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『坐禅熊展』(1)

5/30(木)〜6/16(日)、松戸にて開催した「坐禅熊展」を振り返ります。8月に都内で坐禅熊以外のシリーズによる個展があったため、遅くなりました。

フライヤーです。design by jiro bando

〈展示基本情報〉

「坐禅熊展」
会場:葛西屋呉服店(松戸駅西口徒歩5分)1Fポップアップスペース
https://www.kasaiya.co.jp/popup-zazenkuma/

会期:5/30(木)〜6/16(日)※火曜定休
時間:10:30〜18:30
協力:株式会社まちづクリエイティブ

※関連企画:6/2(日)座禅体験イベント

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2年半にひらめいて作り出したこのシリーズですが、継続してやっているとご縁も生まれるものですね。

今回は、アトリエのある松戸で創業185年を誇る老舗「葛西屋呉服店」が昨年リニューアルしてポップアップ・スペースができたことがきっかけでこの展示に繋がりました。
(株)まちづクリエイティブ代表の寺井元一氏が坐禅熊に興味を持ってくださり、葛西屋呉服店社長の中山晃一氏も定期的に坐禅をなさっておられ、非常に前向きに取り組んでいただけました。ありがたいことです。

石膏型(小サイズ)を使ったもの。©2024 jiro bando


展示開始直後の6/2(日)に行われた坐禅イベントの指導役を務めたのは経営者の四ツ谷和好氏。四半世紀の坐禅修行歴をお持ちで、経営にも禅の教えを活かしていらっしゃいます。
四ツ谷氏からはコンセンサスを取るために、前もって「坐禅熊」に関していくつかの質問をいただきました。
これに答えることでこの作品に至った経緯を整理することが出来ましたので、まずはこのQ&Aを読んでいただければと思います。



1.坐禅熊を作ったきっかけ

北海道出身であることと仏教思想への傾倒が合わさっていますが、その前段階がありますので遡ってお話しします。

2000年代初頭に仏教に興味を持ち、2004年前後に2年ほど谷中の全生庵(臨済宗)の日曜坐禅会に参加していましたが、この経験が後の様々な表現活動に繋がりました。その後、仏教の勉強は宗派問わず本を読むことが中心で、作品を作る行為を「修行」と捉えることにしました。

2007年以降、仏教に関係する要素を以下の3つの形で現代に焼き直してアート作品化してきました。

①オルタナティブ宗教音楽(2007年〜)
ロック&ポップス系のギタリストを経て、ソロとしてはインストルメンタル音楽を作っていたが、某アートイベント参加に際して「般若心経」を歌詞にしてロックアレンジした楽曲を制作。さらにいくつかのお教をロックやブルース風の曲にして「読経ライブ」なども行った。

②タイポグラフィ(2009年〜)
グラフィックデザインのタイポグラフィの技法によるアート表現。「書」の拡大解釈として、仏典から引用したことば、哲学や政治的なことばなど、重要と思える言葉に構造体のような文字デザインを施し、ロゴのようにシンボリックなアート作品として発表。メッセージ性も強い。最近では難読性が高まり2022年に発表した禅語のシリーズは、ほぼ抽象画のようになっている。

<参考>タイポグラフィによる個展
「ありてあるところのことば」(2012年/横浜ベイクオーター)
https://www.flickr.com/photos/133729903@N04/albums/72157658261408862/

③彫刻(2021年〜)
コロナ禍をきっかけに大学で専攻した彫刻を再開。上記2方向の分かりづらさへの反省から、分かりやすい、親しみやすい、ユーモアなどを意識して、様々な動物に坐禅や瞑想をさせるアイデアを思いついた。熊以外に干支のうさぎ、龍なども制作した。「形」「構造」「象徴性」と言う大枠ではタイポグラフィと通底している。

★禅語のタイポグラフィと坐禅熊を組み合わせた2022年の個展の振返りを、まとめてありますので、これを読んでいただけるとありがたいです。

個展「文字と熊」振返り(その1)
https://note.com/jirobando/n/nd4965d927801
個展「文字と熊」振返り(その2)
https://note.com/jirobando/n/n1345e066d5cf

©2024 jiro bando


2.坐禅熊で何を伝えたいのか

仏教の教義を知らない人にも熊の表情や存在感から安らぎを感じてもらいたい。仏教的に言えば「慈悲」「悟り」などが伝わればと思っています。

上記リンク「個展「文字と熊」振返り(その1) 」に書いた文章が重要ですので以下引用します。

『座禅(瞑想)する熊の陶彫刻は仏像の拡大解釈であり、アイヌにとっての神である熊と仏教の修行をかけ合わせた自己流の「神仏習合」の表現とも言えます。「不立文字(ふりゅうもんじ)」という禅語は「悟りは言葉では表すことができない」という意味ですが、言葉にできない部分を座禅熊から感じとってもらいたい、という願いを込めた試みでした。〜』

また、以下のような批評性も込めています。

動物には感情はあるが人間のような複雑な思考はできないため煩悩に振り回されることもない。我々がすべてにおいて動物より上にいると考えるのは傲慢ではないか?

光背+台座付き小型バージョン。


3.坐禅熊に関連したエピソードがあれば

・母の年の離れた再婚相手である「根本勲(土龍)」という木彫家の作品に、祈るポーズなど擬人化した熊や、菩薩像の頭に熊の頭部を載せた像(馬頭観音ならぬ熊頭観音菩薩)、などユニークなものもありました。「坐禅熊」には自分から彼へのアンサーのような意味合いも含まれています。

・コロナ禍で殺伐とした精神状態の中、坐禅熊の初期作2体を部屋に飾ったところ、自分自身がずいぶん癒やされた、という経験が継続して作る動機になりました。

次回につづく。

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具体的な展示の内容までたどり着けませんでしたが、今回はここまで。

4月の打ち合わせ段階から話に出ていた道元の主著「正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)」の核心部分「現成公案(げんじょうこうあん)」のことまで書ければよいですが、自分も勉強中ですのでどうなることやら。


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