別の機会に披露したいと考えています。

オープニング曲のボーカルはJISAIONE、エピローグ曲はVoiSona知声、ナレーションはVOICEVOX波音リツとなってます。

それでは、どうぞ!


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Distant Rumble 〜彼方のざわめき

喧騒の中の群れに そっと紛れて
立ち止まった街角で 冷たい風が吹き抜ける
誰かが不意に語りかける 予言の書の言葉を 
ありふれた日常の隙間に 忍び込んでくる

街を赤く染める夕日が 燃え尽きて
崩れた灰色の壁のかけらが足元にちらばる
誰かが不意に呼びかける 偽りの祝杯携えて
フィルター越しのビジョンが 映し出す欲望 

It’s Distant Rumble いつか  溢れ出す
かすかな気配 手招きして     
It’s Distant Rumble やがて 押し寄せる 
胸騒ぎ呼び起こす 彼方のざわめき



Distant Rumble〜始まりの時〜 / PJ(約2500文字)

 2245年、火星の地平線に見える夕日が俺を青く照らしていた。

 俺たちは、火星第6世代と呼ばれていた。
 火星がテラフォーミングされてから150年たったのちに俺たちは生まれた。生まれも育ちも生粋の火星人は『マルス』と呼ばれていた。
 この火星を日本国が開拓し、その本領土として住民を移動させたのと同様に、この200年の間で人類は様々な惑星に向けて移民を果たしていた。その発端は2045年に空間を超える技術『時空短縮法』が生み出されたことだ。同時に近い将来隕石が地球に飛来するという事実を各国は共有していた。
沈没する船から人々が逃げ出すように、各国は率先して惑星の移民に向けて動き出した。小規模な国々は連合や属国などを行い、逃げ遅れまいと必死になった。
 その様子は大航海時代さながら、我先にと熱を帯びていたが、協定により戦争や紛争を起こすことなく移民は進んだ。先発国は後発国に技術提供をし、世界が初めて一つになる事例となった(この経緯が後の惑星連合を生み出したとされている)。それぞれの国は、それぞれの惑星をテラフォーミングし、国民を移動させた。
 そんな中、ある宗教団体は地球に残ることを表明し、その団体に所属する人々は実際に地球に残る意思表示をした。個人の人権を国は犯すことができず、最終的には移民は自由意志とされた。各国が移民を果たし、国の主体をそれぞれの惑星に移動した後、宗教団体は地球で新しい統一政府を作った。その名は『赤い涙』というものだった。

 火星は日本国が持つ固有の領土だ。その姿は、200年前の地球にいたころと変わっていないようだった。あえて言うなら、人間が住む地域は都市部、それ以外は食料製造地、工場地と分けられていた。
 何度かライブラリで、2000年代の映像を見たが、渋谷の街は現在のシブヤと同じ作りになっていた。大きく違ったのは乗り物ぐらいだった。5重構造の巨大シェルターは四季の移り変わりや天気を再現していた。きっと200年前の渋谷も今とほとんど同じなのだろう。かつて東京タワーというものがあった場所には、国営の展望台ができ、そこの最上階に上ると『外』を見ることができた。シェルターの外、つまり宇宙空間だ。
火星から見る夕日は青く、それは人を超越した存在のように美しく光を放っていた。人類は危機から抜け出し、さらなる発展と繁栄の途中にあるように思えた。その栄光が幻だとは、その時は誰も気が付いていなかったはずだ。偽りの祝杯に俺たちは酔いしれていた。

 その表明が出されたのは、俺が16歳になった日だった。
 惑星連合が共同で発表した、マザーコンピューターによる謎の警告。事態は進展せず、原因究明に向け全市民の協力を得たいということだった。

 ヴィジョンではアナウンスボイスがこう伝えた。
「各国のマザーコンピューターが、同じ内容の『レベルS警告』を出しました。現在各国が協力して対応に当たっております。もし、この文章の謎が解ける方がいましたら、至急、連合窓口までご報告ください」
 そう前置きがあってから文章が映し出された。


Distant Rumble 〜鼓動〜

遠い雷鳴が聞こえる
うごめく新しい力
産まれだそうとする意志
まだ柔らかく、それでも熱を帯びている

君には聞こえないのだろうか?
あの鼓動、流れ出す音
それは始まりの合図

彼方からのざわめき
巻き込まれる抗えない運命
君はまだ気が付かない
その時はもうそこまで迫っているのに

 レベルS警告となると、星の存続が危ぶまれるレベルだ。この宇宙時代に各国の連携を持っても解明できない事とはいったい何なのだろう。マザーコンピューターは何故そのような謎めいた文章を用意したのだろうか?
 俺のような一市民にはわからない事ばかりだった。それでも何故か、その文章が俺に語り掛けられているもののように感じた。
「地球…」そう呟いた俺の頭の中に映像が浮かんだ。崩れた灰色の壁のかけらが足元にちらばる、朽ち果てた渋谷。そこに立つ自分自身。街を染める真っ赤な夕日…。
 地球?

 地球には、108年前(2137年)に人類が予想した通り、隕石が墜落した。それ以降、地球統一政府とは交信できなくなったとのことであった。世界にとって地球は乗り捨てた船であり、すでに無用のものであったはずだ。それでも、各国は不可侵条約を作り何人(なんびと)も地球に近づくことができないようにした。いくつかの大国が、何らかの事実を隠すためとの噂もあったが、実際はどうなのか普通の市民である俺達にはわからなかったし、それ以上に興味もなかった。

「今日の夕食は、あなたの誕生日パーティーをするから早く帰ってきなさいね」
 母親にとっては、子供はいつまでたっても子供のままなのだろう。
俺は「わかったよ」と言って家を出る。祝ってくれるのに、少しそっけなかったかなと思ったけど、まあしょうがない。干渉されれば、抗いたくなるものだ。
 シブヤはいつでも人があふれている。俺はその喧騒に紛れるように人込みをかわしながら進む。ふと足を止めて見上げると、巨大ヴィジョンにも先ほどの表明が繰り返し流されていた。ヴィジョンを見上げる俺の髪を秋の冷たい風が揺らす。
「やばい、時間がない」俺は、やってきた自動運転装置に乗り、展望台に急いだ。
 展望台に上れる時間は限られている。
 俺は17:00の受付にぎりぎり間に合い、頂上を目指した。
 頂上に着いた時には、展望台には誰もいなかった。
 夕日は今日も青く光っていた。
 宇宙空間の中に、もう一つ青く輝いているものがあった。
「地球…」

 と、その時突然、室内の照明が落ちた。
 一体、何が起こったかわからず、しゃがんで息をひそめる。
 …何も起こらない。俺の耳には自分の心臓の音だけが聞こえていた。俺はその音が少しでも漏れないように右手で胸を押さえつける。
 暗闇に目が慣れたころ、静けさを打ち破るようにアナウンスボイスの声が流れた。

「私はマザーです。あなたに告げなければいけません…

 マザーの言葉が終わると、照明は戻った。
 俺は放心したまま、再び展望台から外を見た。
 そこには既に青い夕日はなく、地球が暗闇に歯向かうように強烈な青色を発していた。
 マザーは言った「これから始まる運命に、抗うことはできない」
『時はもうそこまで迫っている』見つめる地球がそう言っているよう俺は感じた。

《了》


Distant Rumble〜Epilogue〜


started rumbling
暗闇に放った愚かな溜息はクラック
時を経て巨大なクレバスとなる
小さき物の 大いなる力

started rumbling
始まりは終わりで
終わりは長い沈黙の始まり
それは破壊力を増し近づいて来る

全ては幻
抗えない運命
奇怪なまでの地球の青光り
赤い涙は地底深く命を埋め込んだ

宇宙の果てで産まれた意志は
静かにその時を待ち続ける

見上げた宇宙(そら)は地球さながら青く光っていた

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

駆け出した光
渦を巻く時空
赤い永遠が砕く
月を星を

灼熱の魂
溶けてゆく時間
迷路を彷徨う鼓動
イルージョン

Ah


ーーーーーーーーーーENDーーーーーーーーーー

Special Thanks : PJ & cofumi !

PJさんの小説のオリジナル


cofumiさんの詩のオリジナル


企画詳細


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